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■  ポンと村おこし  第129話「たまお起つ」               ■
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「お姉さまっ!」
 わたしとコンちゃんがお客さんがいないのにぼんやりしてたら、たまおちゃんがやって来ました。
「お姉さまっ!」
「どうしたの、たまおちゃん、神社は?」
「ポンちゃんには用はないんです!」
「本当にどうしたの?」
「わたしはお姉さまに用があるんですっ!」
「だって、コンちゃん、用事あるんだって」
 コンちゃん、細めた目でたまおちゃんを見ると、
「たまお、何用じゃ」
 すごいめんどうくさそう。
「お姉さま、昨日はどうしたんですかっ!」
「はぁ? 昨日?」
 わたしとコンちゃん考える顔。
 昨日……はいはい、ポン太とポン吉の決闘。
 そして保健の先生がさらっていったんです。
 たまおちゃん、コンちゃんの肩をゆすって、
「お姉さま、保健医とどこに行ってたんですかっ!」
「これ、ゆするでない」
「明け方に帰って来てましたよねっ!」
 そうそう、帰って来たのは朝でした。
「いろいろあったのじゃ」
 わたし、コンちゃんにテレパシー。
『ねぇねぇ、正直にマージャンって言ったら?』
『たまおもマージャンしたいって言い出したら面倒なのじゃ』
『ふーん、マージャン嫌いなの?』
 わたし、ちょっと好きかも。
 役が揃っていくとワクワクしますよね。
 あがると嬉しいし。
『わらわ、マージャン好きなのじゃ』
『じゃ、いいよね』
『でも、昨日は大負けだったのじゃ』
『あー』
『あの保健医強いのじゃ、長老もねばっておったし』
『へぇ、そうなんだ』
『徹マンだったので、今日はへろへろなのじゃ』
『だからいつにも増してダラダラなんだね』
『そうじゃ、わらわ、今日はもう仕事せんのじゃ、ポンが言ったのじゃ』
 人のせいにして……いつも働いてないよね。
「ちょっとお姉さま、何でポンちゃんと見つめあってるんですかっ!」
 って、たまおちゃん放置してたら怒り出しました。
「朝になって帰って来たと思ったら、なんだか疲れてて」
 きっと「ボロクソ」に負かされたんですよ。
 さっきのテレパシーの感じからだとそうに違いないんだから。
「保健医と何があったんですっ!」
『コンちゃん、マージャンって言ったら〜』
『む〜』
 たまおちゃん、コンちゃんをガンガンゆすって、
「保健医とイチャイチャしたんでしょ!」
 はぁ! たまおちゃんなにを言い出すんでしょ!
 見ればコンちゃんさらにうんざり顔ですよ。
 それでもたまおちゃん、コンちゃんをゆすり続けて、
「シロちゃんの服も乱れてました!」
「……」
「三人で何やってたんですかっ!」
「……」
「お楽しみだったんですかっ!」
「……」
「やつれるくらいに激しかったんですかっ!」
 ああ、コンちゃんの頭からポンポン「怒りマーク」弾けてます。
 一度テーブルに拳を叩きつけると、
「徹マンしておったのじゃ、うるさいのうっ!」
「てててテツマンっ! いやらしいっ! うらやましいっ!」
「いやらし」くて「うらやましい」んだ、わたしわかりません。
 って、徹夜マージャンのどこがいやらしいんでしょうね?
 なにか勘違いしてませんか。
 たまおちゃん、コンちゃんに顔をよせてクンクンしてるの。
「保健医のニオイがします、いやらしいっ!」
 へぇ、たまおちゃんも嗅覚鋭いんだ。
 人間はわたし達「獣」より鈍いって聞いてたんだけどな。
「何でわたしの愛は受けてくれないのに、保健医のは受けちゃうんですか」
「だって保健医、勝負に勝ったからのう」
 ってポン太とポン吉の決闘をさらっていったんですけどね。
「じゃあ、私と勝負してくださいっ!」
「な、なんでわらわがたまおと勝負せねばならんのじゃ!」
「わたしがお姉さまと『ねんごろ』になりたいからです」
「わらわは嫌じゃ」
「勝負に勝ってしまえば私の物です」
 って、たまおちゃん、すかさず胸元から「お札」を出しましたよ。
「封印っ!」
 たまおちゃんのドロー(?)
