■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■ ポンと村おこし 第107話「お泊り会と温泉の神さま」 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ レッドが帰って来ましたよ。 ふふ、今日は村長さんと一緒みたい。 「ただいま〜」 「おかえり〜、おやつの前に手を洗って〜」 「はーい!」 レッドは奥に行っちゃいました。 村長さんニコニコしながら、 「ポンちゃん、ちょっといいかしら」 なにかな? 「今度、学校でお泊り会をするんだけど……」 「はぁ」 「レッドとみどりちゃんもだけど、ポンちゃんとシロちゃんにも来てほしいかなって」 「わたしとシロちゃんですか?」 「ええ……お泊り会は何をするかわかる?」 村長さん、わたしにプリントを見せてくれます。 えーっと、つまり、学校でみんなでお泊りするってイベントですね。 「村長さん、学校の生徒は大抵、寄宿舎暮らしなんですよね?」 「ええ、ポンちゃん知ってるのよね?」 「はい……千代ちゃんから聞きました」 「千代ちゃんは村の子だけど……千代ちゃんもお泊り会参加するわよ」 「そうなんですか……でもでも、なんでわたしとシロちゃんなんです?」 「?」 「ミコちゃんが行けばいいような……」 「ミコちゃんにもお願いしたけど、レッドちゃんとベトベトになるからって辞退されちゃったの」 「そうなんですか……」 「コンちゃんは何もしないし」 あー、ですね、106話もそんな話でした。 「ポンちゃんシロちゃんには、見守りもしてほしいの」 「じゃあ、無理言ってもミコちゃんがよさそう」 「ポンちゃんもそう思う? ポンちゃんからもお願いしてもらえないかしら」 「あのー……コンちゃんもいたほうがいいかも」 「え、コンちゃんも?」 「コンちゃん、なにもしないけど、見守りくらいできるかも」 「そ、そうね」 わたし、プリントを見てて……ちょっと気になりました。 「あの、村長さんっ!」 「何かしら?」 「ココ! ココ!」 「?」 スケジュールに「温泉利用」ってあるの。 「村長さん、温泉使った事ありますか?」 「ええ、あるわ、出来た時、一番に使った気がするし、今でもたまにね」 「そうなんですか……」 わたし、視線を泳がせてから、 「あ、村長さん、大人ですもんね」 「何の事かしら?」 「村長さんは温泉の神さまを知らないんですよね?」 「……」 「知らない……見た事ないんですよね?」 「神さまの事はポン太くんからも聞いてるけど……」 「出るんですよ、神さまが、子供がいると、子煩悩な神さまが!」 「神さまって、どんな神さま?」 「龍の姿をしてるんです」 「……」 「お泊り会で温泉、使わない方がよくないですか?」 村長さん、困った顔になりました。 ミコちゃんとレッドが奥から出てきました。 「村長さんいらっしゃい、一緒にどうですか?」 「そんちょーもいっしょしよー!」 村長さん、ミコちゃんをじっと見て、 「ねぇ、ミコちゃん」 「はい?」 「温泉に神さま出るって本当?」 「ええ……」 「ミコちゃん、何とかできない?」 「村長さん……温泉の神をやっつける事はできますけど、温泉止まっちゃいますよ」 「うう……」 ミコちゃんの返事に村長さん唸ってます。 わたし、ちょっと考えてから、 「あのー、村長さん」 「何、ポンちゃん」 「寄宿舎の子供達は、いつも寄宿舎のお風呂に入ってるんですよね?」 「そうね……寄宿舎って言っても、老人ホームの一番上の階なのよ」 「大きなお風呂、あるんですよね?」 「そうね、あるわ」 「それじゃダメなんですか?」 「来てくれる親御さんには、村の良さを知って欲しいの」 「あー! でも、温泉、どうなんでしょ?」 「ダメかしら」 「テレビで他の温泉を見た事あるけど、ここの温泉はおおざっぱで」 「お湯はすごくいい感じと思うんだけど」 「それは神さまがいますから、泉質はいいと思います」 「その……神さまってどんな人」 「だから、龍の姿です」 「こわい?」 