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■  ポンと村おこし    第183話「ポンちゃん街に行く」         ■
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「ポンちゃん、好きだ!」
「店長さん、キスを!」
「それ、チュー」
 わたし、店長さん、熱いキッス!
 でもですね、店長さんからキスなんてありえません。
 これは夢……キスしてるのはレッド!
 わたし、目を見開きます。
 目の前にはキスしてるレッドの「どアップ」。
「チュー」
「むー」
「チュー」
「むー」
「ヂュー」
「!!」
 す、吸われます!
 な、何かを吸われます!
 わたし、命の危機を感じてレッドの頭を「はしっ!」
 引きはがそうとしますが、今日のレッドはなんだかパワフル。
 い、いや、わたし、不意をつかれて「何かを吸われ」てパワーダウン。
 し、死ぬ!
 びっくりしながら、なんとかレッドを引きはがします。
「レッド、何をするんですかっ!」
「おめざめのキッス!」
「いつもと違いますよね、何をしてるんですか!」
「おとなのキッス!」
「はぁ? 大人のキス? なんですか?」
 レッド、すごいニコニコで、
「ちよちゃからならったゆえ」
(千代ちゃんか〜)
「はいのくうきをすいだすゆえ」

 まだ午前中のパン屋さん。
 コンちゃんはいつもの席でポヤンとしてます。
 わたしはその向かいでトレイを磨いているの。
「……と、そんな事があったんですよ」
「レッドの必殺技かの、空気を吸われては死んでしまうのう」
「千代ちゃんロクな事教えません」
「これからポンは朝、早起きじゃのう」
「モーニングキッスに死す……たまりません」
「ふむ、ポンもなにか必殺技でも編み出せばよかろう」
「!」
 コンちゃん、言ってから顔を背けます。
「何で目を反らすんですか」
「な、なんでもないのじゃ……いいから必殺技を考えるのじゃ」
「って、言っても、わたしそんなの考え付きません」
「ふむ……ポンも怒る事があるであろう、その気持ちを体で表すのじゃ」
「怒りを……体で……」
 わたし、立ち上がって、深呼吸。
 ポワポワとレッドの笑顔が浮かんできました。
「どんぶりぷりん、おいしかったゆえ」
 過去がプレイバック。
 あの時はムカついた!
「レッドーっっ!」
 わたしの怒り、すぐに沸点!
 わたしの身体、すごい熱い!
 わたしの尻尾、威嚇モード!
 いつものモフモフ、倍増で!
illustration やまさきこうじ
「ふーっ!」
 髪の毛だって逆立ちます。
 まさに怒髪天ってやつですね。
 って、コンちゃん、目を丸くしてこっちを見てます。
 わたしに近づくと、
「おお、尻尾が逆立っておる、モフモフ増々なのじゃ」
「ちょっ! なにしっぽ触ってるんですか!」
「超モフモフなのじゃー」
 コンちゃん楽しそうにわたしのしっぽさわってます。
 むう、この「威嚇」は失敗のようです。
 わたしの必殺技が〜
 って、そこに目の細い配達人がいきなりやってくると……
「ポンちゃん、好きだ、結婚してくれっ!」
 コンちゃんを押しのけて、わたしを抱きしめるの!
「好きだー! 結婚ー!」
「!!」
 コンちゃんは驚き、わたしだって驚いてます。
 でも、すぐに、醒めます。
 相手は目の細い配達人。
 わたし、目の細い配達人を押しのけると、
「何かありますね?」
「えー 好きー 結婚してー」
 棒読みですね。
 って、レッドとミコちゃんもどこからともなく現れて、
「ポン姉おめでとー!」
「ポンちゃんおめでとう!」
 コンちゃんもつられて、
「おお、ポン、おめでとうなのじゃ」
 わたし、ミコちゃんをにらみます。
 ミコちゃんはニコニコしながら1枚のチラシをくれるの。
 なにかな?
 見れば「大恐竜展」のチラシです。
 前に見たことあります。
「レッドと一緒に行ってきてね」
 だ、そうです。
 レッドはニコニコ、しっぽもフリフリ、獣耳も出てます。
 プロポーズの配達人もニコニコしてるの。
「好きー 結婚ー」
「あんたは後で、拷問だ!」
「えー なんでー」
 なんでもクソもあるもんですか、覚悟してろ〜

 そんなわけで、わたし、街に行く事になりました。
 むう、街は危険でいっぱいなのに。


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