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■  ポンと村おこし  第134.5話「みどりの絵」             ■
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 今日はなぜだかポン吉のお隣なんです。
「ほら、寝ないでドリルをやる」
 わたし、ウトウトしているポン吉に肘をお見舞い。
 ポン吉はポワポワしたままわたしを見て、
「なにすんだ!」
「寝てるからでしょー」
「寝てないよー」
「舟漕いでた」
「首振りだい」
 もう、肘です、肘。
 ポン吉は頬をプウと膨らませて、ドリルに目をやります。
 でも、一瞬ですよ。
 すぐにまぶたが降りて来て「ウツラウツラ」になっちゃうの。
 でもですね……
 いつも「わんぱく」なポン吉です。
 こんな大人しい時は「かわいい」もんです。
 5分くらいは寝かせてあげますかね。
 そして吉田先生の「髭ジョリ」の餌食になるのも面白いでしょ。
 ああ、もう、机は枕になってます。
 むむ……なんだかコンちゃんを思い出します。
 でもでも、暇になっちゃいましたね。
 いつもならレッドのお供なんですよ。
 で、今日のレッドはというと、みどりと一緒なんですね。
 レッドは今日も「画伯」をやってます。
 みどりはその隣で一緒にスケッチブックを開いてるの。
 どんな絵を描いてるんでしょうね?
 見ればレッド画伯は「みどり」を描いてます。
 なんていうか、普段は子供なレッドも、絵となると「スゴ腕」。
 鉛筆一本で描いたみどりは、まるで写真みたい。
「レッド画伯、今日も冴えますね」
「おお、ポンねぇ〜、そうでしょうか?」
「上手ですよ」
「しかし……」
 レッド、自分で描いた絵とみどりを並べて「への字」口。
「そっきょうでかいたゆえ、たましいがいまいちゆえ〜」
「魂とかいいますか」
「えはこころゆえ」
「上手ですよ」
「うつすだけなら、すまほでもできまする〜」
「だからすごいんですよ」
「えはこころゆえ」
「そんなもんですかね」
「それにですね、すまほにはすごいきのうがあるんです」
「ほほう、なんですか、その機能って?」
「ほせい、すごすぎ、おめめぱっちり」
 ああ、知ってますよ、そんなアプリがあるそうです。
「ポンねぇのどらやきも、いっしゅんでとうきょうどーむゆえ」
「それは大きすぎですよ」
 わたし、チョップです。
 レッドは嬉しそうにしているの。
 この仔キツネは、明るく言ってるけど、こっちのハートはグチャグチャです。
 って、みどりの絵を見たらびっくり。
 みどりもすごい上手です。レッド級。
「すご、みどり、上手!」
「ふん、ワタシにかかればこんなモンよ!」
「いや……こう、大したもんだ!」
「ふん、もっと褒めていいのよ、もっと褒めて!」
「うん、すごい、すごい……」
 みどりの描いたの、レッドじゃないの。
 さっきから寝ているポン吉。
 レッドと一緒で鉛筆だけなんだけど、すごい画力です。
 そうです、いい考えが浮かびました。
「ねぇねぇ、わたしを描いて、わたし」
「……」
「みどり、描けるでしょ」
「まぁ……いいけど」
 みどり、神妙な顔でスケッチブックをめくります。
 新しいページに鉛筆でサラサラ描き始めるの。
 うーん、描いてる時間が短いから、さっき描いたポン吉よりは落ちます。
 でも、即興で描いているけど上手は上手ですよ。
 あっという間にわたしを描いちゃいました。
「ほら、どう?」
「すごいすごーい!」
「まぁ、ワタシにかかればこんなの簡単よ」
「で……」
「胸を大きく描くのよね」
「ふふ、わかってるみたいで、うれしいわ、みどり」
「……」
「胸、大きく描いてくれるよね?」
「……」
「ね!」
「……」
 みどり、じっとわたしを見つめています。
 レッドもわたしを見ていますね。
「で、描けるんですか? 描けないんですか?」
「……」
「レッド画伯は描けなかったけど、みどりは大人だから描けますよね」
 って、レッドがみどりの腕を引っ張ってます。
 みどりの体がその度にゆれるの。
「わかったわ」
「ふふ、聞きわけのいい娘は好きですよ〜」
「ちょっと待ってて」
 って、みどりは描き直し始めます。
 でも、あんまり乗り気じゃないみたいですね。
 渋い顔で鉛筆を走らせるの。
「これでいいの?」
 出来上がったみたいですね。
 おお、みごとにコンちゃん級の胸になってますよ。
illustration やまさきこうじ
「みどり、できるじゃないですか!」
「……」
「そうです、こーゆーふうに描けばいいんですよ」
「……」
 なんですか、みどり、黙っちゃって。
 わたしがみどりを……周囲を見たら、みんなどんよりした目でわたしを見てるの。
「みんな、なんか文句あるんですか?」
 みんな、なんで残念な目をしてるんですか!
 胸は女のステータスなんですよ、ステータス!
 みどり、ぽつりと、
「アンタもつくづく残念ね」
 みんなも頷いてます。
 ほっといてくださいっ!
 わたしがよろこんでるんだからっ!



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NCP5(2015)
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