「お湯を、熱湯を噴き出しますね」 「あぶない?」 「うーん、今までやられたのはたまおちゃんと配達人くらい?」 「人間攻撃するの?」 「マナーにうるさいですね」 「あれ?」 「どうしました?」 「ポン太くんとポン吉くんから、ちょっと聞いた事はあったの」 ああ、ポン太とポン吉、温泉の神に会った事ありますね。 「ポン吉くん、神さまと遊んだって言ってたわよ」 「ですね、遊んでました」 「マナーにうるさいんじゃないの?」 「子供は別みたいです……レッド連れて行くと、子煩悩発動するから」 村長さん、難しい顔をして、 「子供がいると、現れるのかしら?」 「ですね」 「話、わかる人かしら?」 「どうでしょ?」 村長さん、ミコちゃんの方を見て、 「あの、ミコちゃん、ポンちゃんとレッドちゃんを貸してくれる?」 「え、ポンちゃんとレッドちゃんを?」 「ええ……温泉の神さまに会ってみたいから」 「いいですけど……ポンちゃん大丈夫?」 まぁ、掃除ついでに行くとしましょうか。 でもでも、ちょっと気になる事が…… 「あのあの、村長さん……」 「何? ポンちゃん?」 「何でミコちゃんじゃなくて、わたしが一緒なんです?」 「ポン吉くんが、ポンちゃんが強いって言ってたから」 今度会ったら、ポン吉は「しっぽぶらーんの刑」です。 で、温泉に到着なの。 「そんちょーさんといっしょー!」 レッドは嬉しそう。 村長さん、わたしを見ながら、 「ポンちゃん、いつも水着着て入ってるの?」 そう、わたしは「まず水着」なんです。 「最初掃除をする時は水着なんです」 「裸じゃだめなの?」 「裸で掃除してると、なんだかメリハリ付かないから嫌なんです」 「そうなんだ」 村長さんとレッドが浴室へ……わたし、村長さんを捕まえます。 「村長さん、いつも神さまに会ってないんですよね」 「ええ」 「心の準備はいいですか?」 「え、ええ……そんなにいきなり現れるの?」 「レッドがいますから」 わたし、先頭に立って引き戸をカラカラいわせます。 ほーらいました、温泉の神さま。 「レッド、待っておったのじゃ!」 「わーい、かみさまー!」 レッドはダッシュです。 村長さんは固まってるけど。 「ほら、村長さん、心の準備全然じゃないですか」 「ほ、本当に龍の姿をしてるのね」 一度戸、閉めちゃいましょう。 「感想は?」 「びっくりしたわ」 「大人にはマナーにうるさいから、注意してください」 「そうなんだ」 わたしと村長さん、細めに開けた戸から中を見ます。 レッドが頭を洗ってますね。 洗い終わったら、神さまが口からお湯を出して流しています。 わたしがお湯をザブンってしたら泣くのに、神さまならOKってどーゆこと? あとでレッドに問い詰めましょう。 レッド、この後体を洗って、神さま流すの手伝って、お湯に浸かります。 「よさそうな神さまじゃない」 「神さまは普通よいキャラでは?」 「まぁ、そうね」 村長さん、ほっとした表情で、 「これなら子供達を連れて来てもいいかしら」 村長さんがつぶやいた時です。 中から聞こえていたカウントが「10」になったんです。 レッドがザブンと立ち上がるの。 「あたたまりましたゆえ〜」 「うむうむ、よく10数えられたのう」 「べんきょーしてるゆえ〜」 「うむうむ、では遊ぶとするかの」 「やったー!」 って、中から楽しそうな声と音がするんです。 村長さんの笑みが固まっちゃいました。 「ねぇ、ポンちゃん、この音、何かしら?」 「えーっと、村長さんのご想像通りと思います」 「すっごい弾けてる感じがするんだけど」 「村長さんが卒倒しないのを祈ります」 わたしの言葉に村長さん、一度ゴクリと唾を飲みました。 「では、拝見」 言ってから中を覗きます。 って、背中見てるだけで「どんより」してるのわかっちゃうの。 でもでも、すぐに「どんより」から「怒り」に変わりました。 一度わたしの方に向き直ると、 「そ、想像を絶する遊びっぷりなんだけど」 「えっと、わたし、ジェットコースターごっご見た事あります」 「ええ、日本昔話みたいな事やってるわ」 「レッド、よろこんでますよね」 「ええ、レッドちゃん、とっても楽しそう」 村長さん、これでもかって笑顔になった……のは一瞬。 