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■  ポンと村おこし    第164話「お泊り会のきもだめし」        ■
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「ポン姉ポン姉〜!」
 レッドがやってきました。
 むう、今日はお帰りが早いです。
 お客のいないお店で、わたしのしっぽを引っ張るの。
「ねぇねぇ!」
「はいはい、しっぽを引っ張らないでください」
「これ! これ!」
 ふむふむ、プリントですね。
 なにかな?
 レッドからプリントを受け取ると、レッドと一緒に見るんですよ。
「お泊り会ですか」
「ゆえゆえ」
「ふむ〜」
 お泊り会の日付と夕飯のメニュー、そしてイベント告知です。
 夕飯は焼肉パーティだそうです、わたし、行きます、焼肉たべたいし。
 イベント……ちょっと気になりますよ。
「どうしたのじゃ」
 コンちゃんもやってきました。
 わたし、コンちゃんに目で、
『ちょっとちょっと、これ見てください』
『なんじゃ、テレパシーで』
『これ、これ』
『ふむ……』
 コンちゃんの目がキラキラしてます。
 プリントを奪うと、
「きゃーん! きもだめし!」
 もう獣耳モードに突入してます。体ゆすりまくり。
 そんなコンちゃんにレッドが、
「コン姉コン姉!」
「なんじゃ、レッド!」
「きもだめし、なにごと?」
「きもだめしは、こわいものみたさなのじゃ!」
「こ、こわいもの!」
「そうなのじゃ」
 って、レッド、なんでわたしを見ますか?
 それ、レッドのほっぺをつまんで、ビローンってしちゃうんだから。
「いたいゆえー!」
「痛くしてるんですよ、『こわいもの』でなんでわたしなんですかモウ!」
「ポン姉こわいゆえ」
「それ、ビローン」
「ひたいうえー!」
 さて、レッドに天誅したところで、
「コンちゃんコンちゃん」
「なんじゃ」
「コンちゃんにこわいものなんてあるんですか?」
「!」
「きもだめし、コンちゃんには意味なしじゃないですか?」
「!」
 コンちゃん、固まっちゃいました。
 でも、すぐに復活すると、
「むう、しかしのう」
「しかし?」
「わらわ、ホラー映画、こわいのじゃ」
「へぇ、そうなんだ」
「ホラー映画は作り物とわかっておっても、こわいのじゃ」
「コンちゃんにもこわいもの、あるんですね」
「わらわも今、思ったのじゃ、わらわにもこわいもの、あるのじゃ」
 って、お店のドアが開いてカウベルがカラカラ鳴るの。
 入ってきたのは花屋の娘です。
「こんにちわー、桃、差し入れ〜」
 花屋の娘が差し出す桃。
 レッドはすぐに飛びつきます。
 でもでも、しばらくどうしていいかわからず、モジモジしてばかりです。
 ちょっと皮をむいてあげたら、食べ方わかったみたいでしゃぶりついているの。
 もう口のまわり、ベロベロです。
 でも、食べているレッドは大人しいので、ほっときましょう。
「あ、レッド、桃食べた、その桃100万円」
 花屋の娘はお金ばっかりですね。
「この桃、差し入れじゃないんですか?」
「あ、そうだった、差し入れ」
「そっちは?」
 そう、花屋の娘は箱入りの桃も持ってます。
「これは売り物」
「レッドの食べているのは?」
「形がイマイチなの」
 そうそう、ちょっと聞いてみましょう。
「ねぇねぇ、花屋の娘さん」
「何、ポンちゃん?」
「ぽんた王国にも桃出してるよね?」
「そうよ、出してるわよ」
「50円ですよね」
「何で知ってるの!」
 この人は前回の騒動、忘れてますね。
「レッドの食べているのはいくら?」
「一緒よ」
「これは?」
 わたしが箱を指差すと、
「これはちゃんと虫がつかないように被せ物したりしてんのよ」
 花屋の娘、ふてくされながら、
「この間、桃の値段交渉に『ぽんた王国』行ったら」
 あ、思い出したみたいですよ。
「なんだか気を失っちゃったみたいなのよね」
