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■  ポンと村おこし    第191話「恐竜展に行きますよ」         ■
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 明日には「大恐竜展」ですよ。
 部屋に戻ってみると、レッドとジルがテーブルに本を開いておしゃべりの最中です。
 レッドが……
「テラノ!」
「うんうん、テラノサウルス」
「トリケラ!」
「トリケラトプス」
「プレシオ!」
「プレシオサウルス」
「楽しみゆえ!」
「ですね〜」
 二人で恐竜図鑑を見てるみたいです。
 って、わたしとコンちゃんに気付くの。
「コン姉ー!」
 レッド、ダッシュでコンちゃんへ。
 ジルもやってきて、
「あの、ポン姉、この人は?」
「こっちはコンちゃん、山で一緒に働いているの」
 コンちゃん、ジルを見て、
「よしなに……おぬしの名は?」
 コンちゃんが顔を寄せると、ジルは赤くなって、
「僕の名前はジル、よろしくおねがいします」
「ふむ、短い間じゃが、よしなに……のう、わらわはコン姉でよいのじゃ」
「はぁ……きれいな人ですね……って!」
 ジル、すぐにコンちゃんのしっぽに取りついて、
「コン姉はレッドのお母さんですか?」
「それはさっきもやったのじゃ、わらわはレッドの母ではないのじゃ」
「キツネしっぽ……」
 じっとコンちゃんのしっぽをモフるジル。
 レッドがニコニコで、
「ポン姉がおかあさんゆえ」
「はぁ……」
 ジル、わたしを見て、そしてわたしのしっぽをモフりながら、
「いろいろ複雑な家庭なんですね」
「わたしがレッドを拾った設定で満足です?」
「はぁ……」

 優華さんの運転で「大恐竜展」へGOです。
「あ、そうそう」
「なんですか?」
「先輩は後で合流するって、こっちに仕事で来るから」
「別に配達人なんて、いなくてもいいですけど」
「え? ごはん食べる時にお金出してくれるよ」
「それなら話は別ですね」
 車でデパートの地下駐車場まで来て、それからデパートの特設ホールです。
 優華さん、わたし達を案内しながら、
「レッドやポンちゃん、しっぽあるから、お客さんの少ない日にしてある」
 だ、そうです、今日は平日なんですよ。
 デパートは……山のパン屋さんにくらべれば、それでも人、多いです。
 ジルはレッドの手を引いてくれてるの。
 わたし……コンちゃんの服を引っ張ってるの。
 この女キツネは「どこか」に行きそうで不安です、フラフラとどこかに行きそう。
 優華さん、そんなわたし達を見ながら、
「でも、私もジルも……」
 そう、優華さんとジルも、コスプレでしっぽを付けてます。
 二人の付けてるのは黒猫のしっぽで、誘うように? うねうねしてるの。
「あ、知ってますよ、水族館の遠足の時に使いました」
「このコスプレしっぽ、ちょっと面白い、気持ちで動く」
 優華さん、言いながらジルのしっぽを見るの。
 レッドとジルは何か話しながら歩いています。
 二人のしっぽの動き、すごい息が合っているの。
 ピンと伸びたり、ウネウネしたり。
「このしっぽ、作り物なんですよね」
「私も思った、長崎先生、変に力入ってるからなぁ」
 って、レッドとジルに、コンちゃんも並ぶの、
 3人のしっぽ、すごいリンクしてます、そろってます。
『ねぇ、ポンちゃん』
『なんです、優華さん、小声で』
『コンちゃんって、子供?』
『あー……あれでも本当に神さまなんですよ、お稲荷さま』
『ふーん』
『あ、そうそう、「気まぐれ」で「女キツネ」ですね』
『そっかー』
 優華さん、笑ってます。

