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■  ポンと村おこし  第91話「山のペットショップ」            ■
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 今日のおやつはすごい大勢なの。
 わたしに店長さんにコンちゃん・ミコちゃん。
 シロちゃんにレッドにみどり。
 ポン太・ポン吉。
 目の細い配達人もいますよ。
 にぎやかでいいですね。
 ふふ……実はポン太・ポン吉・配達人は「呼んだ」んです。
 今日のおやつは昨日の残り。
「ちょっと」だったらよかったけど、「たくさん」なの。
 ポン太・ポン吉はパクパク食べてます。
 レッドとみどりもそれにつられて食べてるの。
 これならたくさんあった「残り物」もあっと言う間に消えちゃいます。
『ふふ、どうじゃ、わらわのアイデア』
『コンちゃん、ナイス!』
『あの量ではたまらんかったでの』
『でもでも……』
『なんじゃ、ポン』
『レッドとみどりの頑張りもびっくり』
 そうです、レッドとみどり、いつもの二割五分増の食べっぷり。
『ポン、おぬし、わかっておらぬのう』
『は?』
 わたし、レッドとみどりを見て首を傾げます。
 どうしてたくさん食べられるの?
 わたしが考え込んでいると、店長さんが肩を叩きます。
『ポンちゃん、わかる?』
『わからないから首傾げてるんです』
『レッドもみどりもわかりやすいけど……』
『えー?』
『ポン太・ポン吉もわかりやすかも……』
『は? ポン太たち?』
『うん……よく見て』
『はぁ……』
 店長さんの話っぷりだとポン太・ポン吉が……
 ああ……わっかりました。
『ポン太はコンちゃん、ポン吉はシロちゃんですね』
『ピンポーン』
『ふむ……ではでは、レッドとみどりは?』
『レッド達はポン太ポン吉』
『?』
『友達と一緒だと食が進むんじゃないかな』
『ああ……そーゆー意味だったんですね』
 なるほど……そう言われるとわかる気がします。
 レッドもみどりも食べながら、ポン太たちに話しかけてるもん。
 ポン太・ポン吉はコンちゃん・シロちゃんをちらちら見てるの。
『なるほど〜』
『ポンちゃんわかった?』
『わっかりました〜』
 って、わたしも店長さんに腕を絡めるんです。
『な、なにをっ!』
『わたしもワクワクしたいです』
『むう〜』
 店長さん、わたしをグイグイ押し返し。
 わたしはしっかり捕まえて放しませんよ〜
『たまにはわたしにも!』
『今夜ダンボールがいい?』
『おどしですかっ!』
『うん!』
『ダンボール確定なら、思い切り甘えちゃいます』
『えー!』
 店長さん、あきらめ悪いですね。
 まーだわたしをグイグイ押し戻してます。
 あきらめてわたしのものになるんですよ!
「はいたつにん、あそんでー!」
「おお、レッド、遊ぶか?」
「ちょっとアンタ、ワタシも遊んであげるわよっ!」
「そうかそうか〜」
 目の細い配達人、レッドとみどりに引っ張られてるの。
 配達人、二人を抱っこして、
「しっかし……」
 テーブルを囲んでいるみんなを見ながら、
「俺、前から思ってたんだけど……」
 配達人、レッドの頭をなでながら、その手がしっぽをさわります。
「ここってさ……パン屋だよね」
「配達人……なにを言い出すんですか」
「ポンちゃんやコンちゃん、レッドにみどり」
 って、配達人、ポン太・ポン吉を見て、
「ぽん太王国に配達に行ってる時もさ、タヌキばっかりって思ってたんだ」
「それがどうかしたんですか?」
「いや、でさ」
「で?」
「ここってタヌキにキツネにイヌだよね」
「なんですか、今は人間なんだからっ!」
「いや……でも、しっぽ丸出しだし」
「だからなんですか、叩きますよっ!」
 わたし、店長さんを放して配達人に迫ります。
 レッドとみどりがいなかったら襟首つかまえてるところです。
「これ、配達人、何が言いたいのじゃ」
 コンちゃん、髪がうねってます。
「はっきり言うでありますよ」
 シロちゃん、銃を手に言います。
「俺、思ったんだけどさ〜」
 って、配達人、全然気にしてないみたい。
 あの細い目は本当に節穴じゃないんでしょうか?
