■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■ ポンと村おこし 第84話「復活ぽんた王国」 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ カウベルがカラカラ鳴ってます。 お店の開店時間にはまだまだあるの。 でもでも、お店、鍵なんてしてないから入れます。 店長さんによると…… 「盗まれるようなものはないんだけど」 その後ですぐ、 「誰かポンちゃん、もらってってくれないかなぁ〜」 そんな事言う人にはチョップですチョップ! はい、回想終了。 今度店長さんには誰が一番働いているか認めさせないとね。 でもでも、誰が来たのかな? お店に出てみたら…… いました、コンちゃんの定位置テーブルに座ってます。 「帽子男さん!」 「よう、タヌキ娘」 「朝からなんですか、まだ開店前ですよ」 「いいじゃねーか、開いてるんだし」 「むう……なんの用ですか?」 「朝メシ食べに来たんだ」 「はぁ?」 「簡単なのでいいんだ、残りのパンとコーヒーとか」 残りのパンでいいならありそう。 コーヒー淹れるのは面倒ですけどね。 「ちょっとミコちゃんに聞いてきます」 帽子男、じっとわたしを見てます。 「なんですか!」 「この間、俺のそば、食ったよな」 「……」 「朝メシ出てこないとバラす」 この男は……でも、ニヤニヤしてます。 まぁ、バラされてもいいんですけどね。 台所に戻って、 「ミコちゃ〜ん、帽子男さんが来てます」 「学校の用務員さん、朝から?」 「朝ごはん食べに来たそうです」 「そう……」 「残りのパンとコーヒーでいいって」 ミコちゃん、考える顔してます。 「面倒くさいから連れて来て、こっちで一緒に食べちゃいましょ」 そんなわけで、帽子男さんと一緒に朝ごはんです。 「わーい、ようむいん」 「おう、レッド、朝から元気だな」 「ちょっとアンタ、なんでいるのよ!」 「おう、みどり、今日もツンツンしてんな」 二人は学校でいつも顔合わせしてるから、うれしいみたい。 帽子男も扱いに慣れたもんです。 ミコちゃん、そんな帽子男の前にごはんとお味噌汁をやりながら、 「朝からどうしたんですか?」 「おお、こっちのタヌキ娘がツケで……げふっ!」 余計な事、言わんでよろしい。 隣に座っててよかったです、即肘鉄なんだから。 って、ミコちゃん微笑みながら、 「ポンちゃん、いいのよ、私もおそば、ごちそうになったから」 「そ、そうなんだ」 「まったく、タヌキ娘、すぐ手が出るなぁ」 「当然です……でもでも、どうしてパン屋さんに朝ごはん?」 「ああ……それなんだが、今まではそば屋で食べてたんだ」 「そうなんですか」 「でも、今はそば屋で働いているだろ」 「はいはい」 「ここの朝メシだってそうじゃねぇか」 「?」 「ごはんに味噌汁、ノリに魚に卵焼きと漬物」 「それが?」 「朝からパンは嫌じゃねーか?」 う……それはちょっとあるかも…… パン屋さんの朝でパンだと昨日の残りだし。 おやつでちょっと食べるならいいけど、パン屋でパンはちょっとね。 「そう言われると、そうですね」 「それに、朝メシ食いに行ったら、そのまま仕込みやらされるからな」 「それですか」 と、ミコちゃんが、 「みんなそろったわね、じゃ、いただきます」 「いただきま〜す」 みんなのお箸が動きます。 って、コンちゃんがモグモグしながら、 「はて、帽子男よ、おぬしは何所に住んでおるのじゃ」 「学校」 「帽子男さんは学校……って、宿直室ですか?」 わたしも聞いちゃいます。 「吉田先生の部屋は宿直室、俺のは隣の用務員室」 「名前が違うだけですよね」 「まぁ、な」 「では、今まで食事はそば屋だったのじゃな」 「そうだな、コンちゃんよ、学校の中にあるし」 コンちゃん、何か考えています。 「おぬし、そば屋に食べに行っておったのか? じじいの所に行っておったのか?」 「そば屋だが……」 「ふむ……そば屋にポン太やポン吉はおらんかったかの?」 「ポン太……ああ、あの仔タヌキ」 「おらんかったかの?」 「いなかったな」 コンちゃん、わたしに向き直って、 「これ、ポン、あの二人はどこに住んでおるのじゃ?」 「へ? ポン太とポン吉ですか?」 「そうじゃ」 「長老と一緒って思っていたんですけどね……違うのかな?」 コンちゃん、帽子男に顔を向けて、 「これ、メシを食いに行くなら豆腐屋ではどうかの?」 「は?」 