「大恐竜展」……レッドとジル・コンちゃんが入っていきます。
 受付のお姉さんが3人を一瞬止めようとしますが……
 3人のしっぽに見とれて声がかけられなかったみたい……
 ってか、優華さんチケットを出して、
「子供2人、大人3人で」
「いらっしゃいませ、お預かりします……どうぞ」
 わたしと優華さん、チケット半券を受け取って入ろう……
 と、した、時、ですね、わたし、しっぽを掴まれるの。
「ペットは入れません」
『な……レッド達はスルーしたくせに……』
 受付のお姉さん、わたしのしっぽを掴んで本気顔。
 わたし、どうしていいか困。
 優華さん、見て、笑ってる。
 でも、動いてくれたのは優華さんです。
「ああん、私の連れにイチャモンつけんのかよ、ああん」
 すぐにヤンキーモードです、こわいです、見た目は。
 ヤンキー優華さん、わたしと受付嬢の間に割って入ると、受付のお姉さんの手首を「ギュッ」。
 受付のお姉さんの鼻先まで顔を寄せると、
「チケット、もぎったよなぁ、ああん?」
「は、はいい〜!」
 受付のお姉さん、びびりまくり。
 優華さん、ちょっと表情からコワイのをやめると、
「おい、スマホ出せ、持ってないとは言わせない」
「え、その、イヤ……」
「出せよゴラ!」
 優華さん、受付のお姉さんの脇を捕まえて引き寄せるの。
 って、受付嬢がビビッて視線を落としていると……
 優華さんはレッドを手招きしてます。
 レッドとジル・コンちゃんが戻ってきました。
 優華さん、受付嬢の肩を抱いて、
「ほーら、レッドが写真を一緒したがってんよ」
「え! あ! え!」
 もう、受付嬢、言われるままスマホを出します。
 優華さん、スマホを奪うとレッドと受付嬢を並べて、
「ほら、撮るぞ、笑ってー」
「はーい!」
「え! あ! え!」
 レッドはうれしそうですが、受付嬢はパニック継続中。
 優華さん、パシャパシャ、シャッター切るんです。
 でも、びっくりは受付嬢。
 シャッターの瞬間には笑顔でレッドと抱き寄せてるの。
 ピースサインなんかもして、いい写真が撮れましたよ。
「なんだ、いい仕事するじゃねーか」
 優華さん、スマホを返しながら言います。
 受付のお姉さん、とほほ顔で、
「同行させていただきますね」
 レッド、ピョンピョン跳ねて、
「やったー! すきすきー!」

「こちらがティラノサウルスになります」
 受付のお姉さん、付き添いしてくれてます。
 ってか、レッドの手を握ってくれてるの。
 あの仔キツネはチョロチョロしますからね。
「ティラノは大きいですね〜」
 ジルはニコニコです。
「おお、大きいのう!」
 コンちゃんも楽しんでるみたい。瞳が☆なの。
 って、コンちゃん、受付嬢を引っ張って、
「あっち、あっちの大きいのは何かの! 何かの!」
 コンちゃんが先頭で行っちゃいます。
「なぁ、ポンちゃん」
「なんですか、優華さん」
「コンちゃんって子供?」
「ですね〜 子供ですね〜」
「あの見た目なのに……」
「女キツネですから、気まぐれですから」
「めんどうくさい女っぽいな」
「ですね〜」
 あれこれ回っていると、レッドが受付嬢に、
「ほねしかないゆえ……」
「化石ですね〜」
 レッド、受付嬢をじっと見つめて、
「いきているのを、みたいゆえ」
「……」
illustration やまさきこうじ
「いきてるの」
「……」
 受付嬢、わたしを見ます。
『あの、恐竜はもういないんですけど!』
『ゴヅラは生きてますよね?』
『あれ、恐竜じゃないし……』
 レッド、涙目で、
「いないゆえ?」
「……」
 受付嬢、汗ダクです、困ってるの。
 って、そんな受付のお姉さんに裸電球点灯。
「残念でした!」
「!」
「レッドがもうちょっと早く来てくれたら、よかったのに」
「なに! なにゆえ!」
「レッドが来るのが遅かったから、骨になっちゃった」
「えー!」
「もうちょっと早かったら、ちゃんと生きていたんだけど〜」
「そんなー!」
 レッド、泣きそうです。
 受付嬢、一瞬困ったけど、どこからともなくヌイグルミ出すの。
「ほら、今度また、来てね、これを約束にあげるから」
「ふえ! これは……」
「プレシオサウルスよ」
「プレシオ!」
 レッド、プレシオのヌイグルミにとりあえず涙は止まったの。
 って、コンちゃんとジルが受付のお姉さんの服を引っ張って、
「「いいなー」」
「……」
 ジルは「アンモナイト」を……
 コンちゃんは「三葉虫」を……
 ……微妙なのくれますね。
 売れ残り……かな?


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