「ゴット・シールド」
 コンちゃんの防御、成功です。
「むむっ! 雷っ!」
 おお、たまおちゃんも「ゴット・サンダー」出せるんだ、すご。
 でもでもコンちゃんうんざり顔で、
「ゴット・シールド」
 コンちゃん、またそれ?
 たまおちゃんの術は弾かれました。
「お姉さまのバカっ! 爆裂っ!」
 たまおちゃん「お札」をシュート。
 と、思ったら投げる前にコンちゃんが、
「ふむ、たまおにゴット・シールドじゃ」
 コンちゃん、そればっか。
 でもでも今度の「ゴット・シールド」はたまおちゃんの周囲に展開。
 投げた「お札」、シールドの外に出られません。
「「え!」」
 たまおちゃんとわたし、ついついはもっちゃいます。
「お札」、ゴット・シールドの中で爆発するの。
 爆発はゴット・シールドの中だけ……中はすごそう。
 奥からミコちゃんの声、
「ちょっと、さっきから騒がしいけど、どうしたの?」
 ミコちゃんは手に配達のバスケットを持ってます。
 コンちゃんそれを見てダッシュ。
「わらわ、配達に行くのじゃ、ポン、後を頼む」
「はぁ……」
 コンちゃんあっという間に行っちゃいましたよ。
「ゴット・シールド」も解けて、爆発も終わりました。
 すすだらけのたまおちゃんがポツン。
「大丈夫?」
「し、死ぬかと思った」
「普通死ぬかと」
「お姉さまは?」
「行っちゃったよ」
 たまおちゃん、ハンカチを出して悔しそうに噛みながら、
「お姉さま……なんでいつも逃げちゃうんでしょ」
「めんどうくさいからじゃない」
「私はこんなに愛しているのに」
 愛しているのに「封印」「雷」「爆裂」なんだ。
「ここはミコお姉さまになぐさめて……」
 って、矛先がミコちゃんに向いたと思ったら、ミコちゃんもダッシュで引っ込んじゃいました。
 閉ざされたドアから青白いオーラ……きっと今のたまおちゃんでは開けないと思う。
「クスン、みんななんで逃げちゃうんでしょ」
「わたしがなぐさめてあげよっか?」
「クスン、なんでみんな逃げちゃうんでしょ」
「たまおちゃん、わたしのなぐさめはいらないの?」
「ポンちゃんじゃ……」
 わたし、たまおちゃんをチョップですチョップ。
 まぁ、わたしもなぐさめる気なんてさっぱりなんですけどね。
 だってたまおちゃん、もうテーブルのおかしを食べ始めてるもん。
 大体「クスン」はうそ泣きなんです。
 するとお店のカウベルがカラカラ鳴って……
 問題の保健の先生が入って来ました。
「こんにちは〜、来たわよ」
「あ、保健の先生、いらっしゃい〜」
「ミコちゃんは、ミコちゃん、家庭訪問に来たわよ、ビールとから揚げね〜」
 保健の先生が叫ぶと、奥からズッコケる音がします。
 怒りを感じる足音がして、封印されていたドアが開いて、ミコちゃんが怒った顔を半分出して、
「家庭訪問って……レッドちゃんもみどりちゃんもいないんですけど」
「いいから出しなさいよー!」
 ミコちゃん言ってもしょうがないって思ったみたいで、すぐに引っ込んじゃいました。
 保健の先生、テレビのリモコンを引き寄せながら、
「あれ、コンちゃんは、いつもグダグダしてるのに」
「配達に行っちゃいましたよ」
「そうなんだ……ふふ」
「どうしたんです?」
「昨日の……」
 保健の先生が言いかけた時です。
 たまおちゃんが「バンッ」とテーブルを叩いて、
illustration やまさきこうじ
