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■  ポンと村おこし  第126話「常連さんの話」              ■
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「きつねいろになるまで、まつゆえ〜」
「はーい」
 レッドの言葉に続くはレッドファンのみなさん。
 今日はレッドがホットケーキを焼く「レッドの日」レッド感謝デー。
 ホットプレートの周りで、レッドファンの常連さんたちはニコニコ。
 レッドも最近焼くのが上手になってきましたよ。
 でもでも、ちょっと危なっかしい時ありますね。
 そんな時はレッドの隣にいるみどりが世話を焼いてくれるの。
 最近はそんなみどりを目当ての常連さんも多いんです。
 今までは女性客ばっかりで「レッドの日」だったけど……
 最近はそんな女性客について「お父さん」が付いてくるんですよ。
 わたし、コーヒーを配りながら、そんな「お父さん」に聞きます。
「あの〜」
「はい?」
 お父さん……そうですね……
 40歳くらいかな?
 カンだけど。
「あのあの」
「はい?」
「面白いですか? 楽しいですか?」
 お父さん、すごいニコニコしています。
 わたしの出したコーヒーを一口飲んでから、
「娘があんまり楽しそうに話しているからどんな所かと思ったら……」
 って、お父さん、わたしのしっぽをガン見してから、
「タヌキやキツネがやってるお店とは……」
「の、のろいますよ、こわいんですよ」
「なんてファンタジー」
 お父さん、すごい目尻さがりっぱなし。
 レッドを見て、
「娘がはまるわけです」
「そうなんですか……」
「でも、私はどっちかというとみどりちゃんですね」
「お父さん、ロリコンですか?」
「昔の娘の姿を思い出すんです」
「あ、そうですか」
「それに……」
 お父さん、わたしをジッと見て、
「ポンちゃん……でしたっけ」
「ええ、ですけど」
「ポンちゃんも娘の子供の頃を思い出せます」
「似てました?」
「うーん、似てるっていうか、ポンちゃんくらいの頃は、いつも楽しそうにしてたかなぁ〜って」
「はぁ……」
「娘、高校にあがっていじめを受けたみたいで、ちょっと引き籠った事があるんですよ」
「そうなんですか」
 今、レッドを見て頭から湯気をたてている常連さん。
「とてもそんな事があったなんで……」
「だから、よかったなって」
 まぁ、レッドやみどりで癒されるんならいいかな。
 むー、でも、レッドのどこがいいんだか。
 レッド、いつもわたしのしっぽをモフモフ。
 みどりだっていつもツンツン。
 わたし、もうちょっと「いいこ」な弟妹欲しかったな。

 夕食の後片付け。
 ミコちゃんが食器を洗ってわたしが拭きあげ係。
「今日の感謝デーにいた男の人はお父さんだったんだ」
「はい、そうなんです」
「レッドちゃんの日には女の人ばっかりって思ってたけど、めずらしいってね」
「お父さんはどっちかというとみどりがよかったみたいですよ」
「ロリコンなの?」
「わたしもそう言った……娘の子供の頃を思い出すそーです」
「ああ、なるほどね〜」
 ミコちゃん、考える顔になって、
「みどりちゃんの日も作らないとダメかしら?」
「今日来たお父さんは一人だけですよ〜」
「だって、今から増えるかもしれないじゃない」
「増えてから考えてもいいんじゃないですか」
「そうね」
 ミコちゃん、そう言って微笑みながら、
「あ、でもでも」
「どうしたんです?」
「今日のレッドちゃんの日……感謝デー」
「はい」
「お金もらうの忘れてたの」
「あらら……」
「そうなのよ、ついつい」
「どうするんです?」
「うーん、連絡先は判ってるから……また来てもらってもいいし、どうせまた来るだろうし」
「ですね、レッドスキーな人ばっかりでしたから」
「でも……」
 ミコちゃんの頭上に裸電球が光ってるの。
「あのお父さんに電話しちゃいましょ」
「え? お父さんに電話するんです?」
「みどりちゃんに接客させて、未払い&みどりちゃんの日でさらに追加料金」
「ミコちゃん、それってひどくない?」
「お客さんも喜ぶからいいじゃない」
 ミコちゃん、全部洗い終わってカレンダーを見てます。
 連絡先の番号が書いてあるんですね。
 あれれ……
 わたし、ちょっとびっくり。
「ミコちゃんミコちゃん!」
「どうしたの? ポンちゃん?」
「これ! コレ!」
「うん?」
 カレンダーには「レッドの日」こと「感謝デー」。
 すぐお隣に「大感謝デー」ってあるの。
「この『大感謝デー』ってなんですか?」
「あ、これ……」
 ミコちゃん、苦笑いしているの。
 この「大感謝デー」ってなんなんでしょうね。