「……」
「頭痛くなったし」
「ゴット・レドル!」くらってましたからね、
 花屋の娘、お泊り会のチラシを見て、
「お、なんだ、お泊り会、焼肉パーティ行きたいなぁ」
「花屋の娘もわたしと一緒ですね」
「焼肉おいしいじゃん」
 花屋の娘、難しい顔になります。
「むう、でも、私がタダで参加する方法を探さないとな」
 ブツブツ言いながら出て行っちゃいました。
「箱入り桃忘れてますよ……配達人に渡せばいいかな」
 コンちゃんは食べたそうに見ているけど、これに手を出したらダメでしょう。
 タダでくれた差し入れ桃をコンちゃんに押し付けると、今度はたまおちゃんがやって来
ました。
「ただいま……みんなでおやつ?」
「はい、花屋さんから桃いただきました」
「じゃあ、遠慮なく……うん?」
 たまおちゃん、桃の皮をむきながら……レッドが見ているのに、むいたのをあげると、
 チラシに気がついたみたいです。
 お泊り会のチラシを手にすると、
「お泊り会か……焼肉パーティ、いいですね」
「みんな焼肉パーティ言いますね」
「だって焼肉おいしいし」
「花屋の娘も言ってましたよ」
「ふうん、何かブツブツ言って歩いていたけど、これの事?」
「花屋の娘は参加する理由がないから」
「理由?」
「お泊り会、子供の集りですよ」
「ふむ」
 たまおちゃん、マジマジとチラシを見ると、
「子供のイベントねぇ」
 なにか考える風な顔ですが、なに考えてるかさっぱりわかりませんでした。

 さて、お泊り会、焼肉パーティーも終って、親たちはまったりしています。
 子供はというと、それぞれペアになって「きもだめし」待ちです。
 村長さんがみんなに説明している最中なんですが、コンちゃん青くなってるの。
「コンちゃんどうしました?」
「ここここわいのじゃ、行きたくないのじゃ」
「冗談でしょう」
「これを見るのじゃ!」
「ちらしですよね?」
 って、コンちゃんが指差すのは……
「あ、ゴールは神社なんですね」
「そうなのじゃ、たまおの基地なのじゃ」
「基地って……でも、罠はしかけてあるでしょうね」
「こわいのじゃ」
 はて、でも、思います。
 たまおちゃんなんですが、わたし達がお泊り会に参加するのに家を出た時、逆に留守番
で家にいました。
「だからたまおちゃんは家にいますよ」
「信じられぬ!」
「むう、どうしたもんでしょう」
 って、村長さんが携帯電話を手にやってきました。
「コンちゃん電話だけど」
「なにごとじゃ?」
 コンちゃん、電話に出ると一言二言話して村長さんに電話を返しました。
 その目が大きく見開かれています。
「どうしました?」
「うむ、たまおじゃった、ドラマの録画の話をしたのじゃ」
「ほら、たまおちゃん、家にいましたよね」
「たしかに家におったのじゃ、番号も確認したのじゃ」
 信じられないって顔のコンちゃんですが、だんだん顔色よくなってきました。
 村長さん、そんなコンちゃんを見て首を傾げながら、
「どうかしたのかしら?」
「コンちゃんはたまおちゃんが苦手なんですよ」
「あら、あの神社の巫女さん、こわいの?」
「そうなんですよ?」
「だってコンちゃん、神さまなんでしょ?」
「神さまだってこわいものあるんですよ」
「じゃあ、こわいものがなくなったところで、ポンちゃんコンちゃんペアにお願いがある
んだけど」
「わたし達ですが?」
「そう、ポンちゃん達に最初に行ってもらいたいのよ」
「はぁ」
「ほら、野犬とか出たらあぶないでしょ」
 ふむ、わたしとコンちゃんで先陣を切る事になりました。
 って、温泉に行ったりもしてるから、村の夜はあぶなくないんですよ。
 らくちんらくちん!
 村長さん、クスクス笑いながら、
「それにね」
「なんです? 笑いながら?」
「ポンちゃんには何も準備できなかったけど」
 村長さん、チラシを見せてくれます。
 なになに、神社には「豪華粗品」あるそうです「豪華」で「粗品」ってなんなんでしょ?
