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■　　ポンと村おこし　　　　第１８４話「コンビニ娘で〜す！」　　　　　　　　　■
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　配達人の車に乗って山を下りてきました。
　だんだん建物が増えてきて……
　だんだん人も多くなってきて……
「はい、到着」
　車が止まると、そこは「コンビニ」の前です。
「降りて降りて」
　配達人に手を引かれて、コンビニの中へ。
「ちょ、ちょっと、何するんですかっ！」
「いいから、こっちこっち！」
「むー！」
　わたし一方の手を配達人に引かれ、もう一方の手はレッドの手を引いているの。
「コンビニ」の中に入ると、レジカウンターの前で、
「今日からポンちゃんはコンビニ娘です」
「はぁ？」
「だって、大恐竜展、見に行くまで日もあるし」
「……」
　わたしが配達人をジト目で見ながら、
「わたしとの結婚はどうなったんでしょ、あの告白はウソだったんですか？」
　配達人の頭上に裸電球点灯です。
　スッとわたしのしっぽを握って、
　ニコニコ顔で言いやがります。
「残念、俺、タヌキと結婚できない」
　この「タヌキと結婚できない」は最近聞いた覚えがある。
　まったくモウ、バカにしてます。
　わたし、配達人をポカポカ叩きながら、
「覚えてろ〜　呪ってやる〜」
「コ・ワーイ」
　配達人はカウンター奥に向かって、
「言ってた新人連れてきたから〜」
「はーい、ちょっと待っててくださーい」
　返事の声…わたしはちゃんとコンビニ店員できるかな？
　先輩店員さんが優しいといいです。

　先輩店員さん……子供です。
　金髪に青い瞳の男の子です。
「ぼくの名前はジル」
「は、はぁ……」
　どう見ても小学生くらいです。
　わたし、配達人にテレパシー。
『あのあの、配達人さん』
『何、ポンちゃん』
『小学生ですよね？』
『そうだね、ジルは小学生』
『ジル……が、教えてくれるんですか？』
『うん、そうだね』
　配達人はそれだけ言うと、カウンターの奥に行っちゃいました。
「ぼくの名前はジル……お姉さんは？」
「え、あ、そう、わたしはポンちゃん」
「ポンちゃん……」
　じっと見めてくるジル。
　するとレッドが飛び出します。
「すきすきー」

　レッド、ジルに抱き着くとキス。
「チュー」
「むー！」
「チュー」
「むむー」
　ジル、レッドを引きはがすと、
「あわわ、君はなに？」
「けのいろがあかいからレッドー！」
「毛の色が赤いからレッド？」
　ジル、わたしを見てくるの、
「すみません、レッド、すぐにキスしたがる」
　レッドはニコニコで、
「あいさつのキッスー」
「はぁ、挨拶のキッスね」
　ジルは「とほほ」みたいな顔で引きはがしたレッドを抱っこしていましたが、
「この子には尻尾があるし、お姉さんにも尻尾ありますね」
「う……このしっぽはコスプレなんです」
　疑いの眼差し……そんなジルの頭上に「！」
「お姉さんは『山のパン屋』の人ですね！」
「山のパン屋さん知ってるんですか？　それとわたしの事はポンちゃん……ポン姉で」
「じゃぁ、ポン姉、このパンを作ってるんですよね」
　レジのすぐ前の棚に、袋詰めされたパン。
　これはわたし達が配達人に卸しているパンです。
「パン屋さんのパンは、ここで売られていたんですね」
「『山のパン屋』のパン、好評ですよ」
「そうなんだ〜」
　ジルはレッドがキスしてこないように抱っこしながら、
「あの、ポン姉はここで仕事をする間、パンは誰が作るんです？」
「え？」
「だって山のパン屋さんでパンを作ってるんですよね？」
　レジ前の棚、上の方に「手作りパン販売中」って書いてあるんですけど…
「タヌキしっぽ」と「キツネしっぽ」のキャラが描かれているの。
「わたしは店員さんで、パンは店長さん……職人さんが作ってるんです」
　ジル、残念そうな顔になって、
「今までタヌキとキツネが作ってるって聞いてたから……残念」
　そんな事ないでしょ……って突っ込みたくもありますが……
　レジ奥に消えた配達人が戻ってきます。
　ジルは頬を膨らませて、そんな配達人をポカポカ叩きます。
「ちょっ、ジル、何で叩くの」
「このパンはタヌキさんとキツネさんが作ってるって憲史さん言ってたのに」
　なんだか夢を壊したみたいです。
　って、配達人はわたしを見て、
「ポンちゃん生地踏んでる事あるよね」
　それはラーメンの生地……でもでも、ジルの夢を壊すのも悪いので……
「そうでした、生地はわたしも手伝ってます」
　途端にジルの目が輝きを取り戻すの、
　ニコニコで、
「やっぱりタヌキとキツネが作ってたんだ〜」
　って、配達人のテレパシー。
『ポンちゃんナイスフォロー』
『少年の夢を壊すのもですね〜』


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