「ちょっと保健医さんっ!」
「わっ! 何っ!」
「昨日コンお姉さまとシロちゃんを連れてってましたねっ!」
「こ、コンお姉さまって……」
「一晩中一体何をやってたんですかっ!」
「……」
「今の『ふふ』って何ですか、お姉さまの体は良かったんですかっ!」
「ねぇ、たまおちゃん、私とコンちゃんシロちゃんで何やったと思ってたの?」
「いいこと!」
「そりゃ……まぁ……『いいこと』っちゃ『いいこと』だけど」
「うらやましいっ!」
「私、女同士ってあんまり興味ないのよね〜」
「保健医は贅沢なんです、まったくモウ!」
「いいことって、マージャンなんだけど、徹マン」
「ウソッ!」
 たまおちゃん、保健の先生をクンクンして即、
「お姉さまのにおいがします、やったんでしょ、ええ、やったんでしょ!」
「面倒くさいわねぇ」
 保健の先生トホホ顔で、
「じゃ、どうしろってのよ」
「うらやましい」
「だから徹マンなんだってば」
「徹夜でエロなんてうらやましい」
 わたし、正直さっきから笑い堪えてるんです。
「徹夜マージャン」ゆがんじゃってますね。
 でも、おもしろいから見てましょ。
 保健の先生、トホホ顔だったけど急に明るい表情で、
「ふふ……コンちゃんの身体、最高だったわ〜」
 わたしはウソってわかるんだけど、たまおちゃんはハンカチくわえて悔しがってます。
「うらやましいっ! うらやましいっ! うらやましいっ!」
「たまおちゃんはまだなんだ……まだなんだ!」
「まだ」を強調しますね。
 たまおちゃんフルフル震えてますよ。
 そしていきなり保健の先生を抱きしめてます。
「ああ、お姉さまのニオイ、すてき、私も抱かれたい、抱きしめたい」
「あわわ……」
 保健の先生、たまおちゃんの行動に目を白黒させてるの。
 抱きしめるたまおちゃんを押しのけようとしてるけど……
 たまおちゃんは保健の先生の胸元に顔を押し付けちゃってるの。
「ああ、お姉さまのニオイ」
 保健の先生の胸でクンクンしまくり。
 わたしもちょっと気になる事があります、こーゆー時はテレパシー。
『保健の先生』
『うわ、何よ、テレパシー!』
『そーですよ、テレパシー、質問があります』
『何よ?』
『なんで胸にコンちゃんのニオイがするんですか、やっぱりエッチしたんですか?』
 保健の先生、たまおちゃんを押しのけようとしながら、
『コンちゃんハコになったのよ』
『箱?』
『点棒なくなっちゃの、破産、負け』
『はぁ』
『そしたら暴れ出したんでとっくみあいになって……ね』
 勝負に負けて駄々っ娘なんてみっともない。
 でもコンちゃんらしいかな。
 さぞ悔しかったんでしょ。
 と、今までしがみついていたたまおちゃん、大きな声で、
「保健医さん、お願いがありますっ!」
「!」
「どうやったらお姉さまと『ねんごろ』になれるんでしょう!」
 話、スタートラインに戻った気がします。
 保健の先生たまおちゃんが離れたのに距離をとって、
「私には興味ないのよね?」
「わたしはコンお姉さまとミコお姉さま一筋」
 一筋っておかしくないです?
 二股じゃないですか?
 保健の先生考える顔で、
「いつも逃げられてるのよね」
「はい」
「ミコちゃんはともかく……コンちゃんはなんとかなりそうにない?」
「え! どうして!」
 わたしもびっくりです、コンちゃんは簡単そうなんです?
