■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■  コンと村おこし  第7話「カレピス原液一気飲巻」            ■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ふう、今回もわらわが主役なのじゃ。
 しかしのう……わらわ、思うのじゃ。
 コンと村おこしは「セクシー担当」。
 わらわ、サービスせねばならん。
 しかしよの、サービスカットとなると……
 わらわが一肌脱がねばならんのじゃ。
 ポンが一肌脱いでも残念だからのう。
「コンちゃん、今日のおやつだけど〜」
「おお、ポン、何じゃ?」
「昨日の残り」
 なんとも切ないおやつよのう。
「おなか空いたでありますよ」
 今日のおやつはわらわ、ポン、シロの三人なのじゃ。
「シロ、おぬしは残りのパンでよいのかの?」
「別段かまわないであります」
「おぬしは平気かの」
「はぁ……別に……」
「パン屋がパンでいいのかの?」
「本官、午前中はパトロールと学校でおなか空くであります」
「空腹は最良のなんとやら……かの」
「コンちゃんも動けばよいであります」
「わらわ、女狐、きまぐれで怠惰なのじゃ」
「自分で怠惰と言うでありますか」
「いいのじゃ、本当なのじゃ」
「ダメダメでありますよ」
「わらわは美貌があるからよいのじゃ」
「もう何も言わないでありますよ」
 シロ、あきれておる。
 でもよいのじゃ。
 美人はなにもせぬものなのじゃ。
「コンちゃん、おやつだけど〜」
「さっきからなんじゃ、ポン」
「飲み物は選べるよ」
「ふむ……」
「どーする?」
 ポンの足音がするのじゃ。
 手に瓶を持って来おった。
「カレピスどーですか?」
「カレピス!」
 あの乳酸飲料なのじゃ。
 わらわもシロも少女漫画目になっておる。
「コンちゃん、本官ちょっとわかったであります」
「何じゃ、シロ」
「パンの残りだけでもよかったであります」
「ふむ」
「でも、カレピスがあれば何倍もうれしいであります」
「であろう、わらわもカレピス、楽しみなのじゃ」
 ポンもニコニコ顔で、
「じゃ、みんなカレピスでいいね、作ってくる」
「うむ、ポン、頼んだのじゃ」
 その時じゃ。
 シロがぬかしおったのじゃ。
「ポンちゃん、本官はスリーフィンガーがいいでありますっ!」
「す、すりーふぃんがー!」
 わらわとポン、びっくりなのじゃ。
「何がスリーフィンガーなのじゃ!」
「いつもミコちゃんはツーフィンガーであります」
「た、確かに……」
「今日はレッドもみどりもいないであります」
「つまりは……さじ加減はわらわ達次第というわけじゃな」
「そうであります」
 みんなの視線がカレピスの瓶に注がれるのじゃ。
 そうとなれば、わらわもスリーじゃ。
「ポン、カレピス、全部スリーフィンガーじゃ」
「わ、わかった、わたし、頑張ってみる」
「頑張るとろこではあるまい」
「だ、だって……いつのミコちゃんに『指二本』って言われてるのわたしだもん」
「おお……」
「スリーフィンガー……指三本……お、おとなの世界?」
 ポン、震えながら引っ込みおった。
 ちと不安じゃが、指一本分多いだけじゃ。
「シロ、おぬし、大それた事を考えておったのじゃな」
「幸せとは、きっとそういった事であります」
「うむ、スリーフィンガー、楽しみなのじゃ」
 すぐにポンは戻ってきおった。
 わらわ達の前に、「スリーフィンガー」な「カレピス」が並ぶのじゃ。
「こ、これがスリーフィンガーかの!」
「見た感じじゃわからないね」
「うむ、わらわもそう思ったがの、しかしじゃ」
 わらわ、これでも女狐。
 クンクンすれば「濃い」のがわかるのじゃ。
「指一本分多いであります」
「うむ、指一本分なのじゃ」
「一本分でありますが、50%増というとすごそうであります」
「た、確かに!」
「いただきまーす」
 三人そろったところでおやつタイムじゃ。
 メインのパンは残念じゃが……
 カレピスは甘い、うまい!