 今のコンちゃん・シロちゃんは殺気プンプンですよ。
 どーしてこの殺気わからないんですか?
「ある意味、ここって動物ばっか」
 ああ、コンちゃんの髪、うねりまくり、本気で怒ってる。
 シロちゃんも微笑みながら配達人に銃口向けてるの。
 でも、配達人、今度はみどりの頭をなでながら、
「ある意味ペットショップみたい」
 ああ、コンちゃんの手にゴットアロー出現。
 シロちゃんも引金に指、かかりました。
「はいたつにん、ペットショップとは?」
 レッドがうれしそうに言います、わかってないかな?
「ちょっとアンタ、ペットショップとはなによっ!」
 配達人、レッドとみどりにもみくちゃにされてます。
 でも、子供慣れしてるのか、ニコニコしてるの。
 配達人、レッドのほっぺにほおずりしながら、
「うーん、一番人気はレッドかな?」
「わーい、ぼく、いちばん?」
「そーだね、レッド、いちばーん」
「わーい!」
 って、この会話で空気が張りつめます。
 でも、コンちゃんもシロちゃんも得物おろしました。
「配達人、何が言いたいのじゃ」
「いや、ここ、パン屋じゃなくてペットショップって話」
「ふむ……それでランク付けしようと言うのじゃな」
「うーん、まぁ、そんなところ」
 しれっと言ってますよ。
「配達人のランク付けを言うでありますよ」
「シロちゃん、銀玉鉄砲置いてくれたら」
「場合によるであります」
「むー!」
 配達人、言いたくないみたい。
「ちょっとアンタ、気になるじゃないっ!」
「みどり……」
「続きをちゃんと言いなさいよっ!」
「そこまで言うなら……」
 子供にゆさぶられて、配達人口を割ります。
「一番はレッド、子供だし」
「わーい」
 配達人、みどりの頬にほおずりしながら、
「次はみどりかな〜、子供だし」
「ふん、アンタにしては、いい答えね」
 緊張はここで途切れます。
「ねぇ、配達人さん」
「なに、ポンちゃん」
「子供だと売れ筋なの?」
「だって子供の方が躾やすいからね」
「ぺ、ペットの話ですか?」
「その話じゃないの?」
「むう……続けてください」
 そうです、子供がいいのは、わたしも知ってるんです。
 だからここから先も「2つ」はわかるんですよ。
「ほら、次を言ってください」
「ポンちゃんもわかってるとは思うけど……」
 配達人、ポン太とポン吉を見ます。
 二人も配達人をじっと見つめ返しているの。
「子供」って条件なら二人を選ぶのは仕方ない事です。
 わたしはポン太とポン吉、順番どっちでもいいけど……
 ポン太とポン吉は真剣な目で配達人を見つめていますよ。
「うーん、ポン吉かな」
「やったぜっ!」
 ポン吉、ガッツポーズ。
 ポン太に勝てたのがうれしいみたい。
「ねぇねぇ、配達人さん」
「何、ポンちゃん?」
「わたしはポン太の方が断然いいと思うんだけど」
「ああ、その事ね」
 ポン太はちょっと落ち込んではいるみたいだけど……黙々とおやつを食べてます。
 ポン吉は超うれしそう。
 配達人、何度も二人を見てうなずいて、
「ポンちゃんはポン太の方が出来がいい……って思ってるんだよね」
「そーですよ、わたしならポン太です」
 って、わたしの発言にポン吉にらんできます。
『ポン姉嫌い』
『なに言ってるんですか、本当の事でしょ』
『配達人の意見を聞こうぜ』
『そうですね……気になるところです』
 急にポン吉も神妙な顔をして、
『そうだよな……なんでオレなんだろ』
『あ、ポン吉も冷静ですね』
