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■  ポンと村おこし    第185話「ヤンキー娘登場です」         ■
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 コンビニの2階です。
 ドアの表札に「ポンちゃん」「レッド」。
 ジルはそんなドアを開けると、
「ポン姉とレッドは、こっちにいる間はここに住んでもらいます」
「はぁ……ごはんとお風呂はどうしたらいいんでしょ? お布団あります?」
 わたしの心配はそこです。
 お家を案内されて安心はしたけど…
 ごはん……ミコちゃんがいません!
 お風呂……ないと嫌です!
 お布団……これもないと嫌!
 ジルは部屋の中のベットを指さして、
「お布団はこれで」
 次はお風呂を教えてくれました。
「沸かし方はわかりますか?」
「お家で使ってるのと一緒です」
 ジルは部屋のテーブルにレジ袋を置きながら、
「ごはんは下の……お店でお弁当をもらってください」
 言いながら、レジ袋の中からお弁当を出すの。
 テレビで見たことあります。
 これがコンビニ弁当ってヤツですね。
「これがいいゆえ!」
 レッド、すぐさまハンバーグ弁当に手を出します。
 って、そんなレッドの手にジルの手が重ねられるの。
「冷めてるから、レンジで温めますよ」
 と、こんな感じで、街での暮らしはこの部屋を基地にするんです。

 コンビニ弁当を食べたら、
「ポン姉……レッドの相手は、ぼくがしますから……」
「はぁ」
「コンビニでお仕事を教わってください」
 って事で、わたしはコンビニ研修です。
 レジに戻ってみると、女の人が店員をやってるの。
 女の店員さん、わたしを見るなり、
「あ、ヘルプで来てくれた……私は奥藤華、藤華さんでお願いね」
「わたしの事はポンちゃんで」
「山のパン屋さん、空けてていいの?」
「パンを焼いているのは、わたしじゃないですから」
「そうなんだ、てっきりタヌキとキツネが作ってるものとばかり……」
 藤華さん、わたしの背後に回ると、
「本当にタヌキなのね、尻尾あるわ」
「し、しっぽに触らないでください、コスプレなんです〜」
「モフモフよ」
「ふーっ!」
 わたしの新必殺技「威嚇」発動。
 しっぽ、通常よりモフモフ増加なの、逆立つ毛並みなの。
「うわ、サービス? モフモフ倍増ね!」
 この技は、全然「威嚇」にならないみたいです。
 でも、「好感度」は上がったかもしれません……こんな上がり方、嫌ですけど。