「さ、さすがスリーフィンガーじゃ」
「シロちゃんすごい、こんなの知ってたんだ」
「おいしいであります」
 今日のおやつ、これだけでも充分なのじゃ。
「で……」
「なんじゃ、ポン、神妙な顔をしおって」
「で……」
「?」
 ポンめ、シリアスな顔で出してきたのはカレピスの瓶じゃ。
「何じゃ、ポン」
「ここにカレピスがあります」
「それがどうしたのじゃ」
「もうちょっと足してみませんか?」
「!!」
 ま、まだ足すというのかの!
 わらわもシロもびっくりじゃ。
「……」
 しかし、誰も何も語らんのじゃ。
 これ以上入れるのは……何かやってはいけない事のように思えるのじゃ。
 そう、親にダメって言われてやるのとは、ちょっと違うのじゃ。
「本当にやってはいけないこと」とでも言うかの。
「わらわ、やめておく……この指一本がいいと思うのじゃ」
「本官も……神の領域には足を踏み入れないであります」
「うう……二人がやらないなら、わたしもできない〜」
 ポンは残念そうじゃ。
「ポン、おぬし、やればよいではないか」
「スリーフィンガーはみんな共犯だけど、ここから先一人はイヤ」
「ふむ〜」
 シロがアンパンを食べながら、
「ポンちゃん、よく足すのを考えたでありますね」
「あ、これなんだけど……この間の夜のテレビ、覚えてる?」
「?」
「ほら、サーフィンの映画、やってたよね」
 おお、わらわ、覚えておる……タイトルは忘れたが。
「本官、覚えているであります、台風で大波であります」
「ポン、その映画がどうしたというのかの」
「その中であったんですよ〜」
「?」
「カレピス、ラッパ飲み」
「!!」
 そんなシーン、あったかの!
 しかし、おそろしい!
 カレピスを、ラッパ飲み!
 原液で!
 どんな味なのじゃっ!
「わ、わらわ、想像もつかんのじゃ」
「ほ、本官も原液は考えなかったであります」
「そう?」
「ポン、おぬし、原液スキーかの?」
「あと、駄菓子屋さんでカレピス味のかき氷食べたら、残ったのすごい濃いの」
 ポンめ、モジモジしておる。
「では、わらわが許す」
「!」
「ポン、今日に限り、原液で飲んでよし!」
「!」
「わらわとシロは黙っておくのじゃ」
「い、いや……わたしも……大人の世界はちょっとコワイ」
「とんだふ抜けじゃの」
 みんなでカレピスの瓶を注目じゃ。
 何か……きっかけというか、理由が欲しいの。
「ジャンケン……ジャンケンで決めるのじゃ」

 わらわ、現在、シロに羽交い絞めされておる。
 じゃんけんに負けてしまったのじゃ。
 ポンがカレピスの瓶を持って仁王立ちしておる。
「コンちゃん負けたんだから、飲んでもらうんだから」
「ポ、ポンが飲めばよいのじゃ」
「コンちゃん、ジャンケンに負けたんだよ」
「これはバツゲームではないのじゃ」
「いいから、さっさと飲め!」
 コワイ……ポンはたまに人が変わるのじゃ。
 タヌキが変わるが正解かの。
「コンちゃんあきらめるでありますよ」
「これ、シロ、おぬしどっちの味方じゃ」
「今回はポンちゃんであります」
「覚えておれよ」
「すぐ忘れるであります」
「わーん、やめるのじゃー!」
「それっ!」
「むぐっ!」
 ポンめ、いきなり瓶を突っ込んできおった。
 うお!
 原液はちょっとむせるのじゃ。
 あ、味が強烈じゃ。
 あまあまなのじゃ。
「ほら、どんどん飲んでください」
「おいしいでありますか」
「ふごーっ!」
 おいしい……とは……思うが無理やり飲ますなーっ!
 ちょ、ちょっと肺に入ったではないか。
「げほげほ」
「ちょ、コンちゃん、ギブアップ早〜い!」
「まだ全部飲んでないであります」
「げほげほ、全部、飲める、わけ、なかろうっ!」
「ジャンケンで負けたんだから飲んでもらいます」
「そうでありますよ」
「やめるのじゃ」
「なに言ってるんですか、せっかくのコンちゃん攻撃のチャンス」
「ポン、おぬし〜! シロ、助けるのじゃ!」
 って、わらわをしっかと捕まえておるシロを見ると……
 なんじゃ、頬を赤くしておる?
