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■  ポンと村おこし    第192話「お子様ランチでGO」         ■
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「天気がいいですね〜」
「大恐竜展」も見終わって、今は「屋上遊園地」。
 わたしと優華さんはベンチに座ってジュースを飲んでるところです。
 レッドとコンちゃん、ジルはコーヒーカップに乗ってます。
「ねぇ、ポンちゃん」
「なんですか、優華さん」
「コンちゃんって、本当に子供?」
「見ての通りですよ」
 コーヒーカップですごい笑顔のコンちゃん。
 レッドも楽しそうです。
 嫌そうな顔をしているのはジルだけですね。
「なんでジルはイヤな顔なんでしょ?」
「そりゃ、カップがぐるぐる回ってるからだろ」
「?」
「レッドはどうか知らないけど……」
「?」
「コンちゃんはダウンしちゃうような気がするんだけどな〜」
「わ、わかりません」
「ま、止まったらわかるよ」
 わたし、優華さんの服を引っ張ります。
「なんだよ、ポンちゃん」
「あの〜 お昼の時間と思うんですけど〜」
 遊園地の時計に視線をやるの。
 優華さんも一瞬見てくれますが、
「むう、先輩まだなんだよな」
「配達人を待つのは何かあるんです? 優華さん、配達人好きなんです?」
「そりゃ、先輩、スポンサーでお財布だから」
「むう……でも、わたし、正直いうとごはん食べたい」
「うーん、私も正直ごはんの気持ちなんだよな〜」
 って、ブザーが鳴って、コーヒーカップの動きがゆっくりになるの。
 レッドはニコニコですが……
 コンちゃんはシオシオなんです……
 レッドは助けを呼ぶような視線でわたしを見るの。
「本当にコンちゃん死んじゃいました……どうして?」
「え……ポンちゃん乗った事ないの、コーヒーカップ」
「別に興味ないし」
「見た目はJCなのに、つまんないヤツだな〜」
「じゃあ、優華さん、JCの時にここで遊んでました? デートとかしてました?」
「してないな〜」
 わたしと優華さん、ダウンしているコンちゃんを助けに行きます。
 って、レッドはニコニコなんだけどフラフラ。
 ジルはコンちゃんを背負って……引きずってフラフラ。
「コン姉、回しすぎです〜」
 ジルの悲鳴、わたし、コンちゃんを引き取るの。
「どうしてこんなになっちゃうんでしょ?」
 わたしが聞くと、ジルはわたしを見上げながら、
「ポン姉、乗った事ないですね」
「わたし働いてばっかりだから、知りません」
 って、でも、思い出しました。
「わたし、コーヒーカップ知ってるよ」
「え? なんで? 山に住んでるのに?」
「山にも遊園地あるんですよ、ええ」
 わたしとジルがそんな事を話していると、
「あれ、ポンちゃん、どうしたの?」
 やって来たのは、山の遊園地の職員さん。
 わたしだってびっくりです。
「職員さん……どうしたんですか!」
「うちの会社がここをやってるの」
「そ、そうなんだ」
「いや、景気よく回してるの……コンちゃん見てびっくりしたよ」
 って、そんな職員さんの後ろに配達人。
「あ、みんな、お待たせ〜」
「配達人、遅いー」
「ここに配達あったから、ついでにね」
 配達人、段ボールを職員さんに手渡すの。
 中にはヌイグルミがたくさん入っています。
 見ればさっきの「三葉虫」「アンモナイト」が見えます。
「そっちは残念系かな〜」
 配達人、別の段ボールも見せてくれます。
「こっちが人気かな〜」
「ティラノ」「ステゴ」「トリケラ」なんかが見えるの。
 あれ?
「三葉虫」「アンモナイト」は「残念系」って?
 コンちゃん、青い顔して、
「配達人、言うたな、これは当たりなのじゃ!」
 ゼーゼー言いながら、コンちゃん「三葉虫」を見せるの。
「ダイオウグソクムシは当たりなのじゃ!」
 いや、それは「三葉虫」だから「ダイオウグソクムシ」じゃないから。

「展望食堂」でやっとごはんです。
 わたし、すごいお腹空いてたんですよ。
 配達人、ここに入ってから青い顔です。
「高いのやめてよ〜」
 みんなで食品サンプルの前で指さすの。
 優華さんが……
「私、ステーキ丼」
「チッ!」
 わたしはですね……
「わたしはうな丼で」
「チッ!」
 ジルが……
「カツ丼がいいです〜」
「チッ!」
 さっきから「チッ!」は配達人。
 舌打ちしながら財布をのぞき込むの。
 配達人、引きつりながら……
「コンちゃんとレッドは?」
「わらわは……きつねうどん」
「この『くるまみたい』なの」
「車みたいなの」ってなんでしょ?
 レッドが指さしているのは「おこさまランチ」。
 安堵の顔の配達人。
「配達人はどうするんです?」
「かけうどん……」
「……」
「お腹空いてないもん、お腹空いてないからいいもん」
「わたしのうなぎ、一切れあげますよ」
「うなぎが一番高いんだけど〜!」

「俺はポンちゃんはタヌキなんだから狸うどんでいいと思うんだ」
「天かすとかまぼこだけですよね」
 わたし、うなぎ、超おいしい。
 隣で「かけうどん」食べてる配達人が、余計にわたしの食欲を増進なの。
「ほら、約束だから、一切れあげますよ」
「むう、ありがとう」
 配達人、わたしのあげた「一切れ」に涙してます。
「でも、ちゃんと食べなくて大丈夫なんです?」
「あ、それは大丈夫、よそでお弁当食べてるから……捨て弁だけど」
「それならいいんですけど……」
 わたし、配達人、レッドの視線に気づくの。
 レッドのおこさまランチはまだみたいで、待っているみたいです。
 隣ではジルが、カツ丼が来ているのに、レッドと一緒に待っててくれるみたい。
 でも、レッドの視線が配達人に刺さってる。
 配達人も冷や汗をかいています。
『ポンちゃん、レッドがにらんでくるんだけど』
『知りませんよ、何かあったんじゃないですか?』
『えー、恐竜展連れて来たのに』
『ちょっとジルに聞いてみますね』
 って、レッドの隣のジルにテレパシーです。
『ちょっとちょっと、レッドが不機嫌なんですけど』
『ポン姉……恐竜展に生きているのがいなかったからですよ』
『って、恐竜ってもう絶滅してるんですよね』
『ですね〜』
『レッドは知らなかったんですかね?』
『生きてるって思ってたみたいですよ……ポン姉もそう思ってたんじゃないんですか?』
『わたしはそんなに興味ないし……恐竜図鑑見せたらレッドが大人しくなるから、アイテ
ムみたいなもんですええ』
『ポン姉、そんなキャラだったんだ……』
『弟なんて面倒くさいだけですよ』
『むう……』
 ジルは嫌そうな顔です。
『レッドは、遅く来たからみんな骨になってたと思ってるんです』
『笑えますよね』
『でも、本気で……』
 って、いい感じで「おこさまランチ」登場です。
 レッドの気持ちが「おこさまランチ」で「笑顔」。
illustration やまさきこうじ
 わたし、レッドが食べ始めたのを見て、配達人を肘でつつきます。
『大恐竜展、生きてるのに会えるって思ってたみたいですよ』
『えー、俺、どうしようもないじゃん』
『知りませんよ、レッドへそ曲げたら面倒くさいですよ』
『わかってる……どうしよう』
 配達人、困ってます。
 配達人が困ってるのは、ちょっと面白いんだけど……
 レッドが不機嫌なのは面倒くさいですね。
 どうなるのかな?


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