 保健の先生ニコニコしながら、
「私はマージャンで勝ってやっつけたのよ……何か勝負して勝ったら犯っちゃえば?」
 だそうです、コンちゃんに勝ってモノにするって訳ですね。
 たまおちゃんフリーズ。
「私、何で勝負していいか……」
「コンちゃんなら実力行使がいいんじゃない、力でねじ伏せた方がはっきりして」
「腕力ですかっ!」
「まぁ、そんなとこ」
 保健の先生も無責任な事言いますね。
 後がコワイですよ。
 って、保健の先生、力なく笑いながら、
「でも、それってたまおちゃん今までやってなかったの?」
「!」
「それで勝てないなら、結局一緒じゃない?」
「!!」
 保健の先生、固まってるたまおちゃんを見て、
「たまおちゃんって……弱いの?」
「そ、そんな筈は……」
「一度手合わせしようか?」

 そんなわけで、駐車場で西部劇モードです。
「たまお」vs「保健の先生」。
 対峙する二人の間を風に吹かれた葉っぱが通り過ぎて行きます。
「ポンちゃん、コイントスを!」
「はーい」
 わたし、たまおちゃんに言われてコイントス。
 十円玉が弾ける音と同時に二人が動き出すの。
「封印っ!」
 たまおちゃん、「お札」を投げます。
 保健の先生、すぐさま白衣を開いてポワワ銃を抜くの。
 このポワワ銃抜くのってですね、すごいんです。
 わたし、シロちゃんと帽子男の決闘も見たけど、保健の先生の方がすごいかもしれません。
 発射された「ポワワ」光線、すぐにたまおちゃんにヒット。
「あれれ、あっさり勝負ついちゃった」
 保健の先生、たまおちゃんをやっつけた後で飛んで来る「お札」も撃ち落としちゃいました。
 すすだらけ、くすぶって崩れ落ちるたまおちゃん。
 保健の先生、そんなたまおちゃんに歩み寄って見下ろすと、
「うーん、なんて言うかね……」
「な、何です、保健医さん、言ってください」
 たまおちゃん、なんとか起き上がろうとしながら言うの。
 保健の先生腕を組んで、
「負け癖ついてるんじゃない? スジはよさそうなんだけどね」
「はぁ」
「正攻法じゃダメって事かしら……なら、いいアイデア伝授するわ」
「え! そんなのあるんですか!」
 保健の先生、テキトーな事言っていいんでしょうか?
 いやいや……なんだか嫌な予感がします。
 嫌な予感しかしないんだから。

「さぁ、お姉さま達、私の言う事、聞いてくださいっ!」
 たまおちゃん、今日は強気発言。
 目にも力強さを感じるの。
 閉店前でくつろいでいたわたし・コンちゃん・ミコちゃんはポカンとするの。
「さぁ、お姉さま達、私の言う事を聞かないと……大変な事になりますよっ!」
「きゃー!」
 たまおちゃん、レッドを人質にとってるんです。
 でもレッド「きゃー!」って言ってるけどとても楽しそう。
 レッド、一応縛られてるけど……縛っているロープは縄跳びですよね。
 あんなのすぐに逃げられるはず……だけどレッド楽しそう。
「たすけてー! ころされるー! うわーん!」
「さぁさぁ! レッド、殺されますよっ!」
 茶番……わたしあきれて笑っちゃうの。
 ミコちゃんは怒ってて、コンちゃんもムッとしてますよ。
 二人はお互いに目で通じ合ってから……
「ゴット・アロー」
「ゴット・キャプチャー」
 アローはミコちゃんでキャプチャーはコンちゃん。
 容赦なく発射されるゴット・アロー、たまおちゃんを貫くの。
 そんなたまおちゃんが反動で手を放したところを、コンちゃんのゴット・キャプチャーがレッドを回収。
 ゴット・アローが爆発して、たまおちゃんはすすまみれで床に崩れ落ちました。
 勝負にもなってませんね。
 人質作戦はあえなく失敗。
 って、ミコちゃんコンちゃん、たまおちゃんに歩み寄って、
「まったくレッドちゃんを人質にとるなんて!」
「卑怯極まりないのじゃ!」
 ミコちゃんコンちゃん、ゴット系の術でたまおちゃんをフルボッコ。

 たまおちゃん、夜はダンボールだったんですよ。
 わたし、ちょっと様子を見に行きます。
「たまおちゃん、大丈夫?」
「あ、ポンちゃん」
「フルボッコだったけど」
「ええ、はい」
 たまおちゃん、結構ケロッと……どころか、なんだか桃色オーラが漂ってます。
「なんだかやられた割に幸せそう……」
「えへへ……お姉さま達の術を存分に浴びて、チャージされた感じがします」
「はぁ?」
「お姉さま達の愛を感じました」
「今、ダンボールだよ」
「きっとツンデレなんです」
「はぁ……」
 わたし、たまおちゃんの思い込みにはついていけません。


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NCP5(2014)
illustration やまさきこうじ
HP:やまさきさん家のがらくた箱
(pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781)

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