「子供にはおもちゃとかお菓子なのよ」
「なるほど、駄菓子屋さんがスポンサーですね」
「そうね、綱取興業さんなんだけど」
 ですね、駄菓子屋さんに卸しているのはあの目の細い配達人です。
「コンちゃんは嫌がられると面倒くさいから、景品に「いなり寿司」なの」
 途端にコンちゃん獣耳モードです。
 コンちゃん、わたしの手を引いて、
「ポン、行くぞ、いなり寿司なのじゃ」
 コンちゃんがやる気になってくれれば、面倒くさくなくていいです。
 ではでは行くとしましょう。

「ふふ、神社と聞いて引いたが、たまおは家なのじゃ」
「電話、携帯からじゃなかったです?」
「家の電話番号だったのじゃ、わらわもすぐにそう思ったのじゃ」
「では、神社は大丈夫ですね」
「ふふ、あやつの罠があったとしても「ゴット・シールド」でへっちゃらじゃ」
 そんなわたしとコンちゃんですが、足、止まっちゃいました。
「あわわ、コンちゃん、人魂です」
「おお、人魂なのじゃ」
 わたしもコンちゃんも目を細めて見るの。
「人魂……上からワイヤー吊ってますよね?」
「ポンにも見えるかの」
「まぁ、タヌキ、夜行性なんで」
 って、いきなり背後から、
「おばけだぞー!」
「「!!」」
 わたしもコンちゃんもびっくりです。
 いつに間に背後から!
「おばけだぞー!」
 クンクン、すぐに正体わかりました。
「花屋の娘ですね」
「ピンポーン、ポンちゃんなんでわかったの?」
「一応タヌキですから、ニオイで」
「でも、びっくりしてたみたいだけど」
「びっくりしました」
 花屋の娘、ニコニコ顔で、
「二人をびっくりさせられたなら、子供達もお茶の子かもね」
「これから先はどうなっているんです?」
「うーん、先にシロちゃんいたかな、そんなにたくさん罠、ないよ」
「そうなんですか」
 コンちゃん、花屋の娘をクンクンして、
「これ、花屋の娘よ、おぬし、豪華粗品知っておるかの?」
「うん、私が準備したから、紙袋に詰めてあるよ」
「おぬしからいなり寿司のニオイがするがの」
「あ、おやつで一つもらったから、コンちゃん用のもちゃんとあったよ」
「そうかの、楽しみなのじゃ」
「わかるように、ちゃんと「コンちゃん」って書いてあるから」
「ふふ、そこまでせずとも、わらわもニオイでわかるのじゃ」
illustration やまさきこうじ
「一応キツネなんだね」
「ふふ、お稲荷さまなのじゃ、女狐なのじゃ」
「めぎつね……こーゆーときに使う言葉かな」
 コンちゃんのテンションもあがったところで出発です。

「さて、問題はココじゃ」
 階段を上がったところにある鳥居。
 わたし、配達でいつもくぐっています。
 でもでも、コンちゃんの足は止まったまま。
「どうしたんです、もうゴールですよ、ほら」
 わたし、先に入っちゃうんです、べつにいつもの事ですよ。
 でも、コンちゃんが入ろうとしたら、鳥居がバチバチとスパークし始めました。
「ふふ、たまおの術が張ってあるのう、しかしわらわは神、この程度なんでもないわっ!」
 コンちゃんが手をかざすと、スパークが収まっちゃいました。
 術が解けたところで……コンちゃんクンクンしてニオイを確かめると、祭壇に向かって
一直線です。
「ゴールじゃ、いなり寿司じゃ!」
 祭壇の、拝殿の、お賽銭箱の前に置かれた長テーブルに紙袋が並んでいるの。
 一番端っこのに「コンちゃん」って書かれたのが置いてあります。
「い・な・り・寿・司っ!」
 コンちゃん、目がハートになってます。
 でも、わたし、背中がゾクゾクします、野生の、タヌキの「カン」が危険を知らせてく
れます。
「なにか」が祭壇にいます。
 すごい勢いで、コンちゃんに急速接近です。
「コンお姉さ〜まっっ!」
「「!!」」
 わたしもコンちゃんもびっくりです。
 たまおちゃん、登場です。
 加速装置もびっくりのダッシュでコンちゃんに取り付きました。
「お姉さま、好き!」
「うわぁ! たまお!」
「むちゅーん!」
「うわぁ!」
 キスを迫るたまおちゃん。
 コンちゃんのけぞって、一応キスを回避してます。
 顔を寄せるたまおちゃん。
 押し返すコンちゃん。
「お・ね・え・さ・まぁ〜」
「寄るなー!」
「チュウ〜」
「させるかー!」
 二人の力がつりあったところで、二人の動きはピクピクして固まっちゃうの。
 いきなりな登場にびっくりしましたが、ちょっと聞きたい事があります。
