■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■  ポンと村おこし    第188話「小学生は最凶だぜ」          ■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 今日はヤンキー娘・優花さんと一緒です。
 レッドもいるんです
 いつもはジルがレッドの相手をしてくれるんですが、まだジルに会っていません。
『優華さん優華さん!』
『何、ポンちゃん、小声で』
『ジルが来ません、レッドの子守が来ません』
『むう、レッドもいつまでも一緒ってわけに……』
『ジル、呼び出せませんか?』
『いや、呼ばないでも来てくれるんだけどなぁ』
『困りましたね』
『うん、困ったなぁ』
 レッドはさっきからお店の手伝いをしたり、お客さんとおしゃべりしたりして、とりあ
えずなんとかなっています。
 でも、いつ、退屈につかまるかわかりません。
 ああ、お客さん、いなくなりました。
 お店にはわたし達3人だけになっちゃいます。
「ポン姉ポン姉!」
「はいはい、なんですか?」
「カラスさんとあそびたいゆえ!」
「!!」
「カラスさんとあそびたいゆえ!」
 わたし、優華さんを見ます。
 カラス……配達人の家にいそうです。
 近くのアパートに行ければ問題解決なの。
 優華さんすぐに……
『ポンちゃん、行ってきていいよ……』
『え……でも、わたし出ちゃっていいんですか?』
『ポンちゃんは休み時間って事で……』
 でも、優華さんの感じが、いまいち不安そうなの。
 なんででしょう?
『優華さん、なにかありますか?』
『う、うん……今日は先輩の家に「あっちゃん」「響ちゃん」がいるんだ』
『あっちゃん? 響ちゃん?』
 わたしの頭の中に、すぐに「写メ」の二人が思い浮かびます。
『まずいですかね?』
 わたしが聞くのに、優華さんは考える顔になったけど、
『レッドの相手、してくれるかもしれないね』
『大丈夫かな?』
『子供相手に暴力は振るわないだろうし』
『ぼ、暴力……』
 わたしが優華さんを見つめると……優華さん愛想笑いです。
「ポンちゃん、昼休みって事で1時間くらい、いいよ」
「そ、そうですか……」
 優華さん、レッドを一度抱っこすると、
「レッド、ポンちゃんと一緒に行ってきていいよ」
「やったー!」
 優華さん、小声で、
『もしもヤバイ空気になったら!』
『えっ! えっ!』
『ポンちゃんのしっぽで場を和ませる!』
『うーん、それは嫌だなぁ〜』
 嫌な予感いっぱいですが、配達人の家に行きましょう。

 配達人のアパート、これで2回目です。
「カラス! クーちゃん! カラス! クーちゃん!」
 レッドはアパートに到着段階で獣耳モード。
 わたしはさっきからテンションダウン、しっぽはシオシオなの。
「ポン姉、はやくはやく!」
「はいはい」
 って、階段上がったところで、配達人の家のドアが開いているの。
 中に人がいる……
 覗いてみたら……
 裸の女の子が二人、台所に「転がって」います。
 わたし「嫌な予感」全開。
 これは回れ右で退却しないとダメなパターンです。
 でも、レッドはすぐに上がり込んじゃいました。
「あ、レッド、寝てるから……」
 って、奥から箸を持ったジル……料理中みたい……が顔を出すの。
 でも、レッド、そんなジルに目もくれません。
「転がってる」二人を見定めて……
 大きい方の女の子に馬乗りになると、
「すきすきー!」
 いきなりキスです。
 わたしは「いつもの事」ですが……
 キスされてる方は「いきなり」なんですね……
「チュー!」
「むー!」
「チュー!」
「むむー!」
 レッド、女の子をしっかり押し倒してキス。
 むう、いつになくレッドに漢を感じます。
 ジルは……一瞬はびっくりしましたが……