 どうしたというのじゃ?
illustration やまさきこうじ
「本官、ちょっとコンちゃん、かわいく見えるであります」
「な、なんじゃとーっ!」
 ポンに目を戻せば……ポンも頭がら湯気をたてておる。
「ポン、おぬし、どうしたのじゃ」
「弱いコンちゃん、ちょっとかわいいかも……」
「はぁ?」
 二人とも、カレピスの瓶を見て、
「乳酸菌が関係あるのかな?」
「コンちゃんを弱らせているのかもしれないであります」
 なにバカな事を言っておるのじゃ。
「コンちゃんは悪玉菌?」
「なにもしないでありますから」
 二人とも、後で覚えておれよ。
「じゃ、乳酸菌で善玉になってもらいましょう」
「それがいいであります」
 って、なんじゃ、シロ、なぜわらわの口を強引に開かせる!
 うお! また瓶を突っ込まれたぞ!
 飲みきれん、こぼれるでないかっ!
「ちょっとコンちゃん、もったいな……」
「お行儀わるいでありますよ……」
「おぬしらが無理やり飲ますのがいかんのじゃっ!」
illustration やまさきこうじ
 服がベトベトなのじゃ、まったくこの二人は、今日は変……
 何、わらわを熱い目で見ておるのじゃ?
「今日は本当に変じゃぞ!」
「い、いや……カレピスまみれのコンちゃん、なんかかわいい」
「本官もドキドキであります」
 と、店のドアが開くのじゃ。
 カウベルがカラカラ鳴ってミコの帰還かの?
「ただいま……」
 帰ってきたのはたまおじゃ。
 この際誰でもよいので助けるのじゃ。
「たまお、わらわを……」
 助けて……もらおう……思ったら……なんだかヤツが一番やばそうじゃ。
 桃色オーラが店に充満しておるのじゃ。
「コンお姉さまっ!」
「な、なんじゃっ!」
「こんな楽しい遊び……いつもしてるんですかっ!」
「はあ?」
「わたしもカレピスプレイ、ご一緒しますっ!」
「って、何故脱ぐのじゃーっ!」
「ポンちゃんシロちゃん、しっかり捕まえて!」
「ラジャー!」
「了解でありますっ!」
 うお、ポン、シロにしっかりつかまってしまったのじゃ。
「ふふ、お姉さまにかかったカレピス、なめてさしあげます」
「やーめーろー!」
「ふむ……まだ足りない? では……」
illustration やまさきこうじ
 あ、たまおのヤツ、鬼畜な目になりおった。
「もっとぶっかけてさしあげますっ!」
 カ、カレピスをかけるでないっ!
 食べ物を粗末にしてはいかんのじゃぞっ!

 今日の店番はわらわとミコの二人なのじゃ。
「まだカレピスのにおいが残ってるわね」
「昨日はサバトだったのじゃ」
「食べ物で遊んで……モウ」
「本当、ミコが帰ってきてくれて助かったのう」
 ポン・シロ・たまおは帰ってきたミコにやられたのじゃ。
 いまは布団の中で包帯ぐるぐる・ミイラ状態なのじゃ。
「しかし……何故三人は暴走したのかの」
「……」
「わからんのう」
 ミコは黙って語らんのじゃ。
 しかしあやつの様子では、何か気付いておるようじゃ。
 教えろと言うて教えるものでもなさそうじゃし……
 そうじゃ!
 術でカレピスをテレポート。
「ちょ……コンちゃん何を……」
「カレピスをかけるとどうなるというのじゃ?」
 それ、ちょっとミコにぶっかけてみるのじゃ。
 ちょっとじゃぞ……
 ちょっと……
「あー、なるほど!」
「昨日の今日で何やってんのっ!」
 ミコ、怒っておる、さっそく術が発動じゃ。
 ゴットサンダーがわらわの体を焼くのじゃ。
 でも、いいのじゃ。
 どーしてカレピスぶっかけが「わくわく」なのか、わかったのじゃ。


kma007 for web(kma007.txt/htm)
kmc007 for web(kmc007.txt/htm)
kmy007a for web(kmy007a.jpg)
kmy007b for web(kmy007b.jpg)
kmy007c for web(kmy007c.jpg)
NCP5(2012)

(C)2008,2012 KAS/SHK
(C)2012 やまさきこうじ