帽子男だけじゃないです、わたしもびっくり。 「コンちゃんなにを!」 「ポン太とポン吉はあそこに住んでおるのではないかの?」 「ポン太たちはあそこで働いているけど……長老と一緒じゃないの?」 「これ、ポン、おぬしタヌキであろう……ふ抜けたか?」 「なんですかモウ!」 「おぬし、そば屋でポン太たちのにおい、感じるかの?」 「え?」 「じじいの所にポン太達のにおい、弱いであろう」 そう言えば、そんな気もします。 ポン太たち、長老と一緒に住んでないんでしょうか? お豆腐屋さんの子供になっちゃったとか? ごはん終わったら、配達途中に寄ってみましょう。 レッドとみどり、帽子男と一緒に登校です。 って、わたしは朝の配達ついでなんですけどね。 途中、工事中のお豆腐屋さんに寄って行きます。 まだ、囲いがしてあるの。 「ポン太、ポン吉、来ましたよ」 わたし、お店の戸を開けて声をかけます。 すぐにポン太たち、出て来ました。 「ポン姉、おはようございます」 「ポン太、おはよう」 「どうしたんだよ、ポン姉」 「ポン吉、おはよ……あのさ」 「?」 二人が首をかしげます。 わたし、お店の前でクンクン。 「ねぇ、ポン太とポン吉、ここに住んでいるの?」 「はい、そうです」 って、奥からおばあちゃんが出てきました。 「そうだよ、二人はここに住んでもらってるんだよ」 「おばあちゃん、そうなんだ」 わたし、さらにクンクンして、 「長老はいませんよね?」 「そうだね、長老さんは遠慮して学校なんだよ」 おばあちゃん、ポン太とポン吉の頭をなでながら、 「でも、もうすぐ一緒に暮らせるね」 「なんです?」 「工事が終わったら、そっちに長老さんやポン太、ポン吉は住んでもらうんだよ」 「そうなんだ」 「建物増えるからね、別にいいんだよ、新しい方に住んでもらう分にはね」 「さっき『もうすぐ』って言ってましたよね?」 「そうだね、明日にでも囲いはとれちゃうね」 「じゃあ……長老も一緒はどうなんだろう」 わたし、帽子男さんを見ます。 「あ、用務員のおっちゃん」 「おう、ポン吉、おはようさん」 「なにしに来たんだよ」 帽子男さん、ポン吉の頭をなでながら、 「いや、朝メシをここでごちそうになれないかなって思って来たんだよ」 って、おばあちゃん、パッと表情が明るくなりました。 「にぎやかになっていいねぇ……あんたも新しい方に住むかね」 「しかし、タヌキじじいも来るんだろ」 「だね」 「俺、そば屋でも働いてるから、タヌキじじいにいっつも顔合わせはなぁ」 「ポン太のごはん、おいしいがね」 おばあちゃんの言葉に帽子男ピクリ。 「それは確かに魅力だが……」 ポン太、そんな帽子男の言葉に力無く笑いながら、 「明日の朝ごはん、準備しておきますよ」 「むう……ではお呼ばれするか」 「あの……」 「?」 「長老、そんなにコキ使います?」 「そんなに人使い荒くないんだが……」 「だが?」 「酒くさいのと、イヤミが『グサグサ』なんだよ『チクチク』じゃなくて」 「すみません」 ポン太ペコペコしてます。 ともかく明日の帽子男さんの食事は確保ですね。 話だと工事も終わりだから、囲いも取れちゃうみたい。 「それで今日は来なかったのね」 ミコちゃん、ポツリと言います。 帽子男さんが朝ごはん食べにこなかったんですよ。 「うん、だからきっとポン太のごはん食べにお豆腐屋さんに行ってますよ」 「ちょっと残念ね」 「なにが?」 はっ! 「まさかミコちゃん、帽子男さんが好きとか?」 わたし、思うんです。 帽子男はヒットマンでそれなりに渋い男って思います。 でもでも、ミコちゃんにはつり合わない気がしますよん。 「用務員さん来ると、レッドちゃんやみどりちゃん、喜ぶでしょ」 「ですね〜」 「じゃ、配達行くわよ」 そうそう、今日の配達はわたしとミコちゃん。 レッドとみどりも通学で一緒です。 お豆腐屋さんに到着すると……囲いも取れててなつかしのわらぶき屋根のお家。 「ふわわ、ぽんた王国のと一緒だ」 「なつかしい感じの家ね」 わたしとミコちゃんが見上げていると、お豆腐屋さんから帽子男出てきました。 なんだか殺気含みです。 どうしたのかな? その後を、ニンジャ姿のポン太とポン吉です。 お豆腐屋のおじいちゃん、おばあちゃんも心配顔で出てきました。 全然状況、わかりません、どうしたの? 帽子男……なんかコワイ空気漂ってるから聞けません。 ポン太とポン吉もなぜかニンジャ服でコワイ顔…… 「めめめめがねにんじゃっ!」 ああ、シリアスな空気、レッドの声で台なし。 