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■  コンと村おこし  第14話「デートなのじゃ」              ■
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 ふう、久しぶりのわらわのターン。
 先日のポンとレッドの結婚式、お笑いだったのじゃ。
 大体レッドは子供であろう、結婚、最初からおかしかろう。
 しかし、ウエディングドレスのポン、なかなかだったのじゃ。
 うかうかしておると、店長、陥落するやもしれぬ。
 ここは急いで店長と契りを結ぶのみじゃ。
 店長を探すぞ、店長を、どこにおるかの?
 それ、ゴット・サーチで探すのじゃ。
 光球が飛んで、店長のおる方へ飛んで行くのを追うのじゃ。
 わらわ、空を飛んで様子を見守っておれば、店長は学校の方から帰ってくるところじゃ。
 今日はめずらしく配達だったのう。
 店長、のこのこ一人で帰宅しておる。
 急降下でゲットなのじゃ。
「うわ、なんだっ!」
「ふふふ、店長、大人しくするのじゃ」
「こここコンちゃん!」
「暴れたら落ちて死ぬのじゃ」
「ななななにをするー!」
「ふふ、わらわと結婚するのじゃ」
「ななななんでー!」
「ポンとレッドの結婚式を見て思ったのじゃ」
「……」
「ふふふ、もう逃げられんのじゃ、くくく」
「コンちゃん、甘いな、甘すぎる」
「なんじゃと?」
「コンちゃん、今まで俺に迫ってなかったから、鈍くなってるよ」
「なんじゃとー!」
「ポンちゃんの方が手ごわいよ、うん」
「しかし店長、この状態から逃れるかの?」
「試してみるかい?」
 店長、不敵な笑みを浮かべておる。
 わらわ、店長を引き寄せて、見ておるぞ。
「それ、空中結婚式じゃ、契りの接吻なのじゃ」
「コンちゃん、接吻とは古風だね」
「なんでもよいのじゃ、レッドに言わせればキッスなのじゃ」
 それ、接吻じゃ、キスじゃ、むちゅーん。
 接吻したはずなのに!
 キスしたはずなのに!
 はずかしいから、「チュッ」って感じなのに!
 なぜかときめかん!
 目を見開けば、そこにはポンの顔のどアップなのじゃ。
「むおっ! 何故ポンなのじゃ!」
「ちょ、放さないで! 落ちちゃう!」
「おお! すまぬすまぬ!」
「なんでいきなりキスするかな、気持ち悪い!」
「わ、わらわだって店長とキスしておったのじゃ」
「あんですってー!」
「怒っておる場合ではないのじゃ、しかし何故店長がポンなのじゃ」
「あー、もう、コンちゃんは店長さんとキスしようとしていたと?」
「そうなのじゃ」
「そしたら、わたしに変わっちゃっていたと?」
「そうなのじゃ」
「店長さんが『代わり身の術』使うの知ってるよね」
「はぁ!」
「店長さんの代わり身の術、すごいらしいよ」
「今のは店長の術というかの!」
「そうだよ」
「す、すごいのじゃ、普通は近くの丸太なぞに代わり身するのじゃ」
「店長さんの術は、ともかくすごいの」
「確かにそうなのじゃ」
「教えたポン太が言うくらいなんだから、きっとニンジャ級なんだよ」
「しかしの、そんな術を覚えられたら、逃げられまくりではないかの」
「そこはそれ、作戦を考えるんですよ」
「ふむう」
「で、コンちゃん、店長さんをどーするつもりだったんですか?」
「契りの接吻、そしてデートなのじゃ」
「契り……接吻……なに時代ですか」
「わらわ神ゆえ、ご長寿なのじゃ」
「死なないわけですね……で、デートはどこに行くつもりでした?」
「ああん、デート、逢引、そうじゃの、そこまでは考えておらんかった」
「結構いいかげんですね、神さまは」
「店長確保も思いつきだったでの」
「ダメダメです」
「ふむー、今、思えば、即既成事実かの」
「既成事実……ご長寿なんですよね」
「わらわは現代を生きておるのじゃ」
「で、どこで既成事実ですか、ええ」
「山の中じゃ、どこでもいいのじゃ」
「虫さされしまくりですよ」
「そこはゴット・シールドなのじゃ」
「うわ、便利ですね、ゴット・シールド」
「ふふ、どうじゃ、すごかろう」
「あーあ、コンちゃんも所詮ケダモノ、がっかりです」
「なんじゃとー!」
「もうちょっと、ロマンチックな、ムーディーな展開を期待していました」
「むう、いきなり既成事実はダメかの?」
「それはわたしの手段ですよ、コンちゃん神さまですよね、まったくモウ」
「なんだかスマン気になってきたのう」
「そうですよ、もうちょっとロマンチックなデートを期待していました」
「しかし、ここは田舎で山の中じゃ」
「お! コンちゃん、裸電球点灯しましたよ」
「ふふ、駄菓子屋でお茶はどーかの、楽しかろう」
「うわ、駄菓子屋、確かに『パン屋』『そば屋』『ラーメン屋』『駄菓子屋』くらいです
けど」
「駄菓子屋、ツケもきくでの」
「あとでミコちゃんに殺されますよ」
「うう、そこが問題なのじゃ」
「コンちゃんは知らないんですね」
「うん?」
「遊園地、知らないんですか?」
「遊園地、そんなものは麓に行けばいくらでも……」
「ダムの跡地に飛んでください、遊園地があるんですよ」
「!!」
 なんじゃ、その遊園地とは!