 踵を返すと料理に戻りながら、
「あっちゃんもキスされちゃうよ」
 ぼやくように言うと、もう一方の小さい方の女の子が「ムクリ」と起き上がりました。
「すきすき! チュー!」
「む、むー!」
 レッドのキスに、もう大きな女の子は死んでしまいました。
 するとレッド、今度は小さい女の子に目を向けます。
「すきすきー!」
「させるかっ!」
 おお、小さい女の子、レッドの頭をしっかりキャッチ。
illustration やまさきこうじ
 キスを防ぎました、なかなかやりますね。
 小さい女の子、レッドを背後から抱っこして、わたしの方を見ます。
「お姉さんは誰? この子はな……」
 小さい女の子、レッドのしっぽに気付きます。
 そんな女の子の頭上に裸電球が点灯。
「山のパン屋さんだ、ヘルプに来るって言ってたし」
「はじめまして、わたしの事はポンちゃんで……ポン姉がいいかな」
「晶子の事はあっちゃんでいいよ」
 小さい女の子は「あっちゃん」だそうです。
 わたしとあっちゃんに続いてレッドがニコニコで、
「けのいろがあかいからレッドー!」
「はーい、レッド、よろしくねー」
「すきすきー チュー」
「キスいらないから〜」
「あーちゃ、てれやさんゆえ?」
「キスいらないですね〜」
 あっちゃん、レッドをしっかり抱っこして、キスさせません。
 わたしはレッドのキスに撃沈している娘が気になります。
「こっちの娘は?」
 わたし、死んで転がっている娘をゆすります。
 パッと目を見開いて、ゆっくりと体を起こす女の子。
「あたしの事は響ちゃんでいいよ」
 だそうです。
 響ちゃん、髪をかきながらわたしをにらんで、
「その……レッドを離さないで……」
「すみません」
 でも、なんででしょう。
 わたし、あっちゃんの手からレッドを受け取ると……
 そのまま響ちゃんに押し付けます。
 レッドすぐさま、むさぼるようなキス。
「すきすきー チュー」
「むー!」
「ヂュー」
「むむー!」
 レッドの必殺技炸裂です。
 響ちゃん再度撃沈なの。
 レッドは死んでしまった響ちゃんを床に押し付けて、うれしそうにキスしまくり。
 あっちゃんが青くなって、
「このキス魔のキツネさんは……いつもこんななの?」
「レッドはキス魔、いつもこんなです」
「おそろしや……子供だけに手も出せないし」
「ですよね〜 わたしもいつも困ってます」
「まぁ、響ちゃんスキーみたいだから、響ちゃんに犠牲になってもらうしか」
「あっちゃん響ちゃんの友達ですよね」
「だから、響ちゃんもきっと許してくれるよ」
 わたし、ため息一つついてから、
「あの、なんであっちゃんと響ちゃんは裸なんですか?」
 そう、この二人はまっ裸です。
 さっきからなんだか落ち着かないんですよ。
 あっちゃん、ため息一つついてから、
「ここ、クーラーないから暑いよね」
「だから裸なんですか……」
「板間は涼しいから、裸で寝ているの」
「はぁ……」
 ジルが箸を手に顔を出すと、
「ほら、そうめん茹でたから、服着て!」
「えー!」
「パンツとシャツくらい着ないと、ごはんナシだから!」
「むー!」
「ほら、早く! はやく!」
「はーい」
 しぶしぶあっちゃん・響ちゃん、着衣です、パンツとシャツだけなんですけどね。
 ジルはあっちゃん達を確かめてから、テーブルにそうめんを置くの。
「まったく、暑くてもそれくらい着て! お客さんいるんだし!」
 この二人、思った以上にダメ妹みたいです。


pmy188 for web(pmy188.txt/htm/jpg)(pma)
NCP6(2022)
(80L)
(C)2008,2022 KAS/SHK
(C)2022 やまさきこうじ
(HP:やまさきさん家のがらくた箱)
(pixiv:813781)
(twitter:@yamakou0_1019)