『オレ、うれしかったけど……普通なら兄貴だよな』
 配達人、ニコニコしながら、
「ポン太もポン吉もどっちもどっちかな」
「でも、ポン吉なんですよね?」
「うーん……俺ならポン太、しっかりしてるし」
「どっちなんですかっ!」
「俺は手がかからない方がいいからポン太」
「ポン吉は手がかかるんですよね?」
「うん……だから人気ありそう」
「はぁ?」
「ポン吉は手がかかるかもしれないけど……躾はいいから」
「はぁ?」
「ほら、元気だけど、飼い主の手を噛んだりしなさそう」
「まぁ、それはそーでしょうね」
「ペットは元気なのも重要な要素って思うしね」
 ポン太とポン吉はほぼ同率みたいですね。
 一般的にはポン吉……元気だから。
 配達人的にはポン太……しっかり者だから。
「配達人よ、続きを言うのじゃ」
「そうであります」
「ここからが本番です」
 コンちゃん・シロちゃん・わたしが配達人に注目。
 子供たちも黙っちゃいます。
「コンちゃんだよね」
 って、タメもなにもなく「コンちゃん」かよっ!
「まぁ、そうじゃろうなぁ」
 わたし、納得できません。
「ちょっと配達人さん、目、腐ってませんかっ!」
「だ、だってさ……」
「だって……なんですかっ!」
「コンちゃんって手、かかんないよね」
「女キツネですよっ!」
「まぁ、女キツネだけど……」
「でしょ」
「でも、手、かかんないから」
「……」
「餌やったら、いつもゴロゴロしていそうだしね」
「ま、まぁ……そうですね」
「毛並みもいいし……」
「さっきポン吉は元気がいいって……」
「ペットは癒しも必要なの」
「癒し……」
「コンちゃんなら、いるだけでいいかなってね」
 って、配達人、コンちゃんのしっぽをつかまえてなでながら、
「キツネのコンちゃんもきっと奇麗と思うしね」
 コンちゃん、配達人を叩いているけど、配達人は笑ってます。
「見た目と癒しですか」
「そう」
 まぁ……コンちゃんがポイント高いのは分かってました。
 さて、シロちゃんとわたしのブービー対決です。
 この座だけは譲れませんっ!
 シロちゃんもわかってるみたい。
 わたしと視線で火花散らします。
「次はシロちゃんだよね」
 ズコッ!
 即ですかっ!
 タメなしかよっ!
「ちょ、ちょっと配達人っ!」
 わたし、レッドとみどりを押しやって、配達人をゆすりまくりです。
「さっき子供の方がいいって言ってたですよねっ!」
「う、うん」
「わたしの方がシロちゃんより子供っ!」
「そ、そーだけど……」
「訂正しろーっ!」
 もう、わたし、配達人を100チョップ。
「どうですか、考え、変わりましたか」
「うんにゃ」
「こらーっ!」
 もう、これでもかってくらいゆすっちゃうの。
 ちらっと……みんなが見えます。
 ポン太とポン吉、コンちゃん・シロちゃん涼しい顔してます。
「もう一度聞きます……わたしとシロちゃん、どっちですかっ!」
 チョップの準備OK。
 配達人、冷や汗でじっとり。
「シロちゃ……」
「いいですか、配達人さん」
「は、はい……」
「シロちゃんは犬ですよ」
「そ、そうだね」
「わたしはタヌキですよ」
「だ、だから?」
「一般的にタヌキの方がめずらしいでしょっ!」
「……」
「あっちは警察の犬ですよ、撃ちたがりの!」
「ポンちゃんはタヌキ……確かに……」
 ふう、ようやく順位変更みたいですね。
 わたし、配達人を放します。
「大丈夫でありますか?」
 シロちゃん、すぐに配達人を介抱。
 しまった!