「たまおちゃん、たまおちゃん」
「なんですか〜取り込み中です〜」
「ここにいないと思ってたんですけど……」
「そうじゃ、そうじゃ」
 コンちゃんも知りたいみたいです。
 って、コンちゃんの表情がこわばりました。
「も、もしや、たまお、おぬしテレポートかの!」
 って、たまおちゃん、ポカンとして、
「さっき電話して、テレビを録画予約して、ダッシュで来ました」
「「!!」」
「普通に毎日、通ってますから」
 ですよね〜
 よくよく考えたら、電話に出てからでも余裕で来れそう。
 びっくりして損した。
「さぁ、コンお姉さま、今日こそ一つになりましょう」
「嫌じゃぁ〜」
「さぁさぁ!」
 コンちゃんなにを嫌がっているんでしょう。
 いつもわたしと一緒に寝てるじゃないですか。
 たまおちゃんと一緒でも同じでしょ、まったくモウ。
 って、わたしの背中をトントンする人がいます。
 しっぽをモフモフもしてますね。
 振り向けば、レッドと千代ちゃんです。
 レッドはすぐにお菓子の袋に行っちゃいましたが、千代ちゃんはコンちゃん達を見て、
「何をやってるの?」
「さぁ」
「コンちゃん嫌がってない」
「ですねぇ」
「止めなくていいの?」
「めんどうくさいし」
 ちらっと見れば、子供達どんどん来ますね。
「わたしはどうでもいいかな?」
「あとでミコちゃんに怒られると思うけど」
「むう、では、しょうがないですね」
「携帯、貸そうか?」
「いえいえ、テレパシーで呼んじゃいます」
「べ、便利……」
 と、いうことで、テレパシーです。
『ミコちゃんミコちゃん!』
『どうしたの? ポンちゃん?』
『コンちゃんがたまおちゃんにやられてます、わたしどうでもいいけど』
『ほっとけば』
『ですよね〜』
 わたしがヘラヘラしていると、千代ちゃん苦々しい顔で電話してます。
『子供達が来てるのね』
 つぶやくのが聞こえて、暗い神社に光があふれます。
 そんな光の中から、おたまと電話の子機を持ったミコちゃん登場。
「ゴット・レドル!」
 ミコちゃんの握っているおたまから七色の光がほとばしります。
「えいっ!」
 おたま、たまおちゃんの頭にヒット!
 ☆3つのダメージです。
 弾けた☆の一つがコンちゃんにヒットして、コンちゃんもダウンなの。
 ミコちゃん、二人が死んだのを確認して、
「子供達が来てるのなら、ほっとけないわね」
 やって来た子供達は、紙袋を手にニコニコ。
 中のお菓子をトレードしたりしてるの。
 別に準備してあった花火も出して、盛り上がってきましたよ。
 でもでもその前に、みんなが倒れているコンちゃんたまおちゃんを見るの。
 みんな頭上に「?」が浮かんでいます。
 千代ちゃんが渋い顔で、
「ねぇ、ポンちゃん、たまおちゃんって百合?」
「あ、千代ちゃん知ってるの? 百合?」
「うわ」
「わたし、女の子同士なんてわかんないよ、どうでもいい」
「うわ」
 子供達、倒れているコン・たまおを見て「?」でしたが、ポン吉が「!」になって、
「ポン姉、ポン姉が倒したんだな! 女子プロレスだな!」
「ああ! ポン姉!」
 みんなの頭上に「!」とか「笑」が浮かびます。
「笑」はなんでよ?
 ポン吉、わたしを捕まえると、
「さすがポン姉、コン姉やっつけるとか、はんぱねぇ!」
「は?」
「あの巫女の姉ちゃんも、なかなか強いんだぜ、チェストとか!」
「は?」
 みんなが
「ポン姉強〜い!」
 声があがるの……倒したのわたしじゃないのに……
「オレ、見たかったなぁ、ポン姉の強いとこ」
 ポン吉語ります。
 みんなの目も、なにかを期待しているみたいです。
 女子プロレスか……でも、相手がいないと、どうしようもないんですけど。
『ねぇねぇ、ミコちゃん、どうしよう』
『たまおちゃん生かしておけばよかったんだけど』
『しょうがないよ』
「ポン姉、さすが、強い、最強!」
 さっきから語ってる男が一人います。
 ポン吉です。
 ちょうどいいでしょ、ポン吉ですよ、ポン吉。
「そーれ、しっぽブラーンの刑です」
 ポン吉のしっぽをつかまえて、振り回しちゃうんだから。
「痛いー! 死ぬー!」
「わたしの事、強い強い言うからです!」
 みんな笑ってます。
 よかったよかった……かな?


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