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■  ポンと村おこし  第114.5話「温泉ツアー」             ■
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 わたしとコンちゃんが配達から帰っていると……
 軽トラックがやって来て、わたし達の前に停まりました。
 先日やって来た二人の職人さんが降りてわたし達に言いがかり。
「ポンちゃんよう、困るなぁ」
「おうおう、本当に困るぜ」
「な、なんですか、いきなり!」
「監督、現場に戻っちゃったじゃね〜かよ」
「折れてたってのに、速攻戻って来たじゃないかよ〜」
 最初はわたしに因縁つけてた二人ですが、すぐにコンちゃんに目を向けて、
「まさかコンちゃんじゃねーだろうな?」
「術で治したんじゃねーだろうな?」
「おぬしら、わらわを疑っておるのかの」
「だって山を壊したりダムを壊したりするじゃんかよー」
「わらわは攻撃系とお色気系なのじゃ」
 って、二人、なんとなく納得したみたい。
 でも、すぐにわたしに向かって、
「じゃあ、どーして監督治っちゃうんだよー!」
 って、わたしをゆすらないでくださいモウ。
『ねぇねぇ、コンちゃん』
『なんじゃポン』
『温泉の神さまを教えた方がいいですかね?』
『うむ……うむ……』
『温泉の神さま、見せたらびっくりしませんかね?』
 コンちゃん考える顔をしていましたが、
『こやつらは知らんようじゃの』
『ですね、わたし達に文句を言うくらいだから』
『現場監督はその辺をしゃべっておらん訳じゃ』
『でしょうね』
『温泉の神の事は秘密にした方がよいのかのう?』
『でもでも〜』
『?』
『温泉の神さまは普段は姿を見せないんですよ、姿を見せずに熱くなったりするんです』
『最初はそうだったのう、イタズラと思われておったのじゃ』
 わたし、めんどうくさくなりました。
 二人の職人さんに、
「温泉には神さまがいるんですよ〜」
 二人の職人さんだけじゃなく、コンちゃんもびっくり顔。
「温泉の神さまが現場監督さんの腕を治しちゃったんです」
 二人の職人さん、わたしをゆすりまくりです。
「バカにすんじゃねーよ」
「おいゴラァ!」
「お二人は温泉に入った事あるんです?」
 って、二人は首を横に振ってます。
 現場監督さんもそうだったけど、工事現場の人は宿舎のお風呂に入っちゃうんでしょう。
「お二人は、大きなお風呂、好きじゃないです?」
「あー、好きかも」
 二人はもってますよ。
「じゃあ、神さま見に行きましょう」
 わたし、二人の腕をつかまえて引っ張って行きます。
 コンちゃんちょっと嫌そうな顔をして、
『これ、ポン!』
『なんです?』
『温泉の神の事をバラしてよいものかの?』
『あの神さま、めんどうくさいから、どーなってもいいもーん!』
『おぬしも……待て、ちょっと待つのじゃ!』
『?』
『現れるかのう』
『!』
『普段は現れんのじゃ』
『レッドがいるから姿を見せる……ですね』

 考えすぎでした。
 二人の職人さん、温泉を見た途端。
「ひゃっほーっ!」
 ああ、掛り湯もしないで入っちゃうと「出ます」よ。
 ザブンと音がしたと思ったら、一気に浴室の温度が上がります。
 お湯が揺れて、盛り上がって、龍の姿になりました。
「たわけ者ーっ!」
 待ってました、温泉の神さま登場なの。
 ふふっ、カンカンに怒ってます。
 職人さんは固まって、温泉の神さまを見ているの。
「これ、湯に入る前に掛り湯もせぬとは何事か!」
 まぁ、わたしもそれは賛成かな。
 職人さん子供じゃないんだから、マナー守りましょ。
「そんなたわけ者には天誅じゃ!」
 ああ、浴室がどんどん暑くなるのがわかります。
 湯気でむんむんなんですもん。
 でもでも職人さん達、ビビって動けないみたい。
「覚悟するのじゃ!」
 ああ、温泉の神さま、今まさに放水・放湯です。
 職人さんに向かって口を開いているの。
「ちょっと神さまーっ!」
「なんじゃ、タヌキ娘」
 とりあえず発砲は阻止しました。
 でも、怒りは収まってません。
illustration やまさきこうじ
「神さま、ここで殺人とかダメですよ」
「我慢ならんのじゃ」
「職人さん達、ちょっとはしゃいだだけでしょ」
「許さん」
 カンカンなんですね。
 むー、機嫌を直してもらうには、アレしかないです。
『コンちゃんっ!』
『なんじゃ!』
『レッドを召喚して!』
『おお、なるほど!』
 コンちゃんが指を鳴らせば、いきなりレッド登場です。
 わたしの胸元に落ちてくるレッド。
 丸くなって寝ています。
 お休みの時間だったかな?
「神さま!」
「なんじゃ、タヌキ娘っ!」
「レッドがいますよ〜」
「!」
「ほらほら、寝てますよ〜」
「!!」
「あやしてみますか〜」
「いいのか、いいのかー!」
 ああ、もう温泉の神さま、目尻下がりっぱなし。
 とぐろを巻いた神さまにバトンタッチです。
「おお、レッド、かわいいのう、眠れ良い子よ〜」
 温泉の神さま、レッドをあやして怒りはどっかに行っちゃいました。
 さて、その隙にわたしとコンちゃんで職人さんを引っ張り出します。
 大事な所は洗面器で隠してください。
 脱衣所まで戻ったところで、
「神さま、見ましたか」
 二人の職人さん、コクコク頷きます。
「はじめて神さま見たぜ」
「俺もびっくりだ」
 途端にコンちゃんの髪がうねります。
「おぬしら、わらわも神なのじゃ!」
 またですよ……コンちゃんいつもお店でグダグダしてるだけだもん。
「おぬしら、わらわも神なのじゃー!」
「え? コンちゃん神さまだったの!!」
「なんじゃとー!」
「だって……なぁ」
 職人さん達、お互いに見合って頷くと、
「やる気のない飲み屋のねーちゃん」
「やる気のないコンビニのねーちゃん」
 二人言います。
 わたし、正解って思うの。
 コンちゃんはカンカンなんだけどね。


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NCP5(2013)
illustration やまさきこうじ
HP:やまさきさん家のがらくた箱
(pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781)

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