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■  ポンと村おこし    第189話「配達人のプロフィール」        ■
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「あっちゃん達に嬲られたんですよ〜」
「嬲られたって……まぁ、私も犯られたけど」
 コンビニに戻って来たわたし、優華さんにアパートの出来事を話すんです。
 優華さんはレッドを抱いて、ニコニコしながら、
「しかしレッドのキスで脱出するのか、この仔、キス魔だね」
 レッド、優華さんの胸に抱かれて、すっかり眠っているの。
「誰でもすきすき〜ですから」
「フフフ」
「あ、で、ですね……」
「どうかしたの?」
「あっちゃん達に嬲られて……言われたんですよ」
「?」
「ぺったんこ同盟って」
 途端に優華さん、わたしの胸をタッチ。
 もう、わたしも抵抗しなかったり。
 ポンポン胸を触ったうえで、
「ま、まぁ、今から大きくなるよ」
「気遣いどうもです……でも、いつもあんななんですか?」
「いつもあんな?」
「です、あっちゃん達、いつもあんな感じ?」
「だね……だから……」
「だから?」
「憲史先輩は優しくしてあげて」
「憲史先輩……」
 わたし、けわしい顔で、
「山のパン屋では……」
「山のパン屋では?」
「目の細い配達人には「なにをしたっていい」事になってるんですよ」
 優華さん、顔を背けて笑いを堪えています。
「優しくって空気は全然ないんですよ」
「ご、ごめん、ここでも優しくしてないや、うん」
「ですよね、あの男には、なにをしたっていいんですよ」
「そ、そうだね……」
 優華さん、笑いを堪えるあまり、肩のピクピクが止まらないの。
「あ、でもですね」
「なに、まだ何かあるの?」
「山のパン屋さんには、ミコちゃんがいるんですよ、ミコちゃん」
「ミコちゃん……で、それがどうかしたの?」
「ミコちゃんはいつもごはんを作ってくれるんです、お母さん担当」
「ふうん、それがどうかしたの?」
「ミコちゃんのごはんはおいしいんです、でも」
「でも?」
「たまに配達人がごはんを作ると、結構おいしかったりするんですよ」
「あ、ああ、憲史先輩、あっちゃん達にごはん作ってるからね」
「わたし、やきそば作ってもらった事あるけど、びっくりです」
「だね、家事ずっとやってるから、女子力高いんだよ」
「優華さんは、なんとも思わないんですか?」
「うーん、こっちで憲史先輩は……」
 優華さんの頭上に裸電球、点灯なの。
「先輩の事だったら……」
「配達人、何かありますか? 弱点とか知りたい!」
「いや、いろいろ伝説あるんだよ」
「伝説? なに? すごいの?」
「うーん、壁男は知ってる?」
「あ、それは知ってます、だから叩くんです」
「ポンちゃんひどいね、わかるけど」
「で、何なんです、配達人の弱点!」
「先輩の弱点かどうかわからないけど……」
「何! なに!」
「ここのバイトは、私も含めて、みんな先輩にやられてるんだ!」
「は?」
「みんな、やられて、妊娠して、中絶!」
「……」
 レッドが寝ているからいいようなものの……
 ミコちゃんがいたら、優華さん死んでます。
 配達人にもゴット・サンダー辺りが直撃でしょう。
 確認しましょう。
「えっと、なんですって?」
「だから、みんな、やられて、妊娠、中絶」
「……」
「ちょっとポンちゃん、信じてない顔してるけど……」
「そりゃ、信じないでしょ」
「?」
「配達人と寝ませんよね」
「……」
「それこそ、本当に死んじゃうでしょ!」
 途端に優華さん、背を向けて笑いを堪えるの。
 肩がピクピクしてますよ。
「ポンちゃん、ひどい、言うねぇ」
「いや、優華さん、想像してくださいよ」
「うん? 何を?」
「そりゃ、配達人とエッチしてるところですよ」
illustration やまさきこうじ
 って、一瞬優華さん頬染め……でも、すぐに死んだ目になるの。
 さっきは笑って震えていた体も、完全に硬直するの。
 優華さんのほっぺにビンタを決めましょう。
「ほら、起きてください、そんなウソ、わたしだってわかります」
「おお、ポンちゃん、言うねぇ」
「言うねぇ、じゃないでしょ……でも、どうしてそんなデマが」
 優華さんニコニコ顔で、
「ここのコンビニ、おでんとか焼き鳥食べ放題だろ」
「ですね、賄いって話で聞いてます」
「バイトに入ると、大抵最初、たくさん食べて太っちゃうんだよ」
「……」
「で、太って『妊娠』、ダイエットで『中絶』」
 そこでチャイムが鳴って……ジルが登場です。
「すみません、あっちゃん達の相手に時間かかっちゃって……」
 って、優華さん、抱いているレッドをジルにバトンタッチしながら、
「ジルも知ってるよな、バイトの女の子、みんな憲史先輩のオンナって設定」
「憲史さん困ってますよ、変なウワサ立てると」
「ジルだって聞いてるだろ」
「おでんパクパク食べちゃうから太っちゃうんですよ」
「あ、ジル、女の気持ちわかってない、太るとか言う」
 ジル、レッドを抱いて、背中をポンポン叩きながら、
「あんまり憲史さんいじめないでください……かわいそうなんだから」
 ジル、言いますね。
 でも、わたし、あの男はなにをやってもいいと思う。
 そんな男なんです。
 優華さん、ニコニコで、
「でも、先輩の嫌そうな顔見ると、楽しい……」
「憲史さん、言ってましたよ」
「!」
「最近優華さん、ぽっちゃりしてかわいいって!」
 って、途端に優華さん、真っ赤になって頭から湯気立ててます。
「は、恥ずかしい事言うなよ、モウ」
 このヤンキー娘、かなりかわいいです。
 男の人に「かわいい」とか言われ慣れてなさそう。
 むう、見た目はいいのに、意外かな。
 って、ジル、わたしを見て、
「ポン姉の事も、かわいい、好きって言ってましたよ」
「おりゃっ!」
 わたし、ジルにチョップです。
 もちろん手加減してるんだから。
「うわ、なんで叩くんですっ!」
「わたしは、あの男に、『結婚して』って言われてここに来たんですっ!」
「!」
「そして「タヌキとは結婚できない」なんですっ!」
「ぶっ!」
「ジル、今、笑いましたね〜」


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