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■  ポンと村おこし  第127話「ポン太とシロちゃんの西部劇モード」    ■
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「獲って来るであります!」
 シロちゃんがパンツを丸めて投げると、たまおちゃんそっちに向かってダッシュ!
 巫女服なのにすごい走り。
 でもでも……
「まずくないです?」
 たまおちゃんの走って行く先は駐車場の周りの茂みなんですよ。
 茂みだけならいいけど、ちょっと崖になってます。
「あー!」
 叫び声を残してたまおちゃんは姿を消しました。
 落ちてますね。
「ちょっとちょっと、大丈夫?」
 わたし、心配になって行ってみるの。
 崖っても1メートルくらい?
 わたしとシロちゃんで現場まで行ってみると、たまおちゃんが落ちて目を回しているの。
 でも、手にはしっかりと戦利品のパンツが。
「おねえさまのパンツ〜」
 目を回しているたまおちゃん、どうみても気を失っているんだけど……
 欲望は素直なものですね、パンツをクンクンして恍惚としてます。
 でも、恍惚、一瞬なの。
 たまおちゃんの目、すぐに正常な状態になりました。
「ちょっとー!」
 今度は怒ってますよ。
 パンツを握った手をブンブン振って、
「このパンツ、シロちゃんのパンツ!」
 叫んでます。
 わたしもシロちゃんも返す言葉もないんです。
「私を騙した! シロちゃんひどい! 警察の犬のくせに!」
「目の前で脱いでいたではないですか」
「え? そうだっけ?」
 たまおちゃん、頭の上に「?」を何個も浮かべているの。
 わたしも見てたけど、シロちゃんは確かに目の前で脱いでいましたね。
 シロちゃん、たまおちゃんの手からパンツを奪うと、
「本当にコンちゃんやミコちゃんの事となると、見さかいなくすでありますね」
 って、考える顔をしていたたまおちゃんだけど、
「あ、そうだった、お姉さま達のファッションショーやってたんだ!」
 って、お店にダッシュしそうになります。
 そんなたまおちゃんにシロちゃんの一撃。
「うっ!」
 短いうめき声とともにたまおちゃん、気を失っちゃいました。
「本当にたまおちゃんは面倒くさいであります」
「あれれ……もしかしてシロちゃん、焼いているとか?」
 わたしの「カン」がついつい言わせます。
 シロちゃん、崩れ落ちたたまおちゃんを抱えながら、
「今は本官がたまおちゃんと一緒に寝ているであります」
「ふふ、そこに愛が芽生えたとか!」
「なんならポンちゃん交代するでありますか? ポンちゃんたまおちゃんと寝たいでありますか?」
「うを!」
 たまおちゃんと一緒にお休み?
 ダンボールで何度が一緒した事あります。
 微妙かな〜
 たまおちゃんがまとわりついて来るの、「何か」を感じちゃうんですよね。
 百合巫女って話ですし。

「かうぼーいゆえ!」
「はぁ、カウボーイですか」
 今日のレッドはウエスタンなスタイルです。
 腰にさげた銃を抜いてクルクル回しながら、
「せいぎのみかたゆえ!」
 って、銃をわたしに向けて言うんです。
「コラ! なに人に銃向けて言うんですか!」
「えへへ」
「人に銀玉鉄砲向けちゃダメでしょ」
「えへへ」
 わたし、パトロールから帰って来たばっかりのシロちゃんに、
「ねぇねぇ、レッドの相手をしてあげてよ」
「本官がでありますか?」
「うん……勝負の相手してあげて」
「レッドは弱いでありますよ」
 言われたレッド、でも、ニコニコして、
「しょうぶしないとわかりませぬ」
「しないでも判るであります」
「シロちゃにはまけませぬ」
「本官も負ける気しないであります」
「しょうぶして! しょうぶ!」
「しょうがないでありますねぇ」
 シロちゃん、ちょっと呆れ顔で、
「負けたら今日のおやつはないでありますよ」
「えー!」
「最初から負けるような口ぶりであります」