 わらわ知らなんだぞ!
「これ、ポン、遊園地の事、隠しておらんかの?」
「言ってないだけですよ、まったくモウ」
「そんな楽しげなモノがあるとは!」
「仕事しないからですよ、現場事務所の配達に行けば見えますよ」
「わらわ、泥臭いところには行きたくないのじゃ」
「そのワガママがいけないんですよ」

 おお、遊園地が見えてきたのじゃ!
 本当にあったのじゃ!
 観覧車にコーヒーカップ、メリーゴーランドもあるのじゃ。
「きゃーん! 楽しそうなのじゃ!」
 わらわ、遊園地に着地。
 しかし「シーン」としておる、動いておらぬ。
「これ、ポン、動いておらぬ、まだ日没前というのに」
「職員さんに動かしてもらうんですよ」
 ポンが言うと、プレハブから職員とやらが出てきたのじゃ。
「ポンちゃん、いらっしゃい、そっちは?」
「コンちゃんですよ、知らないんですか?」
「あ、知ってる、パン屋でグダグダしている店員さんだ」
 こやつ、言いおるな、わらわ、ゴット・ソードを出すのじゃ。
 ブウンと音を立てて、光る剣が登場なのじゃ。
「これ、おぬし、今、わらわをバカにせんかったかの?」
「うわ、こわ、本当に神さまなんだ」
「その通りなのじゃ、わらわは遊びたいのじゃ」
「えー、お金持ってるの?」
「わらわは神、供するのじゃ、遊園地」
「……」
「死にたいかの?」
「俺が死んだら、誰が機械を操作するかな?」
「痛くされたいかの?」
「こわ……」
 職員、手をひらひらさせて、
「ツケにしとくから」
 この村の人間は「供する」というのを知らんらしい。
 ま、このさい、動かしてくれればいいがの。
「わらわ、観覧車に乗りたいのじゃ!」
「今、飛んで来てなかった?」
「それとこれとは別なのじゃ!」

 観覧車、高いたかい!
 ゆっくりゆらゆら、超楽しいのじゃ!
