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■  ポンと村おこし  第119.5話「気付かないの?」           ■
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 お家に帰ってみると……ミコちゃんがすぐに、
「あら、きれいに揃えてもらったわね」
「床屋さん、チョキチョキ気持ちよかったですよ、レッド寝ちゃった」
「うーん、私のバリカンとは比較にならない?」
「ハサミの方が絶対いいですよ……でも……」
「でも?」
「床屋のおじいちゃん達はバリカンで全部やっちゃう方がすごいって言ってましたよ」
 って、ミコちゃん微笑みながら、
「だってここ、バリカンしかないし」
「ミコちゃん……ハサミで切れないの?」
 わたしの言葉にミコちゃん、視線を泳がせてから、
「ハサミで切ってもいい……って言いたいけど」
「?」
「ここには普通のハサミしかないから、床屋さんみたいに『チョキチョキ』は無理かも」
「そっか、残念〜」
「髪用のハサミ、ないか店長さんに聞いてみるわね」
 ミコちゃんがハサミを使ったら……
 床屋のおじいちゃん達よりもすごいかもしれません。
 なんと言っても邪馬台国の時代から生きてる(?)んだからそんな経験も積んでいるかも。
 シロちゃんも出て来て、
「ポンちゃん、髪を切ったでありますね」
「えへへ、わかる?」
「うむ……いつもとちがうでありますね」
「床屋さんで切ってもらったんだよ」
「なるほど、床屋さんでありますか」
「シロちゃんは知ってるよね?」
「パトロールしているでありますから」
「行った事ないの?」
「本官、ミコちゃんのカットで充分でありますよ」
「でもでも、違うでしょ」
「……確かに違うでありますね」
「床屋さん、シロちゃんも来るようにって言ってたよ」
「むむ……床屋さんはお金がかかるでありますからね」
 シロちゃん、言いながらわたしの髪をさわって、
「しかしこれがプロの技でありますか〜」
 今度は店長さんが来ましたよ。
 冷蔵庫から麦茶を出して飲んでます。
「ねぇねぇ、店長さん」
「あ、ポンちゃんも飲む?」
「お茶はいらないです、ねぇねぇ」
「何? なに?」
「わたしを見て……なんとも思いませんか?」
「……」
illustration やまさきこうじ
 店長さん、じっとわたしを見るの。
「何? どうかしたの?」
「モウっ!」
 叩いちゃうんですよ。
「店長さんのバカばかBAKA!」
「な、何なにっ?」
「髪、切ったんですよ、わからないですか!」
「え? あ? そうなの?」
 店長さん、目をしかめてじっとわたしを見つめるの。
 でも、首を傾げて、
「そ、そんなに変わったっけ?」
「床屋さんで切ってもらったんですよっ!」
「へぇ、そうなんだ」
「どうですか、わかりますか! 髪、変わったんですよ」
「……」
 店長さん、愛想笑い。
 そしてわたしの隙をついて逃げちゃうの。
「じゃ、俺、村長さんに呼ばれてるから」
「待てーっ!」
 すごいダッシュで逃げちゃうんです。
 むー、帰ってきたらお説教ですね。
「彼女の髪型変わったのも気付かないなんて!」
 ミコちゃん微笑みながら、
「きっと店長さん、テレてるのよ」
「そうかな〜、逃げただけのような〜」
 って、今度は目の細い配達人がやって来たの。
 わたし、なにも言わないけど……配達人わたしを見るなり、
「あ、ポンちゃん、どうしたの?」
「!!」
「髪、切ったよね!」
「は、配達人さんはわかるんですか!」
「そりゃ、ね」
 配達人、伝票をミコちゃんに渡しながら、
「今、店長とすれ違ったよ」
「店長さん逃げたんですよ〜」
「ポンちゃん、振られたから髪切ったの?」
「!!」
「まぁ、ポンちゃんなら仕方ないか〜」
「なんですとーっ!」
 もう怒った!
 わたし、配達人をポカポカ叩くんです。
 この男はっ! この男はっ!
「わたし、振られてないもんっ!」


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NCP5(2014)
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