「シロちゃつよいゆえ、かてませぬ」
 わたしも、
「さっき『まけませぬ』って言ってなかった?」
「ポンねぇ、ちぇっくきびしすぎ」
 って、レッドとシロちゃんが駐車場に出るの。
 わたしも一緒になってお外へ。
 そこにお鍋を持ったポン太がやって来ました。
「あ、ポン太、どうしたの?」
「ポン姉、実はお醤油を分けてもらえって」
「え? 醤油? ぽんた王国で作ってるじゃないですか!」
「あれは売り物だから家では使わないんです」
「そ、そんなもんなんですか……おいしいって評判ですよ」
「だから余計家では使えないんです」
「まぁ、お醤油くらい、いいと思うけど」
 ポン太が持っているお鍋を受け取ると、中にはおだんごたくさんなの。
「これは?」
「おばあちゃんが白玉団子をいっぱい作ったからって」
「そうなんだ……いただきます」
「ポン姉ポン姉、どうしたんです?」
 ポン太がレッドとシロちゃんを見ながら言うのに、
「ああ、レッドが西部劇ごっこしたがってるんだよ」
「カウボーイな格好してますね」
「ふふ、ミコちゃんが作ったんだよ」
 レッドとシロちゃん、背中合わせに歩き出すの。
 十歩あるいた所で振り向いて勝負ってヤツですね。
 でもでも、レッドの方が断然足が短いから、あんまり離れているように見えませんね。
「ろーく、なーな、はーち、きゅう!」
「十であります」
 最後の「十」はシロちゃんでした。
 振り返るレッドとシロちゃん。
 引き金を引くのはシロちゃん。
 後ろに飛んで一度は避けるレッド。
 思った以上に名勝負? かな?
 って、きっとシロちゃんが遊んであげてるんですよ。
 わざと外してるんですね。

 レッドの額にはペイントが弾けた痕。
 でも、ニコニコ顔で白玉団子を食べているの、あんこをたくさんかけてね。
「うまうまです!」
「レッド、勝負に負けたらおやつ抜きでありますよ」
「シロちゃ、かたいことはいわずに〜」
「約束では?」
「むー!」
 レッド、シロちゃんをじっと見て、その手を取って、
「シロちゃはですね〜」
「なんでありますか?」
「おはだすべすべ、やわらかです」
「はぁ」
「しらたまのようでーす」
「もちあげて、許してもらおうとしているでありますね?」
「ふふふ」
「しょうがないでありますねぇ」
 シロちゃん、レッドの空になったお皿に白玉をおかわりしてあげるの。
 きなこをかけてあげながら、
「レッドは口先だけは達者でありますね」
「ほめことばですかな?」
「あんまりいい意味で言ってないであります」
 レッド、きなこしらたまを一つ食べてモグモグしながら、
「きつねゆえ、ほめことばとします」
「ろくな大人にならないでありますよ」
「たくましく、いきまする〜」
 そんなレッドを見ていたポン太が、
「ふう、ボクもそんな感じで言えたらなぁ」
「ポン太、どうしたんですか?」
「いや、レッドみたいに褒め言葉の一つもポンと出ればって」
「はぁ? 出たらどうなんです?」
「コン姉とデートできないかな」
 って、ポン太、頬をポッと赤らめて言うの。
 わたし、ちょっと考えてから、
「シロちゃんに『白玉みたい』って褒め言葉もだけど……」
「なになに、ポン姉?」
「コンちゃん、ミコちゃん、シロちゃんは褒めるなんて簡単じゃ?」
「どうして?」
「だって美人だからテキトーに行ってもヒットですよね」
「は?」
 わたし、シロちゃんの手を握って、
「シロちゃん、かわいい、素敵だ、美しい!」
 なんかちょっとムカつくけど……シロちゃん結構美人さんだからスラスラ出ます。
 って、シロちゃん嫌そうな顔で、
「ポンちゃん何を言うでありますか?」
「いや、美人に美人って言うのは普通に言えないかなって」
「はぁ……」
 わたし、ポン太に向き直って、
「コンちゃんに『綺麗』とか言うのは簡単と思うけど」
「コン姉は綺麗だから綺麗って言うのは……うん……でも……」
 ポン太、また赤くなってるの。
 うーん、好きな人にはなかなか話しかけるのも難しいのかな?