「じゃ、よろしく〜」
 配達人は言うと、帰っちゃったみたいです。
 藤華さんが、
「コンビニ人手不足で助かるわ」
「わたしなんかで大丈夫……コンビニの仕事ってこんな感じなんです?」
 わたし、テレビで見たことあるんです。
 コンビニは結構大変なお仕事と思っていました。
 でも、習ったのはレジの使い方と、お掃除だけです。
「ここのコンビニは大手とは違うから、簡単なのよ」
「はぁ……パン屋さんと違うのはレジの『ピッ』くらいです」
「ああ、バーコード」
「パン屋さんは手打ちです」
「値段覚えるのが大変そうね」
「パン屋はパンだけですから」
 藤華さんに一通りお仕事を習いましたが、これならわたしでも出来そう。
 でもでも、それまですっかり忘れていたんです。
 そう、街には、「七つの傷を持つ男」が、「モヒカン頭」がいるんです。
 わたしと藤華さんがやっている時、それはやってきたんです。
 長いスカートのヤンキー娘、登場なの。
illustration やまさきこうじ
 ドアが開いてチャイムが鳴って、ヤンキー娘は鋭い目でこっちを見てくるの。
「あ、そうだったわ」
「な、なんなんです、藤華さん」
「私、ここで優華ちゃんと交代なのよ」
「ゆ、優華ちゃん?」
 藤華さん、入って来たヤンキー娘を捕まえると、
「そう、この娘が優華ちゃん」
『えー!』
 わたし、ガクブルです。
 ヤンキー娘、超コワイ、なんでヤンキーなのに店員なんですか!
「どうも、優華だ、よろしくな」
「あ、ああ……わたしはポンちゃん、よろしく」
「ああん? ポンちゃん〜?」
 鋭い眼光、コワイの。
 って、藤華さんが、
「ちょっと何こわがらせてるのよ、最近恰好つけちゃってモウ」
「いや、一応ヤンキーだから、コワイ方がいいかなって」
「今更コワイの出してもしょうがないでしょ、前は明るかったじゃない」
「今はこっちの路線なんです」
 優華さん、藤華さんのエプロンもらうと交代。
「じゃあ、ポンちゃん、また明日ね」
「え、あ、はい……さようなら……おつかれさまです」
「じゃあ、ね〜」
『わーん、藤華さん、帰らないで、ヤンキー娘と二人にしないで!』
 思ってみても、藤華さんは帰ってしまいます。
 静かな店内。
 わたしとヤンキー娘・優華さんと二人きりなの。
 お客さんでも来てくれないかな。
 わたし、目を合わせないようにしていると……
 なんだかサワサワするの……
 優華さん、わたしのしっぽを触りながら……
「なぁ、ポンちゃん……が、ここを手伝っている間、誰がパンを作るんだ?」
『みんなわたしがパンを作ってると思ってますね』
「私、あのパン、すごい好きなんだけど」
 ヤンキー娘はパンの棚を見ます。
 棚にはタヌキしっぽとキツネしっぽのキャラが描かれてるの。
「ほら、キツネさんがいるから、大丈夫です」
 テキトウに言っておきましょう……ヤンキー娘の機嫌を損ねるのもなんですしね。
「キツネさんも作ってるのか、行ってみたいなぁ!」
 それまでコワイ顔ばっかりだったヤンキー娘が、すごい親しみのある顔になったの。
『このヤンキー娘、案外「いい人」かもしれません』
「いい人」……「いい人」は人の嫌がる事はしないんです。
「あの、ヤンキー娘……ごめんなさい、優華さん」
「ヤンキー娘……まぁ、そうなんだけど……何?」
「わたしのしっぽ、モフモフするの止めてもらえます?」
「超気持ちいいし」
「人の嫌がる事しないって、学校で習わなかったんですか!」
「ヤンキーは人の嫌がる事やってなんぼなんだけど」
『このヤンキー娘はやっぱりダメな人です』
「しっぽ、本物なんだ、タヌキが化けてるんだ」
「コスプレなんです!」
「すごーい、モフモフ」
「怒りますよっ!」
 わたしの直感、このヤンキー娘優華さんは「案外いい人」。
 ここでしっかり言っておけば、しっぽモフモフは止めてくれそうです。
 わたし、にらみます!
 ヤンキー娘、ニコニコです!
 ついつい盛り上がっていて、お客さんに気付きませんでした。
 チャイムが鳴って、お店のドアが開きます。
 レッドが目をこすりながら登場なの。
 ジルは困った顔でレッドの手を引いてるの。
「ポン姉〜」
「レッド、どうしたんです、わたしはお仕事なんですよ」
「一緒がいいゆえ」
 レッド、一度はわたしの胸に抱かれます。
 一緒に来たジルは安心してニコニコ。
 ヤンキー娘はレッドのしっぽをモフモフ。
「うわ、キツネの子?」
 レッド、ヤンキー娘の声に振り向くと、いきなり獣耳モード突入。
 わたし、遅れました、レッドはジャンプしちゃうの。
「すきすきー」
「!」
「チュー」
「!」
「チュー」
「!」
 わたしの背筋、凍り付くの。
 レッド、ヤンキー娘にあいさつのキッス。
 誰か助けてくれる人……藤華さんは帰っちゃいました。
 ジルがいる……レッドとヤンキー娘のキスを平然と見ています。
『ちょっとジル!』
『な、なんです、小声で?』
『ヤンキー娘、怒らない?』
『優華さん、そんな人じゃないですよ』
 視線を戻してみれば、ヤンキー娘、レッドを引きはがすの。
 レッドは「コワイ物知らず」だから、ニコニコで、
「すきすきー!」
「おいおい、いきなりキスするかな……」
「あいさつのキッスー!」
「挨拶なのか……そうか……」
 ヤンキー娘、頬染めして、レッドから顔をそらすの。
『うわ、このヤンキー娘、かわいいかもしれません!』


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