■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■ ポンと村おこし 第130話「女対決」 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ お昼、お客さんはいませんね。 コンちゃんのテーブルにわたしとシロちゃん。 三人してぼんやりとTVを見ているの。 お昼のワイドショー。 都会では今日も殺人事件みたい。 大体七つの傷の男が住んでる「パチンコ屋」がたくさんあるんです。 毎日「ヒテプ」で人が死んでるんですよ、きっと。 「退屈じゃの、なにかないかの」 コンちゃんぼやきます。 「本官もそう思うであります」 そうそう、シロちゃんは今、パン屋の娘モードでメイド服なの。 「ついさっきまでは忙しかったんですけどね」 実はさっきまで観光バスが三台いっぺんに来てたんです。 すごく忙しかったんだけど…… 観光バスが行っちゃうと途端に「ガラン」。 ギャップのせいもあって、今はすごい退屈なの。 「今日の観光バスでありますが」 「どうしたの、シロちゃん」 「老人会か何かのようでありました」 「ですね……おじいちゃんおばあちゃんばっかりだったような」 「でも……であります」 「?」 「老人なのに本官をジロジロ見るであります……ちょっとエッチな目で」 途端にコンちゃんがため息一つついてから、 「わらわも思ったのじゃ、なんだか歳甲斐もなく色気ついた目だったのじゃ」 「え……二人ともそんな……わたし全然気にならなかったけど」 途端にコンちゃんシロちゃんわたしをにらみます。 でも、すぐに呆れた目になって、 「まぁ、ポンを熱っぽい目で見る者はおらんであろう」 「本官もそう思うであります」 「ちょ、ちょっと二人とも、わたしをバカにしてませんか?」 「ポンはお子さまなのじゃ」 「設定じゃ中学生なんですっ!」 「本官も……設定年齢より精神年齢は低く思うであります」 シロちゃんにはチョップですチョップ。 でも、シロちゃん避けもしないで呆れてます。 「二人ともわたしをバカにしてますっ!」 「その通りじゃ」 「その通りであります」 「むかーっ!」 でも……わたしもさめてきました。 「むう……そう言えばですね」 「ポン、どうかしたのかの、今日は怒りがすぐに収まったのじゃ」 「わたし、そんなにかわいくないですか?」 「?」 「ポン太やポン吉はコンちゃんやシロちゃんを見ると頬染めします」 「……」 「わたしを見ても笑顔を見せても顔を赤らめるなんてしません」 シロちゃん、お茶を一口しながら、 「ポンちゃんはポン太やポン吉が好きでありますか?」 「なんでそうなるの?」 「いや、今の話だとポン太ポン吉に頬染めしてほしいでありますよね?」 「別に……」 「そうでありますか……本官タヌキ同士でラブかと思ったでありますよ」 「ポン太もポン吉も子供ですよ」 「ポンちゃんも子供であります」 シロちゃんにチョップですチョップ。 「でも……ポン太達はコンちゃん達が好きだから赤くなるんだと思うんです」 「ならポン太達がポンちゃんを見ても赤くならないのは……」 シロちゃんが言うのを、わたしは途中で、 「店長さんがわたしを見ても赤くならないのが気にいらないんです!」 「!」 「店長さんはわたしが好きなんだから、毎朝顔を合わせたら赤くなるべきです!」 「……」 「なんです、二人とも、真顔で」 「いや、何故店長が赤くならねばならんのじゃ」 「本官もそう思ったであります」 「二人とも、なに言ってるんですか、恋人と顔を合わせて赤くならないのおかしいでしょ!」 「何故店長が恋人かと言うておるのじゃ」 「本官もそう思うでありますよ」 「わたし、店長さん、恋人、ラバー!」 「ポン、おぬし、おかしいでないかの」 「ポンちゃん妄想ひどいでありますよ」 「二人とも、怒りますよ!」 わたし、バンバンテーブル叩くの。 「わらわの意見を言わせてもらうと……」 コンちゃん、テーブルを指でトントンしながら呆れ顔で、 「店長はなんとも思っておらんので赤面せん」 シロちゃん頷きながら、 「本官もそう思ったであります」 くく……二人とも言いますね、でもでも、 「ふん、わたしと店長さんの仲に二人は焼いているだけなんです」 「いや、わらわ、ポンを敵だと思っておらん」 「本官もポンちゃんが恋敵であれば負ける気ないであります」 「なんですってー!」 「わらわ、シロが一番強敵と思っておる」 「本官、コンちゃん・ミコちゃんがライバルであります」 わたし、二人の襟をつかまえてゆすりまくり。 「わ・た・し・が・こ・い・び・と・な・ん・で・すっ!」 「こわいのう」 「本官、こわいであります」 二人とも、後でなにかしてやる、なにしてやろうかな。 「ふむ、で、ポンよ、おぬし、店長の恋人でよいとしてやろう」 「してやろう……ですか」 「何故店長と一緒にいる時間が少ないかの」 「!!」 そうです、最近なんか店長さんと一緒ってあんまりないような…… 「ま、まさか店長さん、わたしを避けてるんじゃないでしょうか?」 コンちゃん頷きました。 でも、シロちゃんが考える顔で、 「そこでありますが……」 「おお、シロ、どうしたかの」 「本官もコンちゃんも、あまり店長さんと一緒ではないように思います」 「おお、確かに、最近わらわはTVと対面しておる時間が長いかの」 それは仕事もしないでここにいるだけだからですよ。 「本官も……店長さんとあまり一緒ではないであります」 3人して考える顔。 そこにミコちゃんがノコノコやってきて、みんなのお茶を注いでくれるの。 そんなミコちゃんにコンちゃんが、 「これ、ミコ」 「何? コンちゃん」 「ミコ、おぬし、店長が好きかの?」 「ええ、好きだけど」 あ、でも、この問答以前もありました。 「好きは好きでも「ラヴ」じゃないんですよね」 「ええ、私、ポンちゃんもコンちゃんもシロちゃんも好きよ」 「ふむ……で、店長と一緒にいる時間、長くなっておらんかの?」 「店長さんと一緒の時間……ごはんの時くらいよ?」 「ミコは店長と一緒にパン工房におる時間長くないかの?」 「私、出来るだけ一緒にいないようにしてるの、邪魔になると悪いし」 「ふむ」 ミコちゃんは引っ込んじゃいました。 でも、今の様子からするとミコちゃんは店長さん「ラヴ」じゃないみたい。 「店長さんの本命は別にいるでありますか?」 「別にって言うと、村長さんとかみどりとか……花屋の娘!」 って、コンちゃん首を横に振って、 「店長から花屋の娘のニオイはせんのじゃ」 シロちゃん、頷きながら、 「コンちゃん……店長さんはどうなっているのでありますか?」 「うん? 店長がどうなっておるのか……と?」 コンちゃんが首を傾げるのに、シロちゃんはわたしを見ながら、 「ポンちゃんは『設定』では『中学生くらい』であります」 「ふむ」 「店長さんの『設定』はどうでありますか?」 「おお! そう言う事かの!」 コンちゃんがポンと手を打ちます。 「こ、コンちゃん『設定』とか解るの!」 「おまかせなのじゃ、『ゴット・プロフィール』じゃ」 コンちゃんが指を鳴らせば、TVに店長さんのプロフィール表示。 わたし達、画面をしっかり見ます。 3人そろって「どんより」しちゃうの。 「店長……あわれ」 「これでは出番が減るであります」 「今の店長さん『サブキャラ』……なんだ」 コンちゃん、お茶を一口しながら、 「で、ポンは店長と一緒にいて、どうしたいと言うのじゃ」 「ラブラブ」 「できるかの?」 「もちろんです、なんたってエロポンなんですよ」 「おぬし、途中をすっ飛ばしすぎでないかの」 「そうですか?」 シロちゃん、お茶を口元まで運んでから、 「告白したでありますか」 「う……そのつもりなんだけど」 「では、改めて告白してみてはどうでありますか?」 「改めて?」 「何度『好き』と言ってもいいでありますよ」 「なるほど……」 と、コンちゃんの頭上に裸電球が灯りました。 すごいウキウキ顔で、 「では、ポン、練習するのじゃ、あの男を使って!」 「は?」 コンちゃんの指差す先には目の細い配達人。 って、コンちゃんと目が合ったのか、一瞬足が止まりました。 なんだか配達に来る歩みが遅くなったような気がします。 カウベルがカラカラ鳴って、 「あのー、なんか嫌な予感しかしないんだけど……」 ぼやきながら目の細い配達人入って来ます。 コンちゃんシロちゃんで配達人の脇を固めると、 「これ、ポン!」 「なんですか?」 「ほれ、練習台なのじゃ」 「えー、配達人でー」 シロちゃん頷きながら、 「本官も配達人で練習するのがいいと思うであります」 「なんでー?」 「ポンちゃん練習抜きで大丈夫でありますか?」 「大丈夫、エロポンだもん」 「そのすっ飛ばしぶりがダメと思うであります」 って、目の細い配達人、体をゆすって、 「俺、サンドバック嫌なんだけど」 コンちゃん笑いを堪えながら、 「配達人よ、おぬしはポンの恋愛のお手伝いをするのじゃ」 「恋愛のお手伝いってなに?」 「告白の練習台なのじゃ」 「……叩かない?」 「告白に叩くのかの?」 「俺、正直そのパターンが……」 「おぬしの恋愛はSとMかの?」 「うーん、なんだか最近叩かれてばっかのような……」 わたし、目の細い配達人の胸を拳でトントン。 「なんですか、わたしが叩くの、根に持ってるんですか!」 「こわーい」 「根に持ってるんですかっ!」 「だってポンちゃんすぐに叩くじゃん」 「ほら、根に持ってるじゃないですか」 「俺、ポンちゃん見ると叩かれるってビクビク」 もう、本当に叩いちゃうんだから、ポカポカ! 「ちゃんと力加減してるでしょー!」 「叩かないでほしいなぁ」 「これ!」 あ、コンちゃんが割って入って来ました。 「おぬしら、じゃれあってないで、告白の練習をするのじゃ」 そうでした、そんな話でしたね。 「俺、よくわからないんだけど」 「おぬしはポンが店長に告白する練習台になるのじゃ」 「俺が? ポンちゃんエロポンなんだよね、俺、貞操の危機?」 コンちゃんシロちゃん笑ってます、床をバンバン叩いているの。 「わたしだってこんな目の細いのは嫌〜」 ふん、さっきから言われてばっかりだから言いかえしてやる。 あれれ、目の細い配達人、泣いてますよ。 「人の気にしている事を〜」 「そんな繊細なハートを持ってるんだ……顔に似合わず」 「ポンちゃんなんか嫌いだ〜」 「わたしだって〜」 って、コンちゃんなんとか笑いを堪えて、 「ででででは、わらわの術で……ゴット・ミューテーション!」 コンちゃんが指を弾くと配達人は店長さんに変身です、びっくり! 「あわわ、どうなってんだ」 「うわ、配達人が店長さんになっちゃいました」 「ふふ、わらわの術でこんなのお茶の子なのじゃ」 コンちゃん、配達人の背中をバンバン叩いて、 「ほれ、これなら雰囲気も盛り上がろう、告白するのじゃ」 た、確かにこれなら「その気」になれます。 シロちゃんわたしの背中を叩いて、 「告白は緊張するであります、練習した方がよいであります」 「う、うん、わかった、練習してみる」 わたし、店長さん(配達人なんだけど)の前に立ちます。 「ててて店長さんっ!」 ちょ、ちょっと緊張するかも。 でも、頑張るしか! 「店長さん、わたし、わたし!」 って、コンちゃんが指を鳴らしました。 「ポンちゃんっ!」 いきなり店長さん(配達人なんだけど)が抱きしめてきます。 うわ、すごいドキドキ。 店長さんの顔、近いちかい! 「店長さん……わたし、わたし……ずっと前から……」 店長さんの顔が近いし…… 店長さんのドキドキも聞こえるし…… 店長さんに抱きしめられてるし…… 「こっぱずかしーっ!」 ついつい、突き飛ばしちゃいました。 はぁ、きっと今、わたしの頭から湯気が立ってるはずです。 「コンちゃんシロちゃんの言う通りでした、告白こっぱずかしい」 わたし、力なく笑うの。 でもでもコンちゃんシロちゃん、信じられないって目でこっち見てます。 「な、なに、その冷たい目?」 二人が指差します。 見れば……配達人が壁にめり込んでいるの! なぜ! 「きゃー! どうしたんですか、コレ!」 「ポンが突き飛ばしたのではないか」 「ポンちゃんエロポンどころか殺し屋であります」 pmy130 for web(pmy130.txt/htm) pmy130 for web(pmy130.jpg) NCP5(2014) illustration やまさきこうじ HP:やまさきさん家のがらくた箱 (pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781) (C)2008,2014 KAS/SHK (C)2014 やまさきこうじ