 シロちゃんが、
「ポン太はコンちゃんとデートしたいでありますね?」
「はい……シロ姉」
 ポン太、シロちゃんをじっと見て、
「でも、どうしていいのかわからなくて」
「どうしていいもなにも、申し込めばいいではないですか?」
「でも……」
「?」
「一度勝負したら、レッドに持って行かれました」
 ああ、覚えてますよ(68話)、あの時はレッドがデートをさらっていきました。
 シロちゃんも覚えているみたいで、考える顔になって、
「ポン太は……勝負に勝っていいのか負けていいのか、迷っているでありますね」
「はい……勝ってデートしてもらった方がいいのか、コン姉に花を持たせた方がいいのか」
 シロちゃん、白玉を口に運びながら、
「コンちゃんのようなキャラには白黒はっきりさせた方がいいであります」
「勝負に勝ってデート……ですか?」
「であります」
「でも、レッドは負けてデートしてもらってましたよ」
 本人レッドはそんな話聞きもしないで白玉食べてます。
 口のまわりはきなこまみれなの。
 シロちゃんそんなレッドの口を拭いてあげながら、
「レッドは子供でありますよ、勝っても負けてもデートであります」
「そ、そうだったんだ」
「大体あの女キツネのズルキツネはとっ捕まえてでもデートしたらいいであります」
「シロ姉、言いますね」
「ポン太はちょっと考えすぎであります、男ならガツンと行くであります」
「そ、そう……なんだ……」
 あ、なんだなポン太、元気になったみたいです。
「ボク、なんだかデートしてもらえそうな気がしてきました!」
「そうでありますか」
「シロ姉、ありがとうございます!」
 ウキウキ顔のポン太。
 でも、シロちゃんはさめた顔で、
「ポン太は甘いでありますよ」
「!」
「あの女キツネでズルキツネとデートを賭けて勝負するでありますよね?」
「はい」
「勝てると思ってるでありますか?」
「!!」
 そうです、コンちゃんきっと「ゴット・シールド」辺りでへっちゃらな気が。
「ちょっと本官と勝負してみるでありますか?」
「え!」
「まず本官を倒して、それからコンちゃんであります」
「シロ姉、ボクを試してくれるの?」
 シロちゃん微笑んで、
「ポン太は……女に弱いでありますよね、まず本官に引き金引けなければ、コンちゃんなんて無理であります」
「シロ姉、ありがとう!」
「では、駐車場で勝負であります」
「はい!」
 ポン太、言われて先に行っちゃいます。
 む、途中で手と手で印を結んでますよ。
 おお!
 ポン太の体が「ドロン」と爆発して変身しました。
 ニンジャ姿になってるの。
 むー、修行であんな事までできるなんて、コンちゃんのコスチュームチェンジと同じですね。
「シロちゃん優しいね」
「ポンちゃん、何でありますか?」
「だってポン太の練習相手になってあげてるんだよね」
「ポンちゃん……本官レッド相手ではモヤモヤ解消になりませぬ」
「え?」
「ポン太クラスの得物なら、倒し甲斐もあるであります」
「な、なに? それ?」
「動く標的であります」
 ああ、シロちゃんの目がランランとしてるの。
 あれは狩人の目です、警察の犬なんだけど。

「ふーん、そんな事があったんだ」
「そうなんですよ、シロちゃんも結局は撃ちたがりなだけなんです」
「そうなんだ」
 わたし・レッド・ミコちゃんでウッドデッキから決闘の見学なの。
「めがねニンジャ、すてきすぎ!」
「はいはい、レッド、本当の勝負をよく見てるんですよ」
「ぽんた、そんなにつよいの?」
「ポン太は本当はスゴ強なのよ」
「はわわ……どっちおうえんすれば?」
 この言葉に、わたし、ミコちゃんにテレパシー
『ねぇねぇ、ミコちゃん、ポン太とシロちゃん、どっちが勝つと思う』
『え?』
『賭けない、賭け!』
『そ、そうねぇ……ポン太くんはニンジャ屋敷のアトラクションでもやってるのよね』
『うん、手裏剣投げ方教えたり、敵役(的役?)やってるよ』
『長老の元で修行もしてたから、結構すごいかも、ポン太くんが勝つかな?』
『シロちゃんも強いよ』
『でも、術は使えないでしょ』
『そ、そうだね……』
 ミコちゃん視線を泳がせながら考える顔をして、
『じゃ、私はポン太くんに賭けるわ』
『ポン太が負けたら?』
『その時はおかず一品追加してあげる』
 おお、一品追加! ステキ!
