■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■ ポンと村おこし 第131話「ポン菓子が来る!」 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ わたし、レッド、みどり、店長さんでテレビを見てるんです。 台所ではミコちゃんが夕飯の準備をしてるの。 わたし、手伝おうかと思ったけど「カレーだからいいわ」だって。 そんなわけで4人してさっきからテレビなんです。 むむ、クライマックスです。 恩返しに来た仔キツネを猟師が撃っちゃいます。 ああ、仔キツネ死んじゃいましたよ、かなしいお話です。 みどりは店長さんに、レッドはわたしにしがみついているの、 レッド、わたしの体をゆすりながら、 「うわーん、おんがえしにきてただけなのに〜」 「人間なんてそんな生き物なんですよ〜」 「てんちょーも?」 わたし達が店長さんを見ると、力無く笑ってますね。 「そうなんです、店長さんも人間なんですよ」 「てんちょーもうっちゃうの!」 「そうなんですよ、レッド悪い子だと撃っちゃうんです」 「いいこゆえ、うたれませぬ」 「本当にいい子ですか〜?」 「うう……」 わたしとレッドがそんな事を話していると、みどりが店長さんに、 「ちょっとアンタ! 本当なの!」 おお、みどり、ナイスアタック。 店長さんをゆすりまくりなの。 苦笑いしながら店長さんはわたしをチラ見して、 「ポンちゃん、どうなるかわかってる?」 「店長さんはいつもそうです、逃げるんです」 「は?」 「いいですか、今の話、見ましたか」 「今の話……最後に猟師が恩返し仔キツネを撃っちゃう……それが?」 「仔キツネはキツネの姿だから撃たれちゃうんですよ」 「そ、そうだね」 「人間の姿だったら撃たれないわけですよ」 「まぁ、人間の姿だったらね、いきなりは撃たないかな」 「でしょ! でしょ!」 わたし、レッドとみどりを両脇に連れて来て、 「わたし達は人間の姿です」 「そうだね」 「みんな恩返しに来てるわけですよ」 「えっ!」 「店長さん、今『えっ!』って言いませんでした? ねぇ!」 「う……恩返しだったっけ?」 「そうですよ、恩返しなんですよ!」 わたし、レッドとみどりの肩をゆするんです。 二人はちょっと考える顔。 まずはレッドの頭に裸電球が灯りました。 「パン、おいしかったゆえ〜」 そうですよ、レッドはお供え物のパンに一命をとりとめたんですよ。 レッドの答えにみどりは頷きながら、 「ゴハンやお散歩してもらったわね……」 みどりはここに連れて来られての事みたいですね。 では、最後にわたしです。 「わたしは店長さんにパンをもらって助けてもらったんです!」 「だ、だったね」 「その恩返しに、人間の姿になってやってきた訳ですよ」 「で?」 「そろそろ結婚してもいい頃と思いませんか?」 「……」 「毎日まいにちパン屋さんで働いて……それもタダで……レッドやみどりの面倒も見て……」 「……」 「そろそろ結婚でしょ、結婚!」 「……」 「鶴の恩返しだってそうでしょ!」 「あれって恩返しだけで結婚してたっけ?」 「文句あるんですか、ええ、ああん?」 ここで弱気を見せたらダメです、一気に押しちゃえ。 わたし、レッドとみどりをほっぽって、店長さんに腕をからめちゃうの。 「さぁ、結婚です、ウエディングです」 「ダンボール準備するかな」 「むー!」 と、カウベルが鳴る音が聞こえました。 足音が近付いて来て、コンちゃん・シロちゃん・たまおちゃんのご帰宅なの。 「あの保健医、マージャン強いのじゃ!」 「きっと積み込んでいるであります」 「3人でかかって負けちゃいましたね……どうしてでしょうか、お姉さま」 どうやら保健の先生と一緒にマージャンやってたみたいです。 3人の疲れた顔を見ると負けちゃったんですね。 むう、3人テレパシーでグルになって負けちゃうんだ。 って、そんな3人と目が合っちゃいました。 途端に店長さんが、 「助けて! タヌキに襲われてるんです!」 たまおちゃんは興味ないのか、さっさと行っちゃいました。 コンちゃんはムスっとした顔で腕組みして、 「ポンも懲りんのう」 シロちゃん、銃を取り出して…… 「強姦はタイホであります」 でも、なんかいつもの銀玉鉄砲と違って大きいの、本物風。 「ちょ、ちょっと! シロちゃんの銃、ちょっとすごくないですかっ!」 ぱっと見本物です……もしかして本物! 「ちょ、ちょっと! まさか駐在さんから本物をもらったとか!」 「これは本物ではないであります」 「だって銀玉鉄砲じゃないよね!」 「これはスプリングガンであります、銀玉鉄砲のすごいバージョンであります」 「そ、そうなんだ……って、撃たないでーっ!」 「タイホ!」 シロちゃん、すごい悪人顔で引き金引くの。 パンパン音がして! け、煙まで出てます! わたしの体に玉が当たって弾けるの! い、痛くないけど、音と煙にびっくり。 わたし、瞳孔開きっぱなし。 レッドとみどりもコンちゃんの陰に隠れてるの。 「ちょ、ちょっとシロちゃんひどい!」 「なにがですか?」 「音するし、威力あるし」 「でも、バネは弱いヤツであります」 って言いながら周囲を見回して、ふすまに向けて「パン」! 見事に穴が開きました。 「やっぱり痛そう!」 「これではタヌキを殺せないであります」 殺す気だったのか…… って、ミコちゃんやって来て苦笑いしてます。 「シロちゃん、ふすまに穴を開けたわね」 ダンボールの刑、決定ですね。 「ポンちゃん、また店長さんを困らせて」 「え、わたしも!」 「そうよ」 「そ、そんな〜」 「ポンちゃん大人しくしていればいいのに、なんで思い出したようにアタックするの」 「だ、だって、たまに迫ってないと、店長さん奪われるかも!」 「……」 ミコちゃんはシロちゃんとコンちゃんを見ます。 「大丈夫よ」 その二人が大丈夫ってどーゆー事? コンちゃんは美人だけ……グータラ。 でも、シロちゃんは美人で真面目です……撃ちたがりですけど。 わたしが不満そうにミコちゃん見てると、力無く笑いながら、 「一番の敵は誰でしょうね」 「ミコちゃん、誰って……まさかミコちゃん!」 わたし、店長さんをにらみます。 店長さん疲れた笑いで、 「ミコちゃん結構したたかだからな〜 裏表あるからな〜」 だ、そうです。 そう言えばレッドがここに住めるようになった「おとうさん」発言はミコちゃんの入れ知恵でしたね。 「まぁ、一晩ダンボールで考える事ね」 むう、時間はたっぷりって事でしょうか。 「大体シロちゃんがいけないんだよ」 「本官は店長さんの依頼で銃を抜いたであります」 「銀玉鉄砲だったら問題なかったのに!」 「銀玉鉄砲のすごいバージョンであります、スプリングガン」 「『すごい』がよけいなのー!」 夜のダンボール、今日は眠る前にもめそうです、もめてます。 月明かりに照らされて青白いわたしとシロちゃん。 肩を寄せ合っているんですね、山の夜は寒いから。 でも、そんなわたしの背中にはレッドがしがみついてます。 ダンボールの刑なんですが、レッドはこれが好きみたい。 「キャンプー」なんて言って、一緒してるんです。 お外でお休みのどこがいいんだか……子供はわかりません。 もう寝ちゃってるし。 「そうそう、シロちゃん」 「何でありますか?」 「さっきのミコちゃんが言ってたの」 「?」 「気になりませんか?」 「ミコちゃんの言ってたの……??」 シロちゃん首を傾げてます。 「ほら、『一番の敵』ですよ『一番の敵』、誰と思います?」 「ああ、あれでありますね」 シロちゃんちょっと視線が泳いでから、 「本官、『一番の敵』はコンちゃんと思うであります」 「だよね」 「コンちゃんは何もしませんが、それだけであります」 「だよね」 「そこで本官思ったであります」 「?」 シロちゃん、わたしの背中で寝ているレッドを抱っこ。 立ちあがってから、銃を抜きます。 「本官、『一番の敵』はコンちゃんと思うであります」 「な、なんでわたしを狙ってるの?」 「『一番の的』はポンちゃんであります」 「は? 的と敵でかけてるの? 小話なの? なんで!」 月明かりに照らされているシロちゃん。 もう警官の顔じゃないです。 殺し屋の顔ですよ〜 さっきわたしを撃ったスプリングガンを「チャッ!」 「先ほどはバネが弱かったであります」 一度軸線をずらして「パン!」 ダンボールに穴開いちゃいました。すごい威力。 「今回のは強力なバネであります」 ああ、すごいコワイ笑み。 「タヌキ狩り、開催であります!」 わたし、脱兎のごとく駆け出すの。タヌキなんですけどね。 「シロちゃんの人殺しーっ!」 パン! パン! 銃声なの!「タヌキ狩りであります」 パン! パン! また撃ってきました! 「わ、わたし、怒るよ!」 パン! パン! し、しつこいっ! 「いつもの事であります」 「ま、まったくモウ!」 「せっかく邪魔の入らないお外でお休みであります」 「え、まさか、こうなると見越して!」 「であります」 シロちゃん、わたしを狙いながら、 「レッドが邪魔でありましたが、とどめであります」 今までもてあそんでいたようですね。 シロちゃんの目が喜々としてます。 引き金にかかった指が動くのが見え…… 「ゴット・アロー!」 シロちゃんの体を光の矢が貫きました。 ああ、シロちゃん崩れ落ちてビクビク痙攣。 ミコちゃんやって来て、 「騒がしいと思ったら、何を遊んでいるの!」 「ミコちゃん、わたしが遊んでいるように見える?」 「ポンちゃんが黙って撃たれていれば、鬼ごっこしなくていいのよ」 「お、鬼ごっこに見えるんだ」 「犬は逃げると追っかけるものなのよ」 ミコちゃん、シロちゃんの手から銃を取り上げ、レッドも救出。 「シロちゃん、計画的だったわね、レッドを人質にとるなんて!」 ミコちゃん、シロちゃんの腕を捕まえると引きずりながら、 「ねぇ、ポンちゃん!」 「な、なに! わたしは犠牲者! 被害者!」 「一番の敵は誰と思ってる?」 「!!」 わたし、しばらく考えます。 「まさか……たまおちゃんとか?」 「ちがうわ」 「わかりません〜」 「店長さんとベトベトしてるのはみどりちゃんやレッドちゃんよ」 「!!」 次の日、わたしはレッドと千代ちゃんとお散歩です。 「昨日の夜はそんな事あったんですよ」 「へぇ、シロちゃんがパトロールしてないと思ったら、そんな事があったんだ」 「です、今頃まだお布団の中でぐったりしてるんです」 「ゴット・アローって痛そう?」 「すごく」 わたしは真剣に言ってるのに、千代ちゃん笑ってるの、モウ! 「あ、でもでも」 「何、ポンちゃん?」 「千代ちゃんお誘いなんだけど……」 そう、今、一緒にお散歩しているのは千代ちゃんがチラシを持って来たから。 わたし、そのチラシを見ながら、 「このポン菓子ってなんです? ポンって辺りがわたしと一緒でちょっと嫌」 「お菓子だけど」 「ドラ焼き?」 「ポンちゃん……」 千代ちゃん呆れてます。 そうそう、さっきからレッドは黙ってますが……レッドは「お米」を持ってるの。 おかげでしっぽをつかまれないでいいんですが、 「お米はどうするんです?」 「ポン菓子に使うの」 「お米を? おせんべい?」 「うーん、ちょっと違うかも」 そんなお話をしながら老人ホームに到着です。 玄関前には配達人の姿と、何か機械みたいなのがあるの。 おじいちゃんおばあちゃん達が集まって盛り上がってるみたい。 機械の近くには配達人と村長さん。 二人が操作してるみたいですね。 「なんだか盛況ですよ」 「ポン菓子、おいしいよ」 「そのポン菓子ってなんなんですか!」 「ポン菓子はポン菓子……」 千代ちゃん、ニコニコしながらレッドの腕を引き寄せるの。 「レッドちゃん、ちょっとちょっと!」 「ちよちゃ〜、ひっぱらないで〜」 千代ちゃん、ニコニコしながらレッドの耳を手でふさぐの、なにかな? 「パン!」 大きな音! 銃声です! 昨日の夜、さんざん聞いたから間違いありません! わたし、千代ちゃんとレッドをかばうように抱きしめるの。 「凶悪犯がいるんです、もしかしたらシロちゃんが復活かも!」 「ポンちゃんポンちゃん、これは銃声じゃないよ」 「千代ちゃん、今のが銃声じゃなかったらなんなんですっ!」 レッドだって目を丸くしてます。 いくら耳をふさいでも、今の銃声は聞こえちゃう。 あれ? 「なんで千代ちゃん、音がするのわかるの?」 すると千代ちゃん、ニコニコしながらレッドの耳をふさぐの。 わたしもすぐに耳を押さえます。 「バン!」 千代ちゃんには音がするの、わかるみたい、なんでかな? レッド、涙目になって千代ちゃんにしがみつきながら、 「おおきなおと〜」 「はいはい、でも、きっとレッドちゃん喜ぶよ〜」 「そうかなぁ〜こわそう〜」 「千代ちゃん、音がするの、わかるんですよね」 「あそこでポン菓子作ってるんだよ」 千代ちゃんの指差す先には配達人が手を振ってるの。 村長さんが機械からなにか出してますね。 なにかな……行ってみましょう。 「配達人さん、なにをやってるんですか?」 「ポンちゃん来たね、ポンちゃん来ないとね」 「なんでわたしなんですか?」 「だってポン菓子だし」 ニコニコ顔の配達人、わたしは首を傾げちゃうの。 村長さんが機械から出したのをわたしの前にやって、 「はい、ポンちゃんどうぞ〜」 「これがポン菓子です?」 「そうよ〜」 わたし、レッド、つまんでみます。 レッド、さっそく口にしてすぐに笑顔。 「おいしー!」 しっぽ振りまくり、獣耳になってるの。 「本当、おいしい……でもでも、これって……」 「何?」 「お米ですよね、ね」 「ふふ、そうよ」 村長さん、千代ちゃんからお米を受け取ると機械の中に入れちゃいます。 蓋をして火にかけるの。 千代ちゃん、レッドと一緒にそんな機械を見ています。 老人ホームのおじいちゃん、おばあちゃんも見守っていますね。 「村長さん村長さん」 「何、ポンちゃん」 「この機械に入れるとポン菓子が出来るんです?」 「そうよ」 「他に何か……砂糖とかまぶしてるんです?」 「何も足さないわ」 火の勢いが強くなって、配達人がみんなを見て微笑んでるの。 「いきまーす」 配達人の言葉におじいちゃん達、耳をふさぐの。 レッドは千代ちゃんに耳をふさいでもらってます。 「バンッ!」 またあの大きな銃声みたいな音なんです。 配達人、機械をひっくり返して……出てきました! お米……ポン菓子になっていますよ! 「ふわわ、不思議〜」 わたし、ついつい操作している配達人をゆさぶるの。 「何なに、ポンちゃん?」 「どうしてお米がこんなになっちゃうんです?」 「さあ、俺も言われた通りやってるだけだから」 「配達人さんもわからないと……」 「でも……」 「でも?」 「ポン菓子とポンちゃんって似てない?」 「ドラ焼きじゃないですよ?」 「じゃなくてさ〜」 「?」 「ほら、お米を入れて火にかけてバンってさ」 「??」 「ポンちゃんすぐに怒るのに似てない?」 もう叩いちゃうんです、ポカポカ! 「わたし、怒った、バンバン叩いちゃうんだからモウ!」 「こわーい」 配達人、ニコニコ顔で言います。 わたし、固めた拳がプルプル。 「本気で叩きますよーっ!」 「こ・わーい」 えいえい、叩いちゃうんだから! ポカポカっ! pmy131 for web(pmc131.txt/pmy131.htm) pmy131 for web(pmy131.jpg) NCP5(2015) (C)2008,2015 KAS/SHK illustration やまさきこうじ HP:やまさきさん家のがらくた箱 (pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=813781) (C)2008,2015 KAS/SHK (C)2015 やまさきこうじ