 配達人、シロちゃんに守られた途端、わたしを見て、
「タヌキでも……ハズレ」
「ハズレ!」
illustration やまさきこうじ
 発言と同時に、みんながうつむいて肩を震わせます。
 わ、笑いを堪えてますね〜
「コロスっ!」
 って、ダッシュしようとしたわたしを店長さんが羽交い絞め。
「ポンちゃん、やめやめっ!」
「店長さん止めないでくださいっ!」
「殺したらダメだっ!」
「わたし、今だけタヌキ、人間、コロスっ!」
「ポンちゃん頭冷やしてっ!」
「わたしのプライド、ズタズタですっ!」
「どんなプライドだよ」
「わ、わたしだって……頑張ってるのにっ!」
 くく……悔しくて涙出てきました。
 そりゃ……シロちゃんに負けてもしょうがないって思う。
 シロちゃんの方がお姉さんだし、奇麗だもん。
 普段はミニスカポリスで撃ちたがりだけど、コンちゃん級だし。
 でもでも「ハズレ」はあんまりですっ!
 許せないっ!
「ポンちゃん……ポンちゃん最後まで残ったら……」
「店長さんまで言うんですかっ!」
「ポンちゃん最後まで残ったら……ずっと一緒だね」
「!!」
 羽交い絞め……しっかり抱きしめてくれてるの。
 店長さんの「一緒だね」って囁いた唇。
 今は息使いさえ聞こえます。
「店長さん……」
「お店で人殺しはナシだよ」
「は、はい……」
 抱きしめていた腕がほどけます。
 わたし、振り向いて店長さんを見つめるの。
 微笑んでいる店長さん。
 わたし、そんな店長さんをつかまえます。
「店長さん……わたし売れ残ったら……」
「ずっと一緒だね」
「好きっ!」
 わたしが抱きついたら、店長さんも受け止めてくれました。
 店長さんの胸に顔をうずめて、まるで少女漫画みたいなの。
 おおっ……7クールめにしていよいよHAPPY・ENDっ!
 長かった。
 今までやられてばっかりでした。
 今回は「ハズレ」まで言われたの。
 みんな笑ってたし。
「店長さんっ!」
 ここはキスですよね、絶対。
 昔、逃げられました。
 今日はしっかり店長さんに腕をまわして、逃がさないんだから。
「店長さんっ!」
 わたし、店長さんの顔を見つめます。
 優しい微笑み。
 今日はいけるっ!
「店長さん……」
「ポンちゃん……」
 あれ……なかなかキスしませんよ。
 その優しい微笑みはキスしかないでしょ?
 早くしてくださいっ!
 今日は7クールラストでまとめとしても最高ですから。
「店長……さん……」
 店長さん、まぶたを閉じました。
 眼尻にキラリと涙。
 そんなにうれしいんですか、この間はタメで……
「ずっとポンちゃんと一緒なんだ……はぁ〜」
「ちょっ! なんですか今のため息」
「ポンちゃん残っちゃうんだ……とほほ」
「店長さんっ!」
 わたし、店長さんをポカポカ叩きます。
「い、痛いよポンちゃん」
「ここは慰めたりするところじゃないですかっ!」
「……」
「ねぇっ!」
「残り物には福がある?」
「慰めになってなーい!」
 店長さんをゆすりまくっちゃうの、えいえいっ!
「キスでもして慰めて……」
 レッドが飛びついてきました。
「チュウ!」
「!」
「チュウチュウ!」
「……」
 レッドにキスされても全然うれしくなーい!
 わたし、最後の最後までこんなのばっかです。
 がっくし。


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NCP5(2012)


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