 これはシロちゃんを応援するしかないです。
 ポン太が死んだらおかず一品なんですから。
「シロちゃんガンバレー!」
「ポンちゃんシロちゃんを応援するの?」
「おかず増えるの嬉しいもん」
「普通はタヌキ仲間で応援しないの?」
「おかず優先なの!」
「お姉さんと思っていたのに、ダメダメじゃない?」
 ミコちゃんあきれてます。
 でも……なんか勝負の行方、わかりません。
 レッドがわたしの腕をゆすって、
「ねぇねぇ、どっちがつよいのー!」
「なんだかいい勝負ですね」
「ぽんたがつよいの? シロちゃがつよいの?」
「わ、わたしにもわからなくなってきました……」
 名勝負なのはいいけど、わたしはシロちゃんが勝てばどーでもいいの。
『シロちゃん、さっさとポン太をやっつけてくださいっ!』
『ポン太なかなかやるであります』
 シロちゃん発砲!
 避けるポン太、同時に手裏剣攻撃。
 シロちゃんも軽いステップ……でもギリギリじゃない?
『シロちゃん負けたら大変な事になっちゃうんだよ!』
『とは言われても……』
『お外でお休みだよ!』
『!!』
 本当は一品増えるかどーかなんですが、「お外でお休み」は効果絶大。
「しょうがないでありますね」
 シロちゃん、立ち止まりました。
 ポン太の目が輝きます。
 背負っていた刀を抜いて突っ込んで行くの。
「ポン太の弱点は……」
「シロ姉、お命頂戴っ!」
「女に弱いでありますよ」
 って、シロちゃん、銀玉鉄砲を手放して足元に落としました。
「!!」
 わたしもポン太もミコちゃんもびっくり。
 って、シロちゃん、両手を腰に手をやって……
「えっ!」
 パンツをずり下ろしました!
 サッと脚を抜くと、脱いだパンツを丸めて投げます。
 わたし、ポン太、真っ赤です。
 動きが固まったポン太。
 そんなポン太の顔に丸めたパンツが命中するの。
 シロちゃんのつま先が動きます。
illustration やまさきこうじ
 蹴り上げられる銀玉鉄砲。
 見事にシロちゃんの手に収まるの。
 えーっと、蹴り上げたら大事な所、正面のポン太に丸見えじゃないです?
 ああ、パンツ命中で見えないようにはしてあるんだ。
 頭から湯気をたててフリーズなポン太。
 シロちゃんの銀玉が連射されて「勝負あり」。

「バカっ!」
 ミコちゃんおかんむり。
 わたしとシロちゃん、ダンボールに入ってお外でお休みです。
 あのパンツ攻撃でミコちゃんさっきから怒り続け。
 シロちゃんは本人で即ダンボールの刑なんだけど……
 わたしもすぐにウソをついたのがばれて一緒にダンボールの刑になっちゃった。
「子供相手になんて事するの、バカっ!」
 ミコちゃん言って家の中に入っちゃいました。
「ポンちゃんのせいであります」
「わたし、パンツ脱げって言ってないから」
「お外でお休み……結局なったであります」
「うぐ……」
 そうそう、ダンボールの中にはレッドもいるの。
 レッドはキャンプ気分なんですけどね。
 そんなレッド、シロちゃんの腕をゆすって、
「シロちゃのぱんつこうげき、すごすぎ、いひょうつきまくり」
 わたしもシロちゃんも赤くなるの。
『レッドが言うと、なんだか恥ずかしいであります』
『わたしも思い出しただけで恥ずかしいよ』


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NCP5(2014)
illustration やまさきこうじ
HP:やまさきさん家のがらくた箱
(pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781)

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