すぐに真顔に、怒った顔になりました。 戸を開けてすぐに、 「コラーっ!」 「!!」 温泉の神さまフリーズ。 ゆっくり村長さんの方にやって来ると、 「何じゃ、いきなり大きな声で!」 「はじめまして、温泉の神さま」 「ふむ……おぬしは何者じゃ?」 「この村の村長」 「むう、今は女子でも村長になれるのか……世も末じゃ」 あー、神さまは昔のキャラだから男尊女卑なんですね。 「で、村長、何用じゃ? なぜ怒っておるのじゃ」 「温泉で遊んじゃダメでしょ!」 「はぁ?」 「泳いだり、ジェットコースターしたらダメでしょ!」 あー、大きなお風呂、泳ぎたくなりますよね。 まぁ、ジェットコースターするのは神さまくらいでしょうけど。 村長さん怒っているのに、神さまは首を傾げて、 「レッドはちゃんと10数えたのじゃ」 「……」 「体もしっかり洗ったのじゃ」 「……」 「全部ちゃんと出来たゆえ、遊ぶのを許可し……」 「神さまが遊びたいだけでしょ!」 村長さん大きな怒りマークを浮かべて神さまをチョップ。 「神さまが一緒になって遊んじゃダメでしょ!」 チョップチョップ! もっとやって、村長さん。 って、温泉の神さまから湯気が上がってます。 「村長、この神をもおそれぬたわけ者がっ!」 神さま、一度村長さんの足元にお湯発射。 すごい熱そうなお湯です。 しぶきがあたって、村長さん一歩引きましたよ。 でもでも村長さんも負けてません。 「神さまがこんなじゃ、子供達を連れてこれませんっ!」 「何っ! 子供が温泉に来んのは村長の仕業かっ!」 ああ、二人の視線が火花散らしてるの。 また神さまから湯気が上がるようになりました。 「ふふ、儂は神、そしてここは儂のテリトリー」 「!!」 「村長の負けは必至!」 村長さん冷や汗。 むう、村長さん、負けちゃうのかな? 「村長、敗れたりっ!」 ああ、神さまが体当たりしてきました。 で、でも、村長さん、急にすまし顔。 軽く横にかわすと、大きなハンドル回してます。 なにかな? か、神さまがしぼんでいきます。 「元栓締めちゃうわよ」 「ううっ! 何たる事をっ!」 「ほらほらー!」 神さま、あっという間にしぼんじゃいましたよ。 今はヘビみたいに細くなっちゃいました。 「子供達の前では、ちょっと大人しくしててほしいのよ」 「えー!」 「えーじゃないっ!」 村長さん元栓を「キュッ」! 「うぉ!」 神さまうめいてます。 なんだか村長さんが悪者に見えてきました。 レッドもそう思ったのか、村長さんの腕につかまって、 「かみさまゆるしてあげてー!」 ああ、元栓締めすぎて神さま痙攣してるの。 大丈夫かな? あ、村長さん、元栓戻して、 「まぁ、元栓閉めたら温泉出ないから……でも、子供達の前ではしゃがない」 「むう……」 「今度のお泊り会の時だけでいいから、大人しくしてる!」 神さま、体をくねらせて、 「儂、子供と遊びたいのじゃ」 「お泊り会、終わったらいいから」 「やったー!」 神さま、またレッドを乗せて日本昔話状態なの。 また元栓締められちゃうよ。 あれれ、村長さん、微笑んでそんな神さま見てます。 「村長さん村長さん、いいんですか、弾けてますよ」 「いいのよ、ポンちゃん」 「?」 「まぁ、悪い神さまじゃなさそうだしね」 村長さん、お湯に浸かりながら…… でもでも、急に険しい顔。 「どうしてこう、微妙な神さまが多いのかしら?」 そ、そうですね…… 子煩悩な温泉の神さま。 なまけ者のコンちゃん。 本当に神さまなのかな? pmy107 for web(pmc107.txt/htm) pmy107 for web(pmy107.jpg) NCP5(2013) illustration やまさきこうじ HP:やまさきさん家のがらくた箱 (pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781) (C)2008,2013 KAS/SHK (C)2013 やまさきこうじ