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■  ポンと村おこし    第193話「さて、帰りますか!」         ■
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 藤華さんがやってきます、オコです。
「ちょっと、なんで私は仲間外れなの!」
「な、何の事です?」
「これ! これ!」
 なにかな?
 藤華さんのスマホに「おこさまランチとレッド」。
「なんでわたしは呼ばれてないのよ!」
「恐竜展は昼だったんですけど」
「うう……私、用事あった……でも」
「でも?」
「なんで先に教えてくれなかったのよ、私も行きたかった!」
 藤華さんに裸電球点灯。
「じゃあ、私がパーティー開けばいいのよ!」
「え? なにを!」
「私がパーティ開くわよ、もう山に帰っちゃうんでしょ!」
「ですね、恐竜展見ちゃったし」
「今夜パーティ開くわよ、いいわね!」
「わ、わかりました……でもでも、わたし料理とかできないし」
「ポンちゃんはいいのよ、こっちで準備するから……でも……」
 藤華さんの表情が曇ります。
「私も料理、あんまり得意じゃないのよね!」
『うわ、やだな〜』
 わたし、不安になります。
「コンビニおでんのパーティーとかないし」
「そ、それはさすがに……」
「お寿司とか……って! お寿司の時も私仲間外れ!」
 怒りながら藤華さん行っちゃいました。
 夕飯がちょっと……かなり不安です。

 夕飯は「すき焼きパーティ」になりました。
 藤華さん・優華さん・ジルにカラスもいます。
 コンちゃん獣耳モードでご満悦。
 レッドは藤華さんに抱っこされて、すき焼き満喫中。
 わたしも楽しんでいますが……
 ジルに聞きます。
「ねぇねぇ、ジル」
「ポン姉、なんですか?」
「あっちゃん・響ちゃんは呼ばなくていいんでしょうか?」
illustration やまさきこうじ
「ダメです」
「……」
「絶対、あの二人はいいんです、呼んじゃダメです」
『そ、そこまで……』
 なんとなく、わかってはいるんですけどね。
 でもでも、ここまで言い切るとは……ジルの顔はマジです。
 今度は優華さんに聞いてみましょう。
「優華さん優華さん」
「何、ポンちゃん……ってか……」
 優華さん、真顔でわたしを見て、
『ちょっとちょっと!』
『なんですか、小声で!』
『レッド獣耳は回転寿司で見たけど……』
『?』
『コンちゃんも獣耳なんだけど、かわいいんだけど!』
『あ、ああ……コンちゃんもキツネですから、女キツネですから』
『うーわー、綺麗って思ってたけど、ニコニコ獣耳だとかわいい〜』
『コンちゃん子供ですから……で、聞きたいんですけど』
『何?』
『配達人は?』
『先輩はコンビニに入ってるけど……私と藤華先輩抜けてるから』
『むう……逃げたかと思った』
『あ、それ、私も思った、レッドだよね』
 レッドは今は「すき焼き」に夢中なんですが……
 大恐竜展以来、生きた恐竜にひっかかってるの。
『恐竜はいないんですよね』
『そうだね……』
『まぁ、レッドもお子さまだから、ちょっとしたら忘れるかと……』
『ポンちゃん……言ってて、そうならないって思ってない?』
『優華さん、わかります、大体こんなのって「嫌なパターン」突入が定番なんです』
『わかるわ〜』
 って、部屋のドアが開いて配達人。
「おお、やってるね、いいなぁ、すき焼き」
 ニコニコ顔の配達人。
 するとレッド、立ち上がって配達人のもとへ。
 そして叩くんです、配達人を、まぁ、レッドが叩いても、かわいいもんですが。
 配達人、困った顔でいると、ジルがやってきてレッドを連れて行ってくれます。
 わたし、嫌な予感。
 配達人、わたしの方に顔を向けるの。
 そしてやって来ると、
『どうしてレッドは怒ってるのかな?』
『大恐竜展、全部骨だったの、配達人が連れて行くのが遅かったから』
『えー 俺、どうしようもないじゃん!』
『子供が怒ってる理由なんてそんなもんですよ』
『機嫌なおるかなぁ』
 レッド、今は藤華さんに抱っこされてニコニコしてます。
 カラスも一緒にいてくれるから、よさそう。
 でも、なんだか、今回のは長引きそうな気がするんです。
『優華さんは何かアイデアないですか?』
『うーん、子供の思い込みだしねぇ……先輩がやられてるから、私はどうでもいいかなぁ』
 優華さん、配達人に目をやると、
『恐竜がいれば、問題ないんだけど……』
『……』
 配達人は嫌そうな顔です。
 恐竜はいないから、そうでしょう。
 優華さんが、
「ね、憲史先輩、恐竜がいれば、解決」
「……」
「レッドの機嫌もよくなって、よくないですか?」
「……」
 あれ?
 恐竜はいないんじゃないんですか?
 優華さんニヤニヤで配達人を見てるんです。
「レッド喜ぶのにな〜」
「……」
 なんでしょう、恐竜、いるんでしょうか?
 作り物……機械で動く恐竜は恐竜展で見ましたよ。
 優華さんの口ぶりだと、なんだか恐竜、いるみたいですね。
「今のままじゃ、レッド泣くかもなぁ〜」
『優華さん優華さん!』
『何、ポンちゃん、今、ちょっと面白いんだけど』
『恐竜いるんですか?』
『いや、恐竜は絶滅してるから、いないから』
『でも、なんだかいるみたいな口ぶり』
 返事はないですが、優華さんジルを手招きします。
 優華さんジルを膝の上に座らせて、
「ジル、ネッシー呼べるよね」
「!」
「ネッシー見せたら、レッド喜ぶんじゃね?」
「あ、ですね、考えてもなかった!」
「ね、ねっしー!」
 わたし、ネッシー知ってます。
 UMAってヤツですよ。
 ジルが電話でどこかとお話しています。
「いいですよね、ネッシー」
 あ、なんだか話がまとまったみたいです。
 わたし、ついつい、
「ネッシー見れるんだ、あの首の長いの」
 って、ジルが一瞬ビクッとして動きが止まるの。
 それから耳元のスマホをわたしに差し出してきて、
「ポン姉、長崎先生と知り合いなんですか?」
「長崎先生」は「保健医」です。
 わたし、スマホを受け取ります。
『ポンちゃん? ポンちゃん?』
「どうも、保健の先生、ネッシーいるんですね!」
『そうよ、UMAだから捕まえて来たのよ』
「いいんですか、スポーツ新聞にも記事あったし」
『スポーツ新聞のUMA記事なんて読まないの』
「勝手に連れてきていいんですか?」
『UMAだからいいのよ、もうイギリスじゃ「うなぎ」って設定になってるんだから』
「えー!」
『それより、レッドの機嫌、とっといてよ』
「そっちですか……なんかあったんです?」
『ミコちゃんが闇の側に落ちそうなのよ』
「あ、ここんとこレッドと寝てないですからね」
『料理作ってる時とか、ちょっと闇がコワイから早く帰ってきて』
「はーい」
 わたし、ジルにスマホを返します。
 ミコちゃん空の鍋をかき混ぜてるかもしれません。
「僕の笛でネッシー出てきますから」
「ジル、よろしくお願いしますね」
「レッドをびっくりさせたいから、ナイショでおねがいします」
「わっかりました〜」
 って、なんだか丸く収まりそうです。
 でも、表情の暗い男がいます……配達人はブルーです。
「俺、ネッシー嫌いなんだよね」


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