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■  コンと村おこし  第12話「ザリガニ釣り」               ■
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 さて、今回もわらわが主役なのじゃ。
 しかしのう、わらわは家で「ぽやん」としておるのが好きなのじゃ。
 主役といわれても、何をするでもないのじゃがのう。
「退屈じゃのう」
「コンちゃん、さっきまで老人ホームでポヤンとしていたよね」
「わらわ、あそこの爺婆よりもずっと長生きなのじゃ、一番偉いのじゃ」
 そうなのじゃ、今は老人ホームのお手伝いの帰りなのじゃ。
 今日は老人ホームのレクリエーションをお手伝いじゃったのじゃ。
 うむ、今日は椅子に座って、紙風船でバレーをやったのう。
 楽しかったが、やはり、いまひとつ、パッとせんのう。
「コンちゃん楽しんでたよね」
「紙風船バレーは……やってる時はのう」
「本当、見た目は美女でも中身はご長寿なんですね」
「そうじゃ、わらわ、もう動きとうない、ポン、おんぶー」
「子供かっ!」

 して、パン屋じゃ、おやつなのじゃ。
「わらわは余興を欲しておるのじゃ」
 ポンは知らん顔でおやつの「ちくわ」を食べておる。
 レッドとポン吉が一緒なのじゃ。
 ミコはニコニコしておるが、心の中はわからんのう。
「わらわは余興を欲しておる、2度言ったのじゃ」
 レッドがしっぽをフリフリ。
「おさんぽ!」
「おさんぽだけではつまらんのじゃ」
 ポン吉が、
「釣りでも行くか? おかず釣るついで」
「釣りは坊主の時が退屈じゃのう」
「それは魚に言ってー」
 ミコは皿やコップ・湯のみを持って引っ込んでしもうた。
 ポンは考える顔で、
「コンちゃんって、ザリガニ釣り、やった事あるっけ?」
「おお、あのイセエビ級かの」
 レッドやポン吉の顔も明るくなったぞ。
 こやつらもお供にして、ザリガニ釣りに行くのじゃ。
 イセエビ級を釣って、見せびらかすのじゃ。
 ミコが戻ってきおったぞ。
「お洋服汚さないでね〜」