「ちょっとアンタ、なんなのよ、その格好!」 みどりはポン吉につっかかってます。 子供ふたりにつっかかられてポン太たち困ってます。 ちょっと聞きやすくなったかな? 「ねぇねぇ、ポン太、どうしたの?」 「ポン姉……帽子男さんがボクたちを殺すって言い出したんです」 「はぁ?」 「あれ、見てください」 ポン太の指差す先。 看板は「ぽんた王国」。 「なに? わかんないよ?」 「帽子男さんはヒットマン」 「うん、だったよね」 「俺の仕事はぽんた王国の関係者抹殺」 帽子男、割り込んで来ます。 「ぽんた王国が復活したからには、命をいただくしかねぇ」 帽子男、言いながら銃を確かめてます。 本気で「殺る気」みたい! わたし、帽子男に近付いて…… 「……」 近づいたら気付きました。 帽子男をクンクン。 「あの〜、帽子男さん……」 「何だ、タヌキ娘」 「朝ごはん食べてから、言いがかりつけてますよね」 「うっ!」 「食べるだけ食べてから、それじゃあ……ねぇ」 「これは仕事なんだ、仕事、仕事でね」 「食べてから言うかなぁ〜」 わたしが「ネチネチ」言ってると、銃口向けてきます。 「流れ弾、当たるかも」 「流れてませんよね、狙ってますよね」 「ダ・マ・レ!」 銃口向けられて一歩引いたらなにかにぶつかりましたよ。 振り向けばミコちゃん。 髪がうねりまくり。怒ってます。 「ちょっと用務員さんっ!」 「何だ?」 「ポン太くんやポン吉くんを殺そうって言うの!」 「仕事でね」 「子供相手に大人気ない」 「何とでも言え」 「どうしても、二人を殺すって言うの?」 「まぁ、な」 「どうしても?」 「ああ、そうだ」 ミコちゃん、ゴット・アローの体勢ですよ。 光る弓矢が帽子男をロックオンなの。 「どうしても?」 「ああ、俺の仕事はぽんた王国の……」 って、今の言葉を聞いて、ミコちゃんの手からゴット・アロー消えちゃいました。 それどころかニコニコしてるの。 なんでかな? 「じゃあ、あなたの仕事は『ぽんた王国』だから?」 「ああ、そうだ」 「……朝ごはん食べた恩義は感じてるのよね」 「……ちょっとは……な」 「私のごはんも食べたわよね?」 「……そうだな」 って、帽子男、ブンブン首を横に振ってから、 「いや、ダメだ、俺の仕事は『ぽんた王国』のっ!」 「これならいいでしょ!」 ミコちゃんが指を鳴らすと「ぽんた王国」の看板がビリビリ輝いてます。 そんなビリビリが終ると…… 「どうっ!」 「……」 「ぽんた王国」の看板が「ニューぽんた王国」になってます。 「ニュー」が付いただけなの。 「ど・う・で・す・かっ!」 「ニュー……って」 「名前、変わったでしょっ!」 ミコちゃん、改めてゴット・アローを構えてます。 「名前、変わったでしょっ!」 「し、しかしだな……」 「お店に出入り、禁止しますよ」 「う……」 帽子男、看板を見ていましたが……銃を納めますよ。 「ぽんた王国じゃないなら……いいか」 「ニュー」が付いただけですけどね。 ポン太とポン吉、震えています。 ミコちゃんすぐに駆け寄って、二人を抱きしめます。 「よかったね、二人とも!」 あ、ミコちゃんに抱きしめられて二人とも赤くなってます。 震えもとまりましたよ。 わたし、ジト目で二人に、 『あー、ミコちゃんに抱きしめられて赤くなってる〜』 ポン太もポン吉もデレデレしてますね。 『コンちゃんやシロちゃんに言っちゃおうかな〜』 あ、二人とも青くなってわたしをにらんでます。 あれれ、レッドとみどり、ポン太たちをうらやましそうに見てます。 二人も「ギュッ」ってしてほしいみたい。 わたし、しゃがんで、 「抱きしめてあげようか?」 って、途端に二人とも駆け出します。 ミコちゃんもすぐに気付いて、レッドとみどりもまとめて「ギュッ」! みんなより、ミコちゃんがすごいしあわせそうですよ。 わたし、スルーされて苦笑いするしか。 渋い顔をしている帽子男さんに聞いちゃいます。 「看板、ニューがついただけですよ?」 「しかしなぁ〜」 「しかし?」 「ここで食事の選択肢が減るのもなんだし……」 「それですか」 「ミコちゃんに嫌われると、面倒くさそうだしな」 pma084 for web(pma084.txt/htm) pmc084 for web(pmc084.txt/htm) pmy084a for web(pmy084a.jpg) NCP5(2012) (C)2008,2012 KAS/SHK (C)2012 やまさきこうじ