「楽しいのじゃ!」
「コンちゃん、さっきもっと高く飛んでましたよね?」
「ポンはわかっておらんのう、これに乗るのは別なのじゃ」
「まぁ、確かに楽しいですけど……コンちゃんと一緒じゃあ」
「ほれ、ほれ、ダンプが小さいのじゃ」
「ほんとう、コンちゃん子供ですね」
「ポンはつまらんのう、楽しんでおるのかの?」
「はいはい、こう見ると、観覧車、高いですね、本当、ダンプ小さい」
「じゃろう、じゃろう」
「でも、コンちゃんとデートはつまんない」
「ポン、本当につまらんヤツじゃのう、楽しまぬか」
「コンちゃん女同士で楽しいですか?」
「それはそれじゃ、遊園地楽しいのじゃ!」
「こ・ど・も」
「無粋なヤツなのじゃ」
「ブスですと?」
「無粋と言うたのじゃ、まったくつまらんヤツなのじゃ」
「コンちゃんが子供なんですよ、遊園地くらいで」
「ふん、楽しいものは楽しいのじゃ」
「あーあ、店長さんとだったら、よかったのになぁ」
「それはこっちの台詞なのじゃ、あーあ、店長が逃げねば」
「ねぇねぇ、コンちゃん、なにか手はないですか?」
「手? なんの事なのじゃ?」
「このままでは店長さんの代わり身の術で逃げられっぱなしです」
「むう、確かにそうなのじゃ」
「コンちゃん、神さまなんだから、代わり身の術を封印する方法とかないんですか」
「変わり身の術は神の御業ではないのじゃ、あれは修行の賜物なのじゃ」
「店長さん、わたし達から逃げるために、どんだけ修行したんでしょう?」
「たしかにのう……しかしの、逃げられると追いたくなるものなのじゃ」
「あ、わかる、それにむかつくし!」
「じゃろう、じゃろう」
「で、コンちゃん、なにか手はないでしょうか?」
「そうじゃのう」
 あの代わり身の術を封じるのは難しいのじゃ。
 どこでどう修行したか知らんが、近くにおらんのを「代わり身」するからの。
「よい手が思い浮かばぬ」
「コンちゃんでもダメな事あるんですね」
「そこでじゃ」
「?」
「店長は代わり身の術で逃げを打つ」
「ですね」
「こちらは『ゴッド・召喚』で出るのじゃ」
「でした! 召喚すればいいんですよ! それですよ、それ!」
「しかし、そこでまた「代わり身の術」なのじゃ」
「ですよ、どーするんですか?」
「ふふ、しかし、店長も「すぐ」には術を発動できんのじゃ」
「それは……そうですね」
「そこで、今、わらわとおぬしで、店長をしっかとつかまえ、接吻するのじゃ、モノにす
るのじゃ」
「まさに、奇襲ですね」
「その通りなのじゃ」
 わらわ、ポンに目で合図。
 ポンもうなずいて返してくるのじゃ。
「では、ゴッド・召喚!」
 わらわの術が発動。
 せまいゴンドラの中央に光珠が生まれ、そして店長が現れるのじゃ。
「それ、ゲットじゃ」
「逃がしませんよ〜」
 わらわとポンで店長を板ばさみじゃ。
「嬲」の逆で女・男・女なのじゃ。
「「!!」」
 わらわとポンの体が動かぬ。
 すぐさま接吻を、キスを、キッスをと思ったのじゃ。
 店長は逃げられぬ、その刹那を狙ってなのじゃ。
 しかし、わらわとポンの体が「止められた」のじゃ。
 店長の右手がわらわの頭を!
 店長の左手がポンの頭を!
 しっかと捉え、そして止めておるのじゃ。
 店長、引きつった笑みで、
「ここここれが召喚か! みんなが迷惑って言ってた術か!」
「ふふ、店長、代わり身もすぐには発動できまい」
「そうだ、逃げないと!」
 気付いたようじゃの。
「コンちゃん、動けないよ!」
 こちらもポンの言う通りなのじゃ。
 しかし、今の態勢、あとは「力」で押し切るだけなのじゃ。
「ゴッド、パワー!」
 わらわと、そしてポンにパワーがみなぎるのじゃ。
 それ、押さえておる店長の腕力など、蹴散らすのじゃ。
「「チュッ!」」
 そーれ、接吻、キス、決まったのじゃ。
「コンお姉さま、うれしい!」
「ひっ!」
「それ、お返しのキッスです!」
「むー!」
illustration やまさきこうじ
 代わり身で現れたのは「たまお」
 なんという替え玉かの。
「コンお姉さまとの距離、ゼロセンチメートル、逃がしません、チュー」
「むー!」
 たまお、なんたる力か!
 逃げられん!
 されるがままなのじゃ!
 こら、そのようなところに手を入れるでないっ!
 ななななにをするかの!
 ぽ、ポン、助けぬか!
 な、なんと、ポンは座って景色を眺めておる!
「ポン、助けんか!」
「えー! わたしはどーでもいいし!」
「タスケテ、先輩、ポン先輩」
「たまおちゃん力強いからヤだよ、怪我したくないし」
「ポンタスケテ、タスケテポンさま!」
「ちゅー」
「むー!」
 わ、わらわ、たまおにこのままやられてしまうのかの!
 お、おぞましいのじゃ!
 ポン先輩たすけて、おねがい!


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