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■  ポンと村おこし  第99話「子供みこし」                ■
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「ポンちゃん!」
 学校に配達に行ったら、村長さんに声をかけられました。
 なにかな?
「今度村で『子供みこし』をやるから、よろしくね」
「子供みこしってなんです?」
「お祭りよ、お祭り」
 だ、そーです。
 わたし、ちょっと考えてから、
「それってまた神社の客寄せですか?」
 この間の子供かぐらはそうでした。
「ううん、違うわ……お祭りと言っても学校のイベントなの」
「学校のイベント?」
 村長さんのお話だと……
 村の学校の子供のほとんどは寄宿舎暮らし。
 親と離れて暮らしているんです。
 そんな子供達のために、イベントをやって親を呼ぶんだそうです。
「みんな喜ぶといいですね」
「ええ……それに」
「それに?」
「こんな小さな村だから、学校のイベントでも村祭りも同然なのよ」
「そうなんですか」
「老人ホームの皆さんも楽しみにしているしね」
「でもでも……わたしはなにをやったらいいんでしょうか?」
「お祭りをサポートしてくれたらいいわよ」
 村長さん笑ってます。
 わたし、すぐににらみつけて、
「また女子プロレスをやれって言うんじゃないですよね?」
「あ、それ、いいわね」
「村長さん、モウっ!」
 わたしが膨れたら、村長さんダッシュで行っちゃいました。
 モウ……女子プロレスは絶対やらないんだから!
 あれをやると、後でみんなの視線が微妙に変わるんだもん。

 夕飯の片付け中なの。
「ぼくもでま〜す」
 レッド、子供みこしのチラシを持ってピョンピョン跳ねてます。
「レッドはなにをするんですか?」
 わたしが聞いたら、レッドはうちわを持って、
「おおきなうちわをふりま〜す」
「頑張ってくださいね」
 って、今度はみどりがわたしの腕をゆすって、
「アンタ、ワタシにも聞きなさいよっ!」
「みどりも参加するんですね」
「当たり前じゃないっ! 子供なんだからっ!」
「で、みどりはなにをするんですか?」
「えーっと……まだ決まってないのよっ!」
 じゃあ、いちいち聞いてこないでほしいなぁ。
 二人は言うだけ言うと、今度はたまおちゃんの方に行っちゃいました。
 わたしは二人から解放されて、皿洗いに専念です。
 隣ではお米を研いでいるミコちゃんが、ちょっと沈んだ顔をしているの。
「ミコちゃん、どうかしたの?」
「うん……子供みこしの事は二人から聞いたでしょ?」
「今日、学校で配達の時に村長さんにも会ったし」
「じゃ、ポンちゃんは詳しい事は知ってるのよね?」
「?」
「子供みこしの時は、寄宿舎の子達の親がたくさん来るでしょ」
「パンがたくさん出るのが心配なんですか?」
「それ、店長さん、配達人さんに相談してたわ」
「じゃあ、なんです?」
 ミコちゃん、黙ってます。
 あ、答え、わかりました〜
「レッドやみどりがケモノなのがばれる!」
「みんなコスプレって思うわよ」
「じゃあ、なんです?」
「みんなの親が来るでしょ……レッドちゃんもみどりちゃんは親が……」
「あー!」
「さみしい思いをしないといいんだけど……」
 なるほどですね〜
 見せつけられたら、シュンとしちゃうかもしれません。
 レッド……イノシシ親子の時にそんな感じでしたもんね。
 ミコちゃんに言われると、ちょっと心配になっちゃいました。

「わーい、おにあい?」
 レッド、法被姿でくるくる回ってます。
「レッド、お似合いですよ」
「わーい!」
「ちょっとアンター!」
「あ、みどり」
「ワタシはどうなのよっ!」
 みどりの法被姿もなかなかなものです。
 でも……
 わたし、みどりを捕まえてバックをとります。
 両肩をしっかり捕まえて、みどりの背後をチェック。
「ねぇ、みどり」
「なによっ!」
「誰に着がえ、手伝ってもらった?」
「たまおちゃんだけど」
 わたし、たまおちゃんに厳しい視線。
 みどりを放して、たまおちゃんを手招き。
「何、ポンちゃん」
「ねぇ、レッドとみどりの格好はたまおちゃんの趣味?」
「え? え!」
 レッドとみどり、今度はコンちゃんの所にお披露目に行ってます。
 コンちゃん二人を見てますが……目尻がピクピクしています。
『これ、ポン、おぬしの仕業か!』
『あー、二人のコーディネートはたまおちゃんだよ』
『たーまーおー!」
 コンちゃんの視線がたまおちゃんに刺さります。
 でも、たまおちゃん、キョトンとして、
『コンお姉さま、私、何か悪い事したでしょうか?』
 レッドとみどり、今度はミコちゃんの所にお披露目。
 ミコちゃん、一瞬固まったかと思うと、頭から湯気をたてながら、
「きゃー! 二人ともかわいいーっ!」
 いきなり抱きしめます。
 レッドとみどりも嬉しそうにしてますね。
 コンちゃん、わたしの横にやって来て、ミコちゃん達を見ます。
 レッドとみどり……法被です。はっぴ。
illustration やまさきこうじ
 でもって、二人とも「しめこみ」なの、「ふんどし」?「まわし」?
 コンちゃん、たまおちゃんをにらみながら、
「おぬし、どーゆー趣味じゃ」
「お祭りの格好では?」
「みどりは女子じゃぞおなご」
「子供ですし」
 たまおちゃん、ちょっと考えてから、
「しめこみ、尻尾があるから位置が決まり易いんです」
 たまおちゃん、いきなり桃色オーラが噴き出しました。
 コンちゃんににじり寄りながら、
illustration やまさきこうじ
「お姉さまもやってみますか?」
「殺されたいかの」
「あれはTバックなんです、Tバック!」
 そ、そう言われればそうなのかな?
 わたしとコンちゃん、ちょっと赤くなっちゃいました。

「わっしょい! わっしょい!」
 お祭り当日、目の前ではお神輿が上下してます。
 学校の子達が担いだお神輿は神社下の広場まで来て止まりました。
 レッドとみどりは、そんなお神輿のまわりでうちわを持って走りまわっているの。
 わたしは……たまおちゃんと一緒に巫女装束。
 神楽の時以来ですね。
「たまおちゃん、たまおちゃん」
「何ですか、ポンちゃん?」
「今日のわたしのお仕事はなんですか?」
「その榊を私に渡すだけです」
「えーっと……」
 お仕事は葉っぱを渡す事だそうです。
 でもですね、ちょっとした疑問が。
「なんでわたしなんでしょ?」
 たまおちゃん、半泣きでわたしに、
「私だってコンお姉さまやミコお姉さまがよかった!」
「そんな、泣かないでも」
「ポンちゃんだなんて……」
 普通なら怒るところですが、たまおちゃんの泣きっぷりにあきれちゃいます。
「神事ならわたしなんかよりもミコちゃん達だよね」
「そうなんです……でも、でも!」
 お神輿を誘導していた村長さんが手で合図しています。
 出番ですよ。
 たまおちゃん、吐き捨てるように、
「今日は子供の日なんだから、我慢しますっ!」
 なにを我慢するっていうんでしょうか?
 わたしとたまおちゃん、お神輿の前に静々向かいます。
 わたし、よくわからないけど、たまおちゃんがムニュムニュ言ったら葉っぱを渡します。
 たまおちゃん、葉っぱを子供達の頭でシャンシャン。
 これでお祭りは終わりみたい。
 見ていた観客が拍手をしていると、子供たちが駆け出しました。
「そうだ、親が来てるんでしたね」
 子供たち、お父さんやお母さんに飛びついています。
 学校じゃわんぱくな子供たち。
 でもでも、なかには泣いている子もいますね。
「お父さんやお母さんに久しぶりに会ってるんですもんね」
 わたしも胸が「ジーン」としちゃいます。
「だから、私は我慢しないといけないんです」
「たまおちゃん、なに言ってるんですか?」
「私だってコンお姉さまやミコお姉さまに抱きつきたいのに」
「たまおちゃん、大人だよね……でも、なんでコンちゃんとか……」
 言ってて心配になったのはレッドにみどり。
 二人に親はいないんですよ。
 レッドとみどりは手をつないで右往左往。
 でも、すぐに手を振ってるミコちゃんを発見、駆け出します。
 二人とも、ミコちゃんに抱きしめられて嬉しそう。
「レッドもみどりもミコちゃんがいてよかった〜」
「わ、私もミコお姉さまの胸に抱かれたい」
「たまおちゃん、大人だよね」
「ポンちゃんにはわからないんです」
「はいはい、わかりませんよ〜」
 あんまり解りたくないかも……ええ。
 そうそう、レッドとみどりはミコちゃんの所に行きました。
「ポン太とポン吉はどうしたのかな?」
 わたしが探していると……いました!
 まずポン吉を発見、シロちゃんと何かお話してるみたい。
 ポン吉はシロちゃんスキーだから、超うれしそう。
 するとポン太は……いました、コンちゃんと一緒です。
 二人して露天で何か食べ物を買ってるところですよ。
 イカ焼きを食べて……コンちゃん、ポン太のほっぺを拭いてるの。
 ポン太、真っ赤になってテレまくり。
 わ、わたしのしっぽに激痛が走ります。
 一緒に見ていたたまおちゃんが握りしめてるの。
「たまおちゃん、痛いよっ!」
「むー、私もコンお姉さまにあんなふうにされたいっ!」
「ほっぺのソースを拭いてもらっただけだよ」
「あーゆーのがきっかけになるんです! くやしい! うらやましい!」
「たまおちゃん……巫女なんだよね」
「私もお姉さまとラブラブしたいシタイSHiTAi……」
 そんなたまおちゃんの肩に手が重ねられます。
 わたしとたまおちゃん、その人を見ます。
「たまお、久しぶりだね」
 たまおちゃんのお父さんです。
 ふもとの神社で神主さんをやってるんですよ。
 たまおちゃんのお父さん、すばやくたまおちゃんの首に腕を決めちゃいます。
「まったくお前は……」
「おおおお父さま、首、決まってる、はまってる!」
「まったく、どうしてこんな娘に育ってしまったのやら」
「お父さま、ギブ、ギブ!」
 たまおちゃん、そのままお父さんに連れて行かれちゃいました。
 そこに今度は店長さんと配達人です。
 たくさんの紅白まんじゅうの袋を持ってますよ。
「店長さん、そのおまんじゅうは?」
「今日のお祭りで配る分だよ」
 わたしもちょっと持つとしましょう。
 3人して神社に向かいます。
 社務所のたまおちゃんとお父さんにおまんじゅうを渡すと、子供たちが集まって来ました。
 たまおちゃんとお父さん、おまんじゅうを渡すのに大忙し。
 レッドとみどり、ミコちゃんにおまんじゅうを見せてニコニコ。
 ポン太はコンちゃんに紅白2個ともあげちゃいました。
 ポン吉はシロちゃんと1個ずつ食べてますね。
 みんなラブラブな雰囲気です。
 わたしもラブラブしたい……
 コンちゃんはポン太と一緒です。
 邪魔者はいないんですよ。
 わたし、獣の目、狩りの目で店長さんをチラ見します。
 今こそチャンス。
 それ、抱きついちゃうの。
「好きっ!」
 ギュッ!
「うわっ!」
 声が違いますね。
 クンクン、ニオイも違うんです。
 抱きついたまま、顔を上げるとそこには目の細い顔。
「どーして配達人っ!」
 もう、ポカポカ叩いちゃうんです。
「いや、店長がヒョイって動いたらポンちゃんが……」
 店長さん、こっちを見てニコニコしています。
「なんで店長さん、避けるんです」
「いや、なにか刺すような視線を感じたから」
「わたしにラブラブしてもよくないですか?」
「今、配達人の事、好きって言ったじゃん」
「間違ったんですよ!」
 すると配達人が、
「俺も叩く女の子嫌だな〜」
「配達人は黙ってるんですよーっ!」
 もう、ポカポカ!
 本気で叩いてないのになんて言い草ですかモウ!
 店長さんも配達人も笑ってます。
 むー、この作戦、バレバレだったみたい。


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NCP5(2013)
illustration やまさきこうじ
HP:やまさきさん家のがらくた箱
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