 して、用水路に来たがの……
 今、ポン吉が竹を切って竿を作っておる。
 ふむふむ、糸は……
「これ、ポン吉」
「なにー?」
「その釣り糸は何なのじゃ、タコ糸ではないかの」
「そうだけど」
「そんなのでは、ダメではないかの」
「まぁ、最初はとりあえずこれで」
 ポン吉、タコ糸の先に「いりこ」を結んで、
「コン姉は初めてだから、まずこれで練習」
「おぬし、わらわをバカにしておらんかの!」
「練習ってば」
 こんな釣り針もついておらんので、どうやって釣るというのかの。
 しかしの、ポン吉、ポンにも同じものを渡しおった、違うのは餌くらいじゃ、ポンのは
スルメじゃ。
『これ、ポン』
『なに、コンちゃん、テレパシー』
『こんなモノで釣れるのかの?』
『レッドを見る』
『レッド?』
 ふむ、レッドは……やはり同じ仕掛けじゃのう。
 しかしレッドは迷い無く振り込んでおるのじゃ。
 むむ、レッド、真剣な目をしておる。
 どうなるかの?
 おお、竿に当たりが、ピクピクしておるのじゃ。
 それ、合わせるのじゃ、竿を上げるのじゃ。
 むむ、レッド、ゆーっくりと竿を上げておる。
 あんなにゆるりと竿を上げていいものかの?
 うお、エビカニが、ザリガニが食いついておるのじゃ。
『おお、ポン、わかったぞ』
『わかりましたか、ああやって、餌を掴ませて、釣り上げるんです』
『なかなか繊細なのではないかの?』
『ですね、普通の釣りみたいに針はないから、そーっと上げないと落ちたり逃げたりする
んですよ』
『わらわ、やってみるのじゃ』
『穴がザリガニのお家なんですよ』
『よーし!』
 わらわが、ポンが、ポン吉が、レッドが振り込むのじゃ。
 さて、わらわの餌に早く食いつかんかの。
 おお、穴からエビカニが、ザリガニが出てきたのじゃ。
 わらわの「いりこ」を掴んでおるぞ。
 しかし、急いては事を仕損じるというものじゃ、待つのじゃ。
 おお、両方のはさみで掴みおる。
 そろそろ……ゆっーくりと……竿を上げるのじゃ。
 落とさぬように……落とさぬように……ゲットじゃ!
「やったのじゃ、エビカニ、ザリガニ、ゲットなのじゃ」
「おお、コン姉、初めてなのにうまいなぁ」
「コン姉、じょうずゆえ〜」
「ふふ、もっと褒めるがよい、もっと褒めるのじゃ」
 魚釣りとはまた違った面白さなのじゃ。
 それ、今一度振り込むぞ。
 おお、また食いついた。
 ふふ、楽しいのう。
「コン姉、魚釣りも上手だけど、ザリガニ釣りも上手だな」
「ふふ、楽しいのじゃ」
「じゃあ、あっちの穴を狙ってみてよ」
 ポン吉、言いおる。
「あっちの穴」とはどこかの?
 ポン吉の視線の先には……
「あれかの?」
 わらわ、ふるえが止まらぬ。
 向こう岸の大きな穴に、大きなイセエビ級がおる!
 わらわ、レッドの捕まえて来たのを見た事あるが……やはり大きいのじゃ。
「ああああんなのが釣れるのかの!」
「レッドは釣ったかな?」
「うを、レッド、たいしたものじゃ」
「ほめられたゆえ」
 レッド、赤くなって照れておる。
「しかし、レッド、本当に釣ったのかの?」
「おもちかえり、したゆえ」
「確かに、わらわも見たのじゃ」
 レッドでも釣ったイセエビ級、わらわも釣らずになんとするかの。
 それ、早速振り込むのじゃ。
 イセエビ級、穴から出て来て餌を掴むのじゃ。
 うを! 掴んだだけで引っ張られる、今までにない引きじゃ。
「ぽ、ポン、どうしたらいいのじゃ」
「一緒ですよ、イセエビが掴んだら、頃合を見て引き上げるだけですよ」
「糸、切れんかの」
「そこが難しいところですよ」
「むむ、そうかの!」
 しかし、糸、切れそうじゃの。
 しかし、引かねば、持って行かれるのじゃ。
 しかし、引かねば……引けん、びくともせん。
「ポン、動かん、強いのじゃ」
「それはイセエビ級ですから、そんなもんですよ」
 ポンめ、イセエビばかり見て、わらわの方をちっとも見ておらん、他人事かの。
「ほらほら、ちゃんと見て、バレますよ」
「むー!」
「引くばっかりじゃっダメですよ、駆け引きなんですから」
「しかしの!」
 さっきから竿はプルプル震えてばかりなのじゃ。
「コン姉、送り出すんだよ」
「ポン吉、言うのう、穴に逃げられるのじゃ」
「穴に逃げられたらだめだよ〜」
「どうしたらいいのじゃ」
 もう、わからん、じっとするのじゃ。
 わらわが動きを止めれば、イセエビも固まるのじゃ。
 わらわとイセエビ、視線で火花を散らすぞ。
「来る、来るのじゃ、あやつの目が言っておる」
「ザリガニの目はつぶらですよ」
「わかるのじゃ、今、わらわとイセエビは戦いを通して気持ちが繋がっておるのじゃ」
「語りますね、繋がっているのはタコ糸だけですよ」
「ポンはわかっておらんのじゃ」
 おお、イセエビの目が光った。
 あやつのターン。
「うおっ!」
 強烈な引きじゃ!
 持って行かれるっ!
「あっ!」
 本当に持って行かれた。
illustration やまさきこうじ
 わらわ、飛ぶのじゃ。
「ちょっ!」
 一緒していたポンも飛ぶのじゃ。
 二人して、用水路に「ドボン」。
「うお、イセエビ、おそろしやっ!」
「油断するからですよ、なにやってんですかモウっ!」
「くそう、イセエビ、やられたのじゃ!」
「あんな時は竿放して……ぎゃーっ!」
「ど、どうしたのじゃ、ポンっ!」
「ししし、しっぽ、痛いっ!」
 見ればイセエビ、ポンのしっぽを掴んでおる。
 逃がしてなるか。
 ポンのしっぽを掴んではさみはふさがっておる。
 今、体を捕まえるのじゃ。
「イセエビ、ゲットー!」
 ビチビチしっぽを動かしておる。
 しかしもう、放さんぞ。
 すごい、イセエビ級、大きい、力強い。
「コン姉、すごいすごーい!」
「おお、コン姉の獲物、超大きい、本物イセエビより大きくないか」
「おお、そうかの、もっと褒めるのじゃ、やったのじゃ」
 ポンは泣いておるぞ。
「ポン、どうしたのじゃ、喜んで泣いてくれておるのかの?」
「わたしのしっぽ、はさんだまま振り回さないでくださいっ!」

「お洋服、汚したらダメって言ったでしょ!」
 ミコ、ご立腹なのじゃ。
 わらわとポン、そして何故かレッドも、ダンボールでお休みなのじゃ。
 そして、たらいの中では、わらわの獲物イセエビ級がもそもそしておる。
「まったく、コンちゃんのせいでダンボールの刑だよ」
「すまんのう、しかし、でかいのう」
「う……ですね、大きいですね、レッドのより大きいですよ」
 レッドもたらいを見て、
「すごいすごーい、もんすたーきゅうゆえ」
「おお、モンスター級かの、たしかにのう」
 わらわ、ポン、レッドでモンスター級を見るのじゃ。
 モンスター、はさみを持ち上げてアピールしておる。
「でもですね」
「なんじゃ、ポン」
「レッドの時もそうだったんだけど」
「うむ、なんじゃ」
「こう、大きいと、なんだかおいしくなさそう」
「……」
「ね、コンちゃん、どう思う?」
「明日、逃がしに行くかの、エビフライは指くらいの大きさの方がいいのじゃ」
「ですよね」


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