「大感謝デー」……コンちゃんムスっとしてるの。
 コンちゃんの定位置のテーブルに3人の女の子が同席。
 さっきからワイワイ話しているんです。
 でもでもコンちゃんはずっとムスっとしたまんま。
 わたし、レジに立ってさっきからヒヤヒヤしてるの。
 なんだかコンちゃん切れそうなんだもん。
 でもでも女の子3人はそんなコンちゃんの気も知らないで「ワイワイ」。
 こわいなー。
 切れないかなー。
 ひさしぶりに「必殺」心臓マッサージかもー。
 あ、いいタイミングでミコちゃん奥から出てきました。
 わたし、ミコちゃんをつかまえて、
『ねぇねぇ!』
『な、何? 小声で?』
『大感謝デーってこの事ですよね?』
『ええ……どう、様子は?』
『コンちゃんMK5かも』
『MK5って古くない?』
『面白いですよ〜』
『MK5……』
 ミコちゃん、そっとコンちゃんテーブルを見ています。
 ああ、コンちゃんすごく面倒くさそう。
 早く切れないかな。
 切れたところ、すごく見たい。
 お客さん相手に切れたら、絶対ダンボールの刑なんだから。
 つ、ついに、コンちゃんの頭上にキノコ雲発生。
「まったくおぬしらは一体何がっ!」
「さぁさぁさぁ!」
 って、コンちゃんが立ちあがったと思ったら、3人に捕まって連行されました。
「さあさあさあ!」
「な、何をするのじゃー!」
 3人はコンちゃんを連れてわたしとミコちゃんの横を通って奥へ。
 そしてトイレに入っちゃいました。
「ねぇねぇ、なんだか思っていたのと違う」
「どう違うの?」
「コンちゃんが怒って必殺心臓マッサージ」
「トイレに行ったわね」
 ミコちゃんがつぶやくと、トイレのドアが開いて一人やってきました。
「あの、トイレは狭いので、どこか部屋を」
 ミコちゃん考える顔になって、
「パン工房空いているから使って」
「ありがとうございます」
 って、一度トイレに戻ったかと思うと、コンちゃん&3人はパン工房に行っちゃいました。
 あれれ、コンちゃん半裸ですよ。
「ミコちゃんミコちゃん!」
「何、どうしたの?」
「コンちゃん脱がされてましたよ」
 って、わたし、わかりました。
「も、もしかしたらこれが百合会ですか? たまおちゃんがいたら喜びそう」
「うーん……実は私は聞いてるの」
「え、そうなんだ、百合会じゃないんですね……で」
「で?」
「百合会ってなんです? ゆり会って?」
「ポンちゃんってエロポンだけど、知識が偏ってるのよね」
「いいじゃないですか……でも、今日の大感謝デーってなんなんです?」
「もうすぐわかるわよ」
「?」
 パン工房の方が騒がしいんだけど、しばらくすると静かになりました。
 まずは3人さんが出て来て、テーブルに着きます。
 そして何故か拍手。
 後からコンちゃんがめんどうくさそうな顔で……
「おお!」
 わたし、ついつい声出ちゃいます。
 コンちゃんの顔はめんどうくさそうなんですが、着ている服はすごい事に。
「コンちゃんどーしたんですか!」
「むう、あの連中に着せ替えさせられたのじゃ」
「コンちゃんかっこいい!」
 そうです、ファッション雑誌に出てきそうな格好なんです。
 いつものメイド服もコンちゃんが着れば格好いいんですが、この格好はハンパないの。
「コンちゃんすごい、超かっこいい」
 コンちゃん、ちょっと赤くなって、
「そうかの、そうかの」
「むー、コンちゃんは美人だから、すごい似合ってる」
「そうかの〜、そうかの〜」
 あ、コンちゃん、なんだかにやけてます。
「拍手、続いてますよ、早く行ったらどーですか?」
「おお、そうじゃの、行くかの」
 って、なんだか歩き方もモデルみたい。
 コンちゃんがお店に行っちゃうと拍手もさらに大きくなってるの。
 ミコちゃん出て来て、
「コンちゃんどうだった」
「なんだがご満悦」
「そう、ならいいかしら」
「あの3人はなんなんですか?」
「デザイン学校の生徒さんみたい……以前からパン屋さんに来てたのよ」
「へぇ、そうなんだ」
「コンちゃんスタイルいいから、ああいった服、似合いそうよね」
 って、コンちゃん、紙の手提げを持って戻って来ました。
「次の服にチェンジなのじゃ」
 ノリノリですね。
 パン屋のファッションショーは続くんです。
 ああ、ミコちゃんも捕まっちゃいました。
 ミコちゃんも強制参加みたい。
 わたしはコーヒーでもいただきながら眺めるとしましょうか。
illustration やまさきこうじ



 今はネットな時代なんですよ。
 コンちゃんミコちゃんのファッションショーはオンライン動画なの。
 って、いつのまにかお店は常連さんでいっぱい。
 わたしと店長さん、びびりまくりなの。
「お、お客さんすごいですよ」
「常連さんばっかりだけど、何、コレ?」
 コンちゃんがモデルさん風に歩いて引っ込んで……
 わたし、ついつい見入っちゃいます。
「コンちゃんきれい〜」
「まぁ、コンちゃん見てくれだけは美人だからね」
「ですね」
 ミコちゃんが今度は出て来て引っ込んで……
 店長さん眉をひそめて、
「ミコちゃんもかなりの美人さんだよね」
「て、店長さんまさかミコちゃんにほれちゃいました?」
「ちょっといいかも〜」
 わたし、店長さんに肘鉄なの。
 店長さん苦笑いしながら、
「あの常連さん、たまにファッションショーやってくれないかな」
「お店の売上、あがりますもんね」
「いや、本当、すごいお客さんだよ」
 わたしも店長さんも一緒になって見てたんですが……
 なぜか「嫌」な予感がしてきたんです。
「店長さん、わたし、嫌な予感がします!」
「おお、ポンちゃんも! 俺も何か感じる!」
 って、窓の外に巫女服が!
 走って来る巫女服を追ってミニスカポリスが!
 お店の中はファッションショーで盛り上がってて気付く人もいません。
 カウベルがカラカラ鳴って、息を弾ませたたまおちゃんがコンちゃんミコちゃん見ています。
「お姉さまっ!」
 駆け出そうとするたまおちゃんをシロちゃんが捕まえます。
「ドウドウっ!」
「シロちゃん、離して! 私は行くの!」
 わたしと店長さんもたまおちゃんを押さえるのを手伝います。
 そしてお店の外へ。
「お姉さまーっ!」
「なんでたまおちゃんがやってくるの!」
「社務所で動画見てたらお姉さまが!」
 あー、見てたのか……
「ひどい、私をのけものにして!」
「たまおちゃん神社の仕事あるでしょー」
「今日は店終いしちゃうんです、臨時休業しちゃうんです」
「店終い」なんて言ってますよ。
 たまおちゃん、邪悪な目になりました。
 桃色オーラが渦巻きはじめるの。
「わーたーしーをーのーけーもーのー」
 誰も「のけもの」なんかしてませんよ。
 店長さん叫ぶの。
「ポンちゃんなんとかして」
「えー! 無理!」
 この状態のたまおちゃんは、わたしだって苦手です。
「得物ないの?」
「打ち出の小槌はお店の中です!」
 わたしと店長さん、シロちゃんを見ます。
「シロちゃんっ!」
 はもって言うの。
 シロちゃん、ちょっと考える顔をして、
「本官も発情期のたまおちゃんは御しきれません」
「毎晩一緒に寝てるんだよね」
「とは言われましても……」
 シロちゃん、急に顔を赤らめて店長さんを見るんです。
「シロちゃん?」
 わたしと店長さんでそんなシロちゃんを見つめるの。
「二人とも、いいと言うまで目を閉じるであります」
 はぁ?
 ともかく言われた通りにするんです。
 店長さん目を閉じましたよ。
 わたしは興味津津なので開けたまま。
 って、シロちゃんため息をついて……
 パンツを脱いで……
 たまおちゃんの目の前に「ソレ」をちらつかせるの。
illustration やまさきこうじ
「ほら、コンちゃんのパンツであります」
「はぁっ!」
 って、今、シロちゃんが脱いだんだよね。
 でもでも、我を失って桃色オーラにのまれたたまおちゃんには区別つかないみたい。
 どんなパンツもコンちゃんのパンツに見えるのかも。
「獲って来るであります!」
 シロちゃんがパンツを丸めて投げると、たまおちゃんそっちに向かってダッシュ!
 と、とりあえず一件落着かな??
 かな??


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NCP5(2014)
illustration やまさきこうじ
HP:やまさきさん